<天狗による神かくし>から
〇次の話は、近県の埼玉県入間郡。名栗の森河原の浅見常次郎さんは、実家の青場戸へ行った帰り、夜道になって豆口峠上に来ました。すると見上げるような大きなお坊さんいて、ついてこいと言うのでゆくと、岩上に立って向こうの山まで飛んでみろ命令するのです。浅見さんはもし飛ばなくてもどうせ殺されるかもしれないので、死んだ気になって飛んでみるとアラ不思議、鳥のように軽々と飛べるのです。そうして彼は大坊主と一緒に一晩中あちこちの山を飛び歩き、夜が明けて気がついた時はぐったりと疲れて、もとの豆口峠の上にいたそうです。これも短時間の天狗がくしなのでしょう。
*「天狗による神かくし」という分類の中に、いつの間にか「天狗がくし」という用語が出てきた。民話というものの変化の過程がうかがえる貴重な例かもしれない。(出典・神山弘著『ものがたり奥武蔵』)
〇新潟県東頚城郡松代町池尻。明治初期の話。池尻の「万之助」という屋号の家にオモという若い嫁さんがあった。色白で肉付きがよく働き者であった。ある冬の吹雪の夜、夜なべの藁仕事をして遅くなってから風呂に入り、上がって腰巻をつけただけで玄関の近くにある便所へ小用を足しにいった。それっきりオモの姿は忽然と消えてしまった。オモは天狗にさらわれたのだということになった。村人の探索にもかかわらず遂に行方が知れなかった。その同じころ、池尻の隣部落の千年という所の普門庵いう尼寺の庵主さんが、寝る前に戸締りをしようと吹雪の戸口に出てみると、庭の大欅の上に黒雲が飛んできて一時止まった。その雲の中から「庵主さまーー」と助けを求める女の声がしたが、雲はまた東の方へと飛び去った、ということである。天狗が湯上りの半裸体のオモに色情し、さらっていったと思われた。以来、猛吹雪を「オモ荒れ」と言ったり、腰巻ひとつで便所に行くと天狗にさらわれる、と言われるようになった。後年、信州の草津温泉でオモに似た女を見かけた言う人があったが定かでない。(回答者・高橋八十八=新潟県在住)
(この項おわり)
⑤の文が空欄になっており読めないのですが。
間違いです。
いったん、取り消しまっす。
「『女の天狗・鬼』って聞いたことないけどいないのかな?」
あ、でも鬼は鬼子母神がいたか…。(^_^;)
天狗って男の象徴だから、なかなかそこまでの発想は湧きませんが、女の天狗の肉付けが出来たら最高ですよ。