伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

あのこは美人

2022-08-19 23:12:11 | 小説
 ソウルのオフィステル(多目的ビル中の賃貸マンション部分)に住む、ある事情で言葉を失った、アイドルオタクの美容師アラ、アラの中学の同級生で孤児院「ローリング・センター」出身で、高級ルームサロン嬢として稼ぎたくて美容整形を強く希望する、アラとルームシェアしているスジン、高級ルームサロン「エイジャックス」のNo.1で大企業の御曹司の客ブルースと肉体関係を持つキュリ、孤児院出身だが幸運にも奨学金を得てニューヨークに留学しその際に知り合った大金持ちの息子ハンビンと交際しているアーティストで、キュリとルームシェアしているミホ、その4人の下の階に夫と住むウォナの、気概と自負と苦悶と諦めを描いた小説。
 邦題の「あのこは美人」も、原題の " If I Had Your Face " もそこにストレートにこだわっているのは、登場人物5名中唯一語り手にならないスジンだけなので、そのスジンのこだわり、願望が最初に出てくるとはいえ、ちょっと肩透かしというか、そぐわない感があります。容貌にフォーカスするのではなく、もう少し拡げて隣の芝生は青い的な思い、あるいは努力しても報われないことへの焦燥感、その社会への不満を象徴していると考えれば、よりフィットするかなとは思いますが。
 冒頭にアラが言葉を失った事情がぼかされて、何となくその謎を気にしながら読むことになりますが、それもそこに期待して読むと、それを明かす部分はわりとあっさりしていますので、何だと思うかもしれません。
 韓国社会で、日本社会でも同様と思いますが、恵まれた階層に生まれなかった若い女性の生きづらさ、苦しみ、そういったものへの反発・反感などを読む作品だろうと思います。


原題: If I Had Your Face
フランシス・チャ 訳:北田絵里子
早川書房 2022年2月25日発行(原書は2020年)
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