おいしいコーヒーのいれ方Ⅹに続く2年間の和泉勝利と花村かれんと周囲の者たちの関係、できごと、思いを綴る本編Ⅰ~Ⅸと、後半のターニングポイントになるいくつかのエピソードを別の語り手が語ったり、その後の若干を描くアナザーストーリーからなる読み物。
ⅠとⅡは、おいしいコーヒーのいれ方Ⅹのそのまま続きで2人の幸せな甘い日々が描かれ、たぶん、読者にも一番幸せな読み物となっているでしょう。しかし、それはある種読者の欲望・幻想に奉仕しているだけで、このままでは小説に、あるいは Second Season にもならないと作者が感じたのでしょう。ⅢとⅣで勝利の大家の森下家の事情に軸足を移し、さらにⅤから大きな展開を加えて話を揺すぶっていきます。昨日は今日の続きではない/続きとは限らない、人生には何が起こるかわからないということを、作者が作品に投げ込んできたもので、あとから一気読みしている私には東日本大震災で世の無常と無情を痛感したことの反映かとも思えたのですが、作者が事件を書き始めたのはその前年で、その時点で何か思うところがあったのでしょう。しかし、大きく展開させすぎてどう収拾を付けていいかが見えなくなったのか、作者がラス前のⅧを書いたあと最終巻のⅨまで実に7年もの年月を要しています。作者の構想の大きさあるいは試行錯誤の大胆さとともに、主人公の恋の行方を決着させてしまったあとに恋愛小説を書き続けることの難しさが感じられます。
村山由佳 集英社文庫
Ⅰ 蜂蜜色の瞳 2009年6月30日発行(新書版は2007年5月)
Ⅱ 明日の約束 2010年6月30日発行(新書版は2008年5月)
Ⅲ 消せない告白 2011年6月30日発行(新書版は2009年5月)
Ⅳ 凍える月 2011年6月30日発行(新書版は2010年5月)
Ⅴ 雲の果て 2012年6月30日発行(新書版は2011年6月)
Ⅵ 彼方の声 2012年6月30日発行(新書版は2011年12月)
Ⅶ 記憶の海 2013年6月30日発行(新書版は2012年6月)
Ⅷ 地図のない旅 2014年6月30日発行(新書版は2013年6月)
Ⅸ ありふれた祈り 2020年6月25日発行(新書版も同時)
アナザーストーリー てのひらの未来 2022年5月25日発行
ⅠとⅡは、おいしいコーヒーのいれ方Ⅹのそのまま続きで2人の幸せな甘い日々が描かれ、たぶん、読者にも一番幸せな読み物となっているでしょう。しかし、それはある種読者の欲望・幻想に奉仕しているだけで、このままでは小説に、あるいは Second Season にもならないと作者が感じたのでしょう。ⅢとⅣで勝利の大家の森下家の事情に軸足を移し、さらにⅤから大きな展開を加えて話を揺すぶっていきます。昨日は今日の続きではない/続きとは限らない、人生には何が起こるかわからないということを、作者が作品に投げ込んできたもので、あとから一気読みしている私には東日本大震災で世の無常と無情を痛感したことの反映かとも思えたのですが、作者が事件を書き始めたのはその前年で、その時点で何か思うところがあったのでしょう。しかし、大きく展開させすぎてどう収拾を付けていいかが見えなくなったのか、作者がラス前のⅧを書いたあと最終巻のⅨまで実に7年もの年月を要しています。作者の構想の大きさあるいは試行錯誤の大胆さとともに、主人公の恋の行方を決着させてしまったあとに恋愛小説を書き続けることの難しさが感じられます。
村山由佳 集英社文庫
Ⅰ 蜂蜜色の瞳 2009年6月30日発行(新書版は2007年5月)
Ⅱ 明日の約束 2010年6月30日発行(新書版は2008年5月)
Ⅲ 消せない告白 2011年6月30日発行(新書版は2009年5月)
Ⅳ 凍える月 2011年6月30日発行(新書版は2010年5月)
Ⅴ 雲の果て 2012年6月30日発行(新書版は2011年6月)
Ⅵ 彼方の声 2012年6月30日発行(新書版は2011年12月)
Ⅶ 記憶の海 2013年6月30日発行(新書版は2012年6月)
Ⅷ 地図のない旅 2014年6月30日発行(新書版は2013年6月)
Ⅸ ありふれた祈り 2020年6月25日発行(新書版も同時)
アナザーストーリー てのひらの未来 2022年5月25日発行