メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『落穂の天使』

2009-12-24 20:24:01 | 
『落穂の天使 人はなんで生きるか』 未知谷
レフ・ニコラエヴィッチ・トルストイ 著 / ふみ子・デイヴィス 訳 / ナターリヤ・オレゴヴナ・トルスタヤ 絵

「文豪トルストイが最後に行き着いた民話形式の第一作
 読者の心に迫る芸術以上の芸術、とロマン・ロランが評した掌篇」

「人に与えられているものはなにか?
 人に与えられていないものはなにか?
 人はなんで生きるか?
 この三つに答えられたら
 あなたも天使です」

冬ではじまる物語り
貧しい靴屋の主人は、この冬を越すための外套を買わなければならないのにどうにもお金が足りない。
それなのに、礼拝堂の壁に裸でもたれる得体のしれない青年を見過ごせず、自分の上着を着せて、家まで連れて帰る。
今夜のパンしかないのに、妻は怒りながらも、青年にそのパンを与えて、暖をとらせた。
すると青年は天に向かって微笑んだ。

青年の名前はミハイル。靴の修理やらを教えたらすぐに覚えて、技術は主人を越え、評判となった。
1年経ったある日、恰幅の良い旦那が「1年間擦り減らない革靴を作れたら大金を払う、
もし途中で擦り減ったら牢屋にぶち込んでやる!」と注文する。
するとミハイルは旦那を見て微笑み、長靴の注文なのにスリッパを作りはじめた。
主人はうろたえるが、間もなく先ほどの旦那は急死し、長靴の代わりに死人に履かせるスリッパが必要になった。

それから8年経ったある日、こぎれいな奥さんと幼い双子の娘が注文に来たが、娘の1人は脚が不自由だった。
聞けば、双子の本当の父親は産まれる3日前に材木の下敷きになって死に、母も2人を産んですぐに亡くなって、
その冷たくなった母親の下敷きになった赤ちゃんの脚が曲がってしまっていたのだという。
両親をよく知る近所の奥さんが双子を不憫と思い、自分の子とともに乳をあげていたが、
やがて自分の子は2歳で死に、それ以降子どもに恵まれないため、今ではこの双子が生きがいだと言う。
涙ながらに話したその話を聞いて、ミハイルは三度目に微笑み、その身体は眩しいほどに光を放っていた

ミハイルは「わたしは罪を犯したために地に堕ちた天使だったが、
神が問うた3つの答えが分かった今ようやく許されて天に帰ることができる」と言った。
「わたしも知っておきたいからぜひ教えてほしい」と主人。
「最初に自分らの生活もままならないのに靴屋夫婦はわたしに服を着せ、パンを与えてくれた。
 “人に与えられているもの”、それは「愛」であることを知った。
 裕福な旦那が長靴を欲しがった時、人は1年先のものまで用意したがるが、夕方まで生き延びられないことさえ知らなかった。
 “人に与えられていないもの”、それは自分の肉体には何が必要かという知識だと知った。
 そして、他人の子をわが子のように慈しんで育てた奥さんの話を聞いて、最後の答えを知ったのです。
 人が生きているのは、策を弄して、自らに世話をやいた結果ではなく、
 愛によって生かされているのだということを。

 人に必要なものが何かを最初から示さないのはなぜか。 
 人々が共に生きることによって初めて、自らに必要なものを知らされ、
 そしてそれを知ることが、他の人々をも満たすことを悟らせるためだと知りました」

ミハイルの背からは翼が生え、天へと向かって飛び立っていった。


Xmas にピッタリなお話でした。
はて。わたしには無償で与えられる慈愛があるだろうか。


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