Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「図書11月号」 その2

2019年11月03日 17時16分15秒 | 読書



・二つの文化をつなぐ(下)--無用の用を愉しむ  渡辺政隆
「恐竜の鱗から進化した羽毛には、体温を保つという機能があった。羽毛を獲得した恐竜のうち、小型のものから滑空ができる種類が出現し、やがて羽ばたいて飛べるようになったのだろう。つまり飛翔用の羽は、保温装置からの転用というとになる。生物の進化については、要所要所で突飛な変化が起きているような印象があるかもしれない。しかし実はこのように、すでにあるものを開戦して流用するというのが定番に近いのだ。」
「この世に存在するものはみな、偶然にしろ必然にしろ、それぞれ歴史的な経緯、過去がある。‥われわれはともすれば結果から原因を探りがちである。しかし、即断は禁物。歴史の偶然による転用が起こり、無用だったものが有用なものに姿を変えていないとも限らないのだから。」

・俺の人生を聞きに来たのか          赤坂憲雄
「柳田国男の言葉を借りれば、相手の魂に触れることは難しい、という挫折感がありました。‥思えば私の聞き書きは、ほとんどが一人旅で行われました。‥苦しいけれど、至福の時間でした。」

・明治の空気                 長谷川櫂
「人間はみなその時代の空気の中で生きている。時代の空気とはその時代の人々が当たり前と思っていること、自覚しないまま思考や行動を支配されているもののことである。時代共通の意識であるから時代意識、自覚しないのだから時代の無意識と呼んでもいい。その時代の空気を知らないかぎり、その時代も人々の姿も見えてこないだろう。ところが困ったことに時代の空気は時代とともに消え失せる。」
 この論考はとても勉強になる。私は時代の空気を読むことは確かに難しいし、想像力が試されると思う。だが常に気を付けてもらいたいのは、「変わるものと、変わらないもの」があり、それを分けて想像すべきだと思う。何が変わるもので、何が変わらないものなのか、それは厳密にすぐには表現できないし、一般化することは困難かも知れない。考察する対象によって、ここは変った、これは変っていないのではないか、というふうに場合分けを丹念にすることで克服するしかないのではないか。 「その時代の空気を知らないかぎり、その時代も人々の姿も見えてこない」と即断的に一般化してしまうことに危惧を持った。以下は異存ない。

「子規が生きた明治は国家主義の時代だった。天皇から庶民にいたるまで誰もが国家建設の役に立つ人間「有為の人」になることを求められた。国家という理想が日本列島の空に二つの太陽のように輝いていた。誰もがそれを異常とも不思議ともさえ思わず、当たり前のような顔をして暮らしていた。‥(「国のために活きる」という明治の国家主義が、やがて「国のために死ぬ」という昭和の国粋主義にへんしつしてゆく‥。)」

「経済にしても同様である。会社も商店も経済活動は単なる利潤追求、金もうけであってはならず、儲けたお金は国家の役に立つものでなければならなかった。‥理想によって手綱をさばかれるはずの経済が、戦後は野放しになってしまった。経済といえば聞こえはいいが、要するにお金である。」
「国家主義という明治の空気。これがわからなければ、子規の俳句も文章もわからないだろう。「病床の我に露ちる思ひあり 子規」、日本の役に立ちたいという大望を抱いているのに、病気のせいでそれが出来ない。これが子規のやむにれぬ「露ちる思ひ」だった。」

・武満徹08 WVTR              片山杜秀
「小学生のときの吃音体験で音への意識を過敏にし、 中学生のとき、勤労動員中にシャンソン「聞かせてよ愛の言葉を」で音楽に目覚め、戦後すぐ、学校に戻った時期に、フランクのピアノ曲に触れて感動し、クラシック音楽の作曲家を目指す。階梯としては、そのようになるだろう。だが、どうしてフランクなのか‥。」 「同音反復と順次進行による原初的な音の組み立てに執拗にこだわる‥フランクの音楽。吃音とシャンソンの次にフランクが浸かるのは、あまりにも理に適っている。‥そしてフランクの続きについにメシアンが発見される。」

・験す神                      三浦佑之

・五色譜(ゴシップ)と「お座なりズム」       山室信一
「ジャーナリズムは、読者の興味に応えるだけでなく、読者を増やすために無理にでも興味をひくスキャンダルを造り出す。それは同時に、真に問題とすべき事柄から人々の目を逸らし、重要な真実を隠蔽することになる。‥そして、今、SNSというメディアを手にしたゴシップ・モンガーは、プライバシーなど一顧だにもしないゴシップ・モンスターとして世界を跋扈している。」



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