2020年4月1日施行の民法改正が欠陥住宅(建築工事の瑕疵)をめぐる法的紛争にどのような影響を与えるかについて、民法学者として、解説した本。
債権法改正のうち建築紛争で問題となる部分に特化して、改正前の規定とそれをめぐる解釈、判例を説明した上で、債権法改正後の規定を紹介している(改正前の規定で困ったところや不明な点があったのを判例で事実上修正し、それが改正後の規定で明確にされたというのが多いので、多くの点では改正前の実務と変わらないのですが)ので、弁護士には助かる本だと思います。他方で、民法学者としての解説なので、法解釈自体の説明が中心ですので、建築紛争の当事者などが読んでわかるとか使えるという本ではないだろうと思います。
著者の意見として述べられているところは、サブタイトルに「欠陥住宅被害救済の視点から」とあるように、建築事業者側のスタンスではなく欠陥住宅被害者(注文主、買主等)寄りの立ち位置です。また、特定の学者の意見を意識した批判的なコメントが目に付きます。そのあたりが心地よいという読者もいるかもしれませんが、弁護士としては、引用しにくい印象を持ちます。
建築物(完成物)引渡債務の説明で、「引渡の前日に、震度8の地震が発生し、引き渡すべき建物が倒壊してしまった場合でも、契約内容では『震度7でも損壊しない建物』と定められていたのであれば、建物引渡債務の履行について債務者に帰責事由がないということになりましょう」(34ページ)という記載があり驚きました。純理論的には(観念的には)、法解釈の説明としては成り立ちうるのですが、現在のところ「震度8」という震度階はありません。単純ミスではありましょうけれども、理論重視という姿勢が表れているのかなと思いました。
松本克美 民事法研究会 2023年5月16日発行
債権法改正のうち建築紛争で問題となる部分に特化して、改正前の規定とそれをめぐる解釈、判例を説明した上で、債権法改正後の規定を紹介している(改正前の規定で困ったところや不明な点があったのを判例で事実上修正し、それが改正後の規定で明確にされたというのが多いので、多くの点では改正前の実務と変わらないのですが)ので、弁護士には助かる本だと思います。他方で、民法学者としての解説なので、法解釈自体の説明が中心ですので、建築紛争の当事者などが読んでわかるとか使えるという本ではないだろうと思います。
著者の意見として述べられているところは、サブタイトルに「欠陥住宅被害救済の視点から」とあるように、建築事業者側のスタンスではなく欠陥住宅被害者(注文主、買主等)寄りの立ち位置です。また、特定の学者の意見を意識した批判的なコメントが目に付きます。そのあたりが心地よいという読者もいるかもしれませんが、弁護士としては、引用しにくい印象を持ちます。
建築物(完成物)引渡債務の説明で、「引渡の前日に、震度8の地震が発生し、引き渡すべき建物が倒壊してしまった場合でも、契約内容では『震度7でも損壊しない建物』と定められていたのであれば、建物引渡債務の履行について債務者に帰責事由がないということになりましょう」(34ページ)という記載があり驚きました。純理論的には(観念的には)、法解釈の説明としては成り立ちうるのですが、現在のところ「震度8」という震度階はありません。単純ミスではありましょうけれども、理論重視という姿勢が表れているのかなと思いました。
松本克美 民事法研究会 2023年5月16日発行
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