「無常迅速」
無常の感じは若くてもわかるが
迅速の感じは老年にならないと
わからぬらしい (倉田百三)
先日テレビで「年をとるにしたがって一日一年が短く感じられるのは何故か」というようなことを語っていました。その番組での答は、「人は初めての体験は長く感じるが、経験したことのある時間は短く感じる」というものでした。
たとえば、知らない道を行く時は長く感じるけれど、同じ道を帰る時には短く感じる。同じように、子どもの時は何でも初めての経験だから時間も長く感じるが、老人は日常が毎日の繰り返しなので短く感じるのだ、というのです。そうなのかもしれないと思いました。
しかし、もう一つ言えるとすれば、明日も今日と同じ一日が繰り返されると思うから、あっという間に過ぎてしまうのではないでしょうか。
もし命の期限がみえたなら、あだや今日一日をおろそかに過ごせるはずがありません。「それ」は明日かもしれません。
「無常」が本当に「迅速」であることが分かれば、老人だって一日は決して短くない、と思います。
明日の一日は、誰にとっても初めての経験なのですから。
寺報「なあむ」213号より