どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(16)

2007-09-03 00:58:41 | 昆虫

     ステルス戦闘機不時着?

 九月になったら、訪問客の顔ぶれが変わってきた。
 先月の末、雨上がりの朝には、セミが相次いでテーブルや椅子にとまり疲れを癒していたが、この日は巨大な飛行機がテーブルに不時着していたので驚いた。

 黄土色で翼の幅は約二十センチ、ご丁寧に両翼に一個ずつ目玉がついている。
 上から、前から、後ろから撮影したが、形は見たこともない戦闘機のようだ。
 尾翼の右側が破損しているから、不時着したのだろうと決め付けた。

 虫には興味を抱いているが、根っからの虫好きではないから、このバカでかい蛾には度肝を抜かれた。
 ステルス戦闘機に譬えたのは、狼狽したせいだが・・・・。
 世の中にこんな奴が存在しているとは考えたこともなかったのだ。

 子供の頃からいろいろな蛾を見てきたが、でかいといっても精々十センチぐらいだ。ここの場所でも真っ白の蛾とか、黄色いのとか、色で目立つものを数種類見かけたが、超特大のは初めてだ。

 写真を撮らせてもらったが、用が済んだらお引取りを願わなくてはならない。
 団扇でそっと掬おうとしたら、慌ててパタパタと飛び立った。
 もちろん蝶のようにでもなく、鳥のようにでもない。強いていえば、ゴムを動力にした羽ばたき模型飛行機のように、だ。

 こういうときは得てしてチョッカイを掛けたもののほうに飛んでくる。
 怖れたとおり、こっちに向かってきたのでヒヤリとさせられた。
 危うくかわすことができたのは、バカでかい翅のお陰だ。
 スローモーションで見るような羽ばたきをして、はっきりと空気を押し下げて飛ぶのが見て取れた。

 この蛾は将来何になるのだろう。
 少なくとも戦闘機になれないことだけは判然としている。
 目玉をつけてオドカシで身を守ろうとしているのだから、攻撃の意図はまったくない。飛ぶのも得意そうではなく、何度か羽ばたいただけで土の上に舞い降りた。

 そうか! こいつは秋とともに終焉を迎えるのか。
 将来ではなく、前身はなんだったのだろうと考察すべきだった。
 さぞかしでっかい夢を持った子供だったんだろうな。

 見事に成長して、種の持つ限界点を極めた成功者にちがいない。
 それとも、翅を破損するほど働き続けた中間管理職か。
 ひんやりした空気をつかんで、もう一度飛べというのは酷だな・・・・。
 

 

 
 

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1 コメント

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劇的な訪問者 (丑の戯言)
2007-09-03 18:43:02

訪問者が珍しいなら、これを素早く映像に収めた技もお見事。
名も知れぬこの巨大な蛾は、はたしてどのような経路で平和な卓上にまで闖入してきたのでしょうね?
恐るおそる眺めているうちに、この小動物が疲れ果てた中間管理職に思えてきたのは、筆者のこころの優しさからでしょうか。
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