2030年の近未来の日本で、出生率は極限まで落ち、若者は恋愛やセックスに関心を持たなくなり、若者の自殺者が年間10万人を突破し精神科・心療内科に通う若者は400万人を超え、30代以上の者だけが(限りなく)性欲を持ち続けているという状況の下で、国家公務員としてセックスワーカーであるとともに性に関する研究を続けるログの研究サンプルの若者ミツキが、ログの紹介で国が運営する正体不明のプロジェクト「アカガミ」に応募しそのレールに乗せられ、そこで配偶者候補者としてあてがわれたサツキと共同生活をしていくという展開の小説。
そもそも異性に性的な関心を持たずに育ったミツキとサツキが、国によって選択され引き合わされた(悪くいえば統一教会みたいに)相手に、当初は見捨てられたくない(「チェンジ」されたくない)という思いと不安に駆られ、次第に相手に恋心を抱きつつ不器用に振る舞う様子は、いかにも初々しく微笑ましい。
しかし、それが国の思惑で国に完全に管理された形で展開する「家族計画」に無抵抗に順応することであることに思いを致すと、不気味に気持ち悪く思えてきます。
そのあたりの違和感、ギャップ感がこの作品のテーマかと思いました。
初出は「文藝」2015年冬季号で、一括掲載で連載小説ではないのですが、ログが主人公のように思える冒頭から、もっぱらミツキ主体の中盤の展開に至り、終盤ではサツキの視点へ移行するなど、構想にブレがある印象を持ちました。

窪美澄 河出書房新社 2016年4月30日発行
そもそも異性に性的な関心を持たずに育ったミツキとサツキが、国によって選択され引き合わされた(悪くいえば統一教会みたいに)相手に、当初は見捨てられたくない(「チェンジ」されたくない)という思いと不安に駆られ、次第に相手に恋心を抱きつつ不器用に振る舞う様子は、いかにも初々しく微笑ましい。
しかし、それが国の思惑で国に完全に管理された形で展開する「家族計画」に無抵抗に順応することであることに思いを致すと、不気味に気持ち悪く思えてきます。
そのあたりの違和感、ギャップ感がこの作品のテーマかと思いました。
初出は「文藝」2015年冬季号で、一括掲載で連載小説ではないのですが、ログが主人公のように思える冒頭から、もっぱらミツキ主体の中盤の展開に至り、終盤ではサツキの視点へ移行するなど、構想にブレがある印象を持ちました。

窪美澄 河出書房新社 2016年4月30日発行