東京は、1590年の家康、1868年の薩長連合軍、1945年の米軍による3度の占領を受けたということに着目し、その占領を受けた「敗者」の視点から歴史を捉え直すというテーマで書かれた本。
敗者が、自らが敗者であることを受け容れ、勝者たちの世界がこの地上のすべてを覆ってしまうのを密かに阻止し、規範秩序を攪乱する横断的な越境から新たな知的創造をするということに著者は希望を見出しています。敗者の視点という切り口に惹かれますが、著者の関心は、敗者自体、敗者に共感し寄り添うことよりも、敗者/異端者が生み出す文化への好奇心にあるようです。
論の展開の根拠は、著者自身の研究ではなく他の研究者の著作に寄っていて、著者の主張に沿うものを拾い出して、こうも言えるのではないかということが多い印象です。そして第3の占領:米軍による占領と戦後についてはもっぱら著者のファミリーストーリーが述べられ、著者は多くの人が/誰でも自分の先祖を調べれば敗者たちのあっと驚くような人生を掘り起こせるだろうというのです。その2点で説得力が弱いかなと私は感じました。新たな観点からの仮説を述べるものだから仕方ないということもあるのでしょうけれど。
吉見俊哉 筑摩選書 2023年2月15日発行
敗者が、自らが敗者であることを受け容れ、勝者たちの世界がこの地上のすべてを覆ってしまうのを密かに阻止し、規範秩序を攪乱する横断的な越境から新たな知的創造をするということに著者は希望を見出しています。敗者の視点という切り口に惹かれますが、著者の関心は、敗者自体、敗者に共感し寄り添うことよりも、敗者/異端者が生み出す文化への好奇心にあるようです。
論の展開の根拠は、著者自身の研究ではなく他の研究者の著作に寄っていて、著者の主張に沿うものを拾い出して、こうも言えるのではないかということが多い印象です。そして第3の占領:米軍による占領と戦後についてはもっぱら著者のファミリーストーリーが述べられ、著者は多くの人が/誰でも自分の先祖を調べれば敗者たちのあっと驚くような人生を掘り起こせるだろうというのです。その2点で説得力が弱いかなと私は感じました。新たな観点からの仮説を述べるものだから仕方ないということもあるのでしょうけれど。
吉見俊哉 筑摩選書 2023年2月15日発行
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