伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

愛着障害と複雑性PTSD 生きづらさと心の傷をのりこえる

2024-11-03 20:30:46 | 実用書・ビジネス書
 幼少期(概ね1歳半まで)に養育者から十分な愛情を受けず、虐待されるなどして基本的な安心感に乏しく他者に対する信頼感が弱いなどの特徴を持つ愛着障害と、1回のダメージではなく長期間にわたって逃れられない状況でダメージを受け続けたことによる「複雑性PTSD」について紹介し、その生きづらさと回復に向けての治療者のアプローチなどについて解説した本。
 複雑性PTSDは、国際疾病分類の最新版ICD-11で初めて診断基準が作られたばかりということもあり、概念としても今ひとつはっきりしない感があります。人の心の話は、診断基準とか定義とかで割りきれないところがあるものとは思いますが。
 トラウマについてはトラウマの記憶を想起し再体験して言語化して整理するなどしてそれがもう終わったことであることを受容し今は安全だということを認識することで対応することが基本としつつ、過去の辛い体験を掘り起こすことでかえってダメージを受け悪化することもあり、また複雑性PTSDでは過去のことではなく今も親等との不幸な関係が続いていることもあり、まず現在の愛着関係を改善しないといけないなど、難しさが指摘されています。前者の点については「深刻なトラウマを取り扱うときの基本は、タッチ・アンド・ゴーの要領で、トラウマ状況に軽く接触すると、またすぐ離れて、安全な現在に戻るという方法だ」(303ページ)とも書かれています。深刻な愛着トラウマを短い期間で回復させる方法は存在しない、長年たまっていた不満や愚痴、恨みや怒りといったものを吐きだし続けていくなかで、ネガティブな感情で堂々巡りしていることに本人が気づきイヤになって次の段階に移りたいという気持ちが芽生えるまで辛抱強く話を聞き続けることが大切とか(304~309ページ)。さらには、愛着障害がベースにあり複雑性PTSDを引き起こしているような場合は、その症状や問題行動は本人がそうすることによって生き延びてきた手段でありまた助けを求めるSOS信号であるからただそれを取り除こうとしてもうまく行かないとも(274~278ページ)…たいへんですね。たぶん私には無理(弁護士は法律相談をしてるんで人生相談ならよそでやってくれって言っちゃいますし)。


岡田尊司 SB新書 2024年9月15日発行

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