どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム64 『月と太陽の物語』

2014-10-14 03:44:00 | ポエム

 

     

    皆既月食からの甦り(2014年10月8日20時頃)

 

  

むかしむかし南の島では

真昼間なのに空が急に暗くなり

腰蓑をつけた部族の民が大慌てした

 

椰子の葉の小屋にこもった呪術師は

島を造った暗黒の神がよみがえり

この世の光を食ったのだと託宣した

 

太陽を返してほしい

部族の民は呪術師の前にひれ伏した

魚でも椰子の実でもなんでも差し上げます

 

その言葉に偽りはないな

呪術師は神の声で宣った

それなら間もなく光を返してやろう

 

父から聞かされた世界の物語には

ジャングルに咲く人食い花や

何日も落ち続ける底なし穴の話があった

 

皆既月食の夜 満月に影が忍び寄り

背後から音もなく呑み込んだ

赤黒く染まった月の色は不吉な血の暗示か

 

西洋の物語に月食の話もあったろうに

父はブラッドムーンの謂れは語らなかった

地球が流す血の痕を思い出したくなかったのか

 

今宵 空にいるはずの父に訊きたい

太陽と月を食した怪物は存在しますか

どちらが美味かったとか漏らしませんでしたか

 

地球が太陽や月に食べられる日はないですか

地球がオゾンごと自身を喰らう日は来ませんか

新世紀のモンスターはまだ目覚めの途中ですか

 

月と太陽の物語を思い出し

新たな一ページを書き足して

世界の子どもらに教えてあげたいと思うのだ

 

    


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4 コメント

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なぜか心ざわつき・・・ (知恵熱おやじ)
2014-10-16 05:17:17
いつもは何ということもなく太陽や月を見ているのですが

日蝕、月蝕などということになると、なんとなく心ざわつくのはなぜなんでしょうかね

天空で隠れるということがなんか心の深くに化学反応を起こすのでしょうかねえー
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太古の昔から (aqua)
2014-10-16 10:12:38
おはようございます

月食や日食は
天照大御神の時代から
延々と人の魂に
刷り込みされているような気がするのです

月と太陽が出入りするのは
あたりまえの光景ですが
突然地上が真っ暗になったら
この世の終わりだとパニックになったと思います

現在は科学で解明され
少しばかり知識はありますが
それでも赤い月を見たり
真っ暗な昼を迎えるのは不安な気分になりますね


お父様から聞かされた世界の物語を
そのうちご紹介いただけたら嬉しいです

楽しく読まさせていただきました
いつもありがとうございます


返信する
「食」って妖しい (tadaox)
2014-10-16 23:49:10
(知恵熱おやじ)様、ありがとうございます。
たしかに太陽や月のいつもと違った運行に、太古の人間は戦いたことでしょう。

ぼくの記憶に残っている話は、子供が対象の冒険物語が元になっているのだと思います。
たとえば山川惣治とか小松崎茂とか・・・・。(古いねえ)
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刷り込みかあ (tadaox)
2014-10-17 00:02:09
(aqua) 様、刷り込みとは気づきませんでした。
天文学に携わっている科学者でも、こうした現象に目を輝かせていますからねえ。
恐れとと好奇心が、遺伝子レベルで刷り込まれているのでしょう。

父から聞いた話は、昭和20~30年代に活躍した絵物語作家の受け売りだと思います。
思えば苦しくもいい時代だったような気がします。
コメントありがとうございました。
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