「すまぶれ」は、どうも松林寺近辺でのみ使われる、いわゆる隠語です。
いつまでも帰らない酒呑み客のことを指します。
それをなぜ「すまぶれ」と呼ぶのかを、以前にすまぶれの古老から聞いて感心したことがありました。
その訳は、「鳥が巣で卵を抱いて暖める、やがて卵がかえり雛となって飛び立っていく、しかし、中には、いつまで抱いてもかえらない卵もある、いつまでもかえらない卵は巣にまぶれてしまう、それで、いつまでも帰らない客を、かえらない卵になぞらえて『すまぶれ』と呼ぶようになった」、という話でした。
なかなか洒落の効いたいい隠語だと思って気に入っているのです。
使い方は、「俺はいづでもすまぶれだなや」と家人に気を遣って自嘲気味に言うのですが、そう言っている内はまだそれほど酔っていないのであって、それからまだまだ、ぐだぐだと、いつまでも同じ話を繰り返して訳が分からなくなってしまうのが、すまぶれのすまぶれたる所以なのです。
今度から「無精卵」と呼びますか。