・[表紙]ベンジャミン・フランクリン 杉本博司
「結社は秘密が良い。そこでどのような秘儀が執り行わているのか興味を誘う。結社は宗教を名乗らないところも良い。‥フランクリンはもちろん合理主義者だ。私にはその合理主義を突き動かす何らかの動因があったように思うのだ。結社の秘密に私は誘われていく。」
私はまったくこれとは真逆の思想である。特に結社を「政治結社」にしてみればよい。日本の政治結社は保守も革新もリベラルも、体制派も反体制派も、押しなべてその中枢の「秘密」と「正統性の保持」という「秘儀」によって生き永らえてきた。日本の政治はそのことを自ら抉り出さないと将来はない。旧統一教会信者を親に持つ山上徹也が示したのは、安倍晋三と自民党が統一教会とこれほどまでに癒着してきたことを図らずも満天下に示したことである。これほどの衝撃はどの政治組織も個人もなしえなかった「秘密の暴露」である。
現実の宗教、政治等々の場面では「結社は秘密であってはならない」のである。「秘密」や「秘策」が積もれば積もるほどその組織は腐敗し、構成員を押しつぶし、唯我独尊になり、頂点に位置するものだけが組織を支配してしまう。
・アルツハイマー病と診断された母の心の奇跡 齋藤正彦
・柳田、南方山人論争と中国の山人 金 文京
私の理解の範囲を超えている論考であった。ちょっと無理がありそう。
・落語家と噺家 橘 蓮二
「年齢を重ねていけばいやというほど自覚することだが、人はおいて必ずしも賢くなるわけでも善良になるわけでもない。それでも落語の国に住む、清濁併せ呑む登場人物たちの、右往左往しながらも懸命に生きる姿に触れることが出来たなら、迷い外のある人生の中にも生きるヒントが得られるかもしれない。」
・社会人未経験者、社会人に社会学を教える 中森弘樹
・金子淘汰の語った生月と、山頭火、一茶 北村皆雄
「(金子兜太は)妻を通して乳負の人に親しみを持つようになさ手から、少しずつ変わっていった。兜太さんが言うには、俳句も社会的なものからだんだんアニミズム的なものに向いて行った当う。“梅咲いて庭中に青鮫が来ている”青鮫は、南の海での戦死者だろうか。それを食べに来たサメのイメージと重なっているようでもある。」
ここの最後の一文は誤植かもしれない。意味不明。私はこの句について「青鮫」は戦死者ないし「戦争」の幻覚と解釈してきた。
「金子兜太さんは、思想的には一茶に惹かれているが、その潔癖性、身の清さからは、むしろ(井上)井月に近いと私は思ってぃる。それはインタヴューで語った山頭火についての手厳しい評価からもわかる。」
「兜太さんは晩年、一茶の荒凡夫を意識して俳句のありようを語っている。「私は存在者の俳句をつくりたい。存在者とは、そのまま、そのもので生きている人間のこと。人間の本来の姿である存在者のために生涯を捧げたい。」」