帰宅後、「江戸絵画 八つの謎」(狩野博幸、ちくま文庫)の第4章「曽我蕭白 ふたりの「狂者」」、第5章「長沢芦雪 自尊の顛末」を読み終え、第6章「岸駒 悪名の権化」を少々。
第3章「伊藤若冲 「畸人」の真面目」は勉強になった章であったが、残念ながら第4章の曽我蕭白は私には著者のこだわりがよく理解できなかったので、引用も感想も省略。異存のあるかたも多いと思った。
第5章の長沢芦雪では、武士の出という過ぎたる誇り、自尊心が余りに高く、世間と軋轢が絶えなかった芦雪の生き様をこれでもか、と浮き立たせている。そして晩年の芦雪の作品について「応挙没後のそれら(作品)に明瞭に見られるようになるが、心にしっとり染みわたるような作品群と、何かにせかされるような、苛々した感じの作品群とが、ほとんど分裂症的に併存する。‥なにかトゲトゲした感覚を見逃すわけにはゆかない。‥網膜にはっきりと映像を結ぶ幽霊を、酒精に侵された芦雪の脳が捉えたのである。正常と異常が繰り返す日々を、芦雪は応挙という存在なしで過ごしてゆかざるを得ない。」と記している。
こういう視点で今後芦雪の作品を見てみたいと思った。