なあむ

やどかり和尚の考えたこと

青春の痔 ⑨

2010年06月01日 12時42分29秒 | 青春の痔

陣痛は限界に達しています。しかし、出口は口を開くことを拒んでいます。

開こうと緊張をとけば急に押し広げられ、その痛みで閉じようと緊張すれば更に痛むという、進むことも退くこともできない、まさに進退窮まった状況でした。

力の限り手すりを握り、全身冷や汗をかきながらの格闘が続きました。

しかし、生まれたい、この世に出たいという自然の力が、徐々に、抵抗する力を凌駕していきました。

痛みに耐えながら、時間をかけて、そろりそろりと「出産」しました。

便器に落ちたそれは、3分の1の括約筋で絞ったために、円柱ではなく、3角柱のフライドポテトのような形をしていました。
はじめて産み落とした我が子は、痛みに耐えた分いとおしく、頬擦りしたいほどでした。
痔の手術という、お陰様で、貴重な体験をさせていただきました。
分娩台に乗り、タンポンを経験し、産みの苦しみまで味わうことができました。わずかながら女性の痛みを共有できたと感じています。
それにしても、ただでさえあまり自慢できない体験が、天使の晒し者にされたというおまけまでついて、生涯忘れられない青春の一コマとなりました。
今だから言える、忘れもしない21歳の春の出来事です。(完)