Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

昨日の読書(100909)

2010年09月10日 22時16分26秒 | 読書
「樹をみつめて」(中井久夫、みすず書房)

 著者のエッセイ集としては10冊目を読了。主な論考は「樹を見つめて」「戦争と平和についての観察」「神谷美恵子さんの「人と読書」をめぐって」の3篇。
 神谷美恵子は私は1冊も読んだことがない。が、「(彼女の父)彼らの武士倫理の喪失を防いだのは若き日に触れたキリスト教倫理であった。そのまた後継倫理が戦前のマルクス主義であって、高校・大学時代にこれに触れた人たちが高度成長を担った」との指摘や、戦後処理の中でのクエーカー教徒の果たした役割など、勉強になった。
 「戦争と平和についての観察」について云えば、客観的な流れそのものとしては説得力はあるし、私には新鮮でかつ納得できる視点である。しかし、求めすぎとは思うが、政治にかかわる主体の問題と大衆論の欠如がさびしいところ。それは主体的にかかわった側の論考を待つしかないのだが‥。
 「樹を見つめて」‥このようなエッセイを私も書いてみたいものだ。「植物界を人間と動物の活動の背景のようにみなしてきた。‥医学は人体を宇宙かの中心に据えた天動説生物学になりがちである。‥医学だけではない。自国からしかものが見えない傾向が強まっているのも天動説復帰であろう。時には植物の側から眺めると見えてくるものがある。‥無用にみえるものの存在を肯定すること自体が福をもたらすものであろう。」