ある晩 南の空から星が降った
星は砕けて 奥山に散った
散った欠片は 蛍になった
蛍は秘密のメッセージを携えて 花に隠れた
宙(そら)からの啓示は 「怖れよ」だった
何も知らない花々は 受粉の構えでほほ笑んだ
蛍をかくまった花は 下を向いた
ホタルブクロは 憂いを帯びて蒼ざめた
村人の生活は 木の実を採り獣を捕ること
欲張った男は 鹿を追って崖から転落した
その夜 ホタルブクロが点った
夢の中で 全員がメッセージの一部を理解した
「山の命は 等しく敬え」
山の民は 頭蓋にひびく音声を記憶した
翌朝村人は 口々に噂しあった
天狗が現れた日の 下駄の音にも似ていた、と
山の神を怖れ 空に満つるものを畏れよ
樹木の霊を敬い 草や花を愛でよ
すべからく命を尊び 運命に謙虚であれ
宙の波動に同調し 蛍のように光を点滅させよ
ホタルブクロのメッセージを 読み解く人が現れた
砕け散った隕石に 時空のすべてが記されている、と
耳を澄ませば 内耳に届く声
目を見開けば 宇宙の果ての像
「怖れよ」の神韻に 「畏れています」と手を合わせる
(『ホタルブクロの秘密』2013/06/02より再掲)
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