伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

報道、トヨタで学んだ伝えるために大切なこと

2024-10-05 22:20:30 | 実用書・ビジネス書
 元「報道ステーション」のメインキャスターで、今はテレビ朝日を退社してトヨタ自動車に入社し「トヨタイムズニュース」のキャスターを務める著者が、相手への伝え方について論じた本。
 取材/話を聞くときには相手の視点を理解して、話すときは話す内容(ニュース:できごと)の当事者の視点に立ちそれが「自分ごと」と感じ意識できるように(もちろん、話す内容をきちんと理解して)、そして聞いている人(世間一般)の感覚/目線を意識するというようなことが、取材やキャスターとしての経験を交えて説明されていて、なるほどと思えます。
 しかし、この本で度々豊田章男の会話・スピーチ術、人心掌握術に感心するという話題があり、グループ企業の不祥事があった際たった1人で責任を背負う発言をしたこと(50~51ページ)、アメリカでのリコール問題で米議会の公聴会で謝罪と説明をしたこと(68ページ、191ページ)は触れているのに、今年(2024年)5月に発覚したトヨタ自動車自身の日本での認証不正(意図的な試験車両の加工、虚偽記載、データ改ざん等)問題には一言も触れていません。巻末の豊田章男会長との特別対談がいつ行われたのかは記載されていませんが、あとがきは2024年7月と記されており、少なくとも著者は執筆中には認証不正問題を認識していたはずです。「報道ステーション」のフィールドレポーターとして12年ほど、メインキャスターとして6年報道に携わった著者でさえ、トヨタ自動車の社員となればくさい物に蓋なのか、そもそもネガティブなことを隠す/隠蔽するのではなくいかに誠実な対応をしそれを伝えるかは企業広報としても今や必須ではないか、「伝え方」の本でそれをしないとはどういうことでしょうか。この本の「はじめに」で、トヨタ専属ジャーナリストになる際、豊田章男から報道でやっていたようにストレートに疑問をぶつけ、現場を取材して伝えるやり方で関わって欲しいと言われたことを紹介している(7ページ)のは何なのか。報道ステーションのキャスターでさえ、社畜になってしまう、そういうことなのかということがとても衝撃的な本でした。


富川悠太 PHP研究所 2024年9月5日発行


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