久しぶりに岩波書店の広報誌「図書7月号」に目を通した。本日目を通したのは、次の5編。
・[表紙]ウィンストン・チャーチル 杉本博司
・ムジナモをめぐる奇しき因縁 渡辺政隆
・「野の果て」の世界 田中優子
久しぶりにいい文章を味わったと思った。
「(志村ふくみさんの「野の果て」は)数ページ読むと、その場を離れ、心を落ち着かせて呼吸を整え、再びその世界に入る、という読み方になった。圧倒される、言葉が食い込んでくる、追いつめられる――いろいろ表現を探してみたが、どれも少しずつ違う。人が自然界の中で自分の命をつなげる必要に迫られたとき、こんなふうになるのではないか?」
「志村ふくみの言葉は、染織を通して、生命と自然の向こう側をさし示す言葉である。さし示すだけでなく、その入り口に導く。それはかつて宗教指導者たちが行った営為であるが、今の世ではそういう人々に出会う機会に恵まれない。志村ふくみの言葉との出会いは、その稀な機会に相当する。」
・「沖縄レポート」(下) 柳 広司
・音楽が繋がっている 笠松泰洋
「音楽は言語とは違う。しかし言語のようなものである。生理的、心理的状況とその変化を伝える言語のようなもの、と言えばいいだろうか。‥人間とはそれらの感覚や感情を音にして表してきた生き物なのだ。言葉は学習して初めて使える道具である。」
「日本らしさ、とはいったい何なのだろう。‥奈良時代にアジア各国の文化使節が日本にやってきて、‥儒教や仏教の音楽として保護され。‥しかし現在も使われている楽器で生まれも育ちも日本、という楽器は、雅楽の古琴(こごん)くらいしか見当たらない。」
「言語の種類や宗教の違いは、生まれてから学習されるものだが、音楽はもっと人間の本質に根ざしている。音楽と楽器は地域、民族、時代を超えて生き、融合し、新しく育成されていく。」