流体(気体・液体)にまつわる日常でのさまざまな現象について流体力学の観点から解説する本。
流体力学の本でありながら、ナビエ・ストークス方程式が(名称は紹介されているけど)書かれていない、流体力学の基礎とか体系とかを説明しようとせず、現象の説明に徹しているところが、初心者に取っ付きやすい本となっていて好感します。
マグロが海中で高速(最大時速80kmとか)で泳げる理由を体型の流線型だけでなく体表からぬめり物質を分泌していることが水流の乱れ(渦の発生や成長)を抑えて水の抵抗を低くしていることで説明しています(25~28ページ)。どれくらいの分泌物をどれくらいの頻度で放出しているのかわかりませんが、それ自体けっこうな体力を使うだろうなと同情してしまいます。マグロがそうしてすいすい泳いでいるイメージを膨らませればマグロがよりおいしく感じられるかもしれない(28ページ)という執筆者の感性は私にはとても理解できません。
カルマン渦(流体中に固定された物体の下流にできる渦)による有名な事故の例として1940年のアメリカのタコマ橋の崩壊が紹介されています(41ページ)。歴史的にはそれも有名なのでしょうけれども、日本の現代の読者にはより近い有名な事故として高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故があるのですが、そちらが紹介されていないのは、「忖度」なんでしょうか。
井口学、植田芳昭、植村知正編著 電気書院 2024年6月7日発行
流体力学の本でありながら、ナビエ・ストークス方程式が(名称は紹介されているけど)書かれていない、流体力学の基礎とか体系とかを説明しようとせず、現象の説明に徹しているところが、初心者に取っ付きやすい本となっていて好感します。
マグロが海中で高速(最大時速80kmとか)で泳げる理由を体型の流線型だけでなく体表からぬめり物質を分泌していることが水流の乱れ(渦の発生や成長)を抑えて水の抵抗を低くしていることで説明しています(25~28ページ)。どれくらいの分泌物をどれくらいの頻度で放出しているのかわかりませんが、それ自体けっこうな体力を使うだろうなと同情してしまいます。マグロがそうしてすいすい泳いでいるイメージを膨らませればマグロがよりおいしく感じられるかもしれない(28ページ)という執筆者の感性は私にはとても理解できません。
カルマン渦(流体中に固定された物体の下流にできる渦)による有名な事故の例として1940年のアメリカのタコマ橋の崩壊が紹介されています(41ページ)。歴史的にはそれも有名なのでしょうけれども、日本の現代の読者にはより近い有名な事故として高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故があるのですが、そちらが紹介されていないのは、「忖度」なんでしょうか。
井口学、植田芳昭、植村知正編著 電気書院 2024年6月7日発行