メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1994.10~ part1)

2013-02-08 11:20:53 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
今回は草色のノートからご紹介。

  

photo1:映画雑誌に載ってたクリストファー・ウォーケンの切り抜き
photo2:宮沢賢治記念館に行った時の旅行記。
photo3:そして、なんといってもモンティ・パイソンとの運命的な出会い
この『空飛ぶサーカス』を借りて何百回も観た(とくに大好きなエリック・アイドルの箇所
しまいにはスケッチをすべて記録したり/驚
今では「モンティ・パイソン大全」に全部書いてあるけどね
そして、これ以降しばらくはコメディ映画ブームが巻き起こった(あくまで自分の中でw

若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『告白』(1981)
監督:ウール・グロスバード 出演:ローバート・デニーロ、ロバート・デュヴァル、チャールズ・ダーニング ほか
生々しいバラバラ死体の犯人を捜すうちに建設業にまで関わっている教会と聖職者らのビジネス化した偽善を描き、
全く反対の立場にいる兄弟の、複雑だが奥の深い血のつながりを淡々と描いた作品。
デニーロとデュヴァルが兄弟役で共演しているのが見どころ。たとえ2人で何も言わずに顔を合わせて座っているだけでも、
人生の重みや深み、情なんかが漂って完璧絵になるのは、2人とも遅咲きの充分なキャリアと自信が備わっているからだろう。

立派な教会には人が集まる。宗教団体は寄付、つまりお金で動いているという事実をまざまざと見せられた。
あらゆる絢爛豪華な宗教の祭事、型にこだわる儀式の費用の一部は、聖職者のポケットに入るように成り立っている。
所詮は人が作り上げた組織。天上の真理とは本質的にまったく別物だということだ。
司祭まで女性を買っているなんて。神に仕える者は、禁欲を守らなければならないなんてルールを最初から作らなきゃよかったんだよ。


『ジュラシック・パーク』(1993)
監督:スティーブン・スピルバーグ 出演:サム・ニール、ローラ・ダーン ほか
恐竜ブームを再燃させた作品の超ヒット作がこれほど早くビデオ化され自宅で楽しめるとは。
ウチのちっちゃい画面で観るのは情けないかぎり。劇場で観たら3D映像並の立体感覚の興奮で
背筋もゾクゾク、飛びあがりながらのディズニー風サバイバルゲームに参加できただろう。
動物パニック映画でもあって、相手は何千万年も前の、利口でチームワーク抜群の肉食恐竜とあれば手強さは並じゃない。
食欲もすごくて人間を執拗に追いまわし、ドアを開けたり、窓から覗いたり?!
ま、そこはサメを凶暴化させて全世界を震え上がらせた『ジョーズ』の監督。CGで現実に蘇ったとしか思えない合成映像で、
私たちの中に眠っていたロマンと好奇心を目覚めさせてくれた。

サム、ローラ、ジェフ・ゴールドブラムという癖のある実力派俳優の起用も大正解。
そして欠かせないのが小さな観客を代表する男の子と女の子。
次々ととんでもない目に遭いながら、動物や自然の生命力を愛し、勇気と好奇心で対抗する彼らも主役級。
夢の実現と金儲けのために自然の生命力と危険性を無視して、愛する者まで失いそうになる老人を通じて、
自然の脅威、命の尊さ等、スピルバーグらしいメッセージをもっている。
でも、結局はお金。映画関連グッズは売れただろうし、テーマパークのアトラクションにもなるし、
トータルの興行利益たるや想像を絶するものだろう。


『逃亡者』(1993)
監督:アンドリュー・デイビス 出演:ハリソン・フォード、トミー・リー・ジョーンズ ほか
タイトルもズバリ、妻殺しの容疑で有罪、死刑宣告を受けた医師が連邦警察の追っ手を交わしながら真犯人を探し出す
2時間たっぷりの逃亡劇を迫力ある展開で描いた、キャストもビッグなヒット作。
ジョーンズのデータが全然ないのが残念。スリムな身体にタイトなジーンズ、真っ赤なマフラーでキメた刑事なんて珍しい。
土臭いフォードとは対照的に、都会的な彼の雰囲気は悪役向きだけど、敏腕刑事役もなかなかイケる。
追うほうも追われるほうも頭がキレるのが作品のポイント。これから逃亡を企てる人には勉強になるかも!?
医師リチャードが人々から好かれ、絶対的な信頼を得る善人という設定がポイント。
大画面のスクリーンで観たらさぞかし大迫力だろうなっていうシーンの連続。


『DO THE RIGHT THING』(1989)
監督・脚本・主演:スパイク・リー 出演:ダニー・アイエロ ほか
「人種差別に暴力で闘うのは愚かなことだ。暴力は破滅に至るらせん状の下り階段で、
 “目には目を”の思想はすべてを盲人に導く。暴力は敵の理解を求めず、敵を辱める。
 暴力は愛ではなく、憎しみを糧とし、対話でなく独白しか存在しない社会を生み出す。
 そして暴力は自らを滅ぼし、生き残ったものの心には憎しみを、
 暴力をふるったものには残虐性を植えつける」(マーティン・ルーサー・キング

「アメリカには善人も多いが悪人も多い。権力を手中に握り、我々の進む道を阻んでいるのは悪いやつらで、
 この状況を打破するために闘うのは我々の権利である。
 私は暴力を擁護する者ではないが、自己防衛のための暴力を否定する者でもない。
 自己防衛のための暴力は暴力ではなく、知性と呼ぶべきである」(マルコム・X

ともに人種差別について語っているが、それに対する姿勢は全く違っているこの2人が、笑って1枚の写真に納まっているのはなんとも奇妙。
♪Fight to Power (for freedom) とシャウトするヒットナンバーのラップにのせて放ったリーの話題作。
白人、黒人、韓国人、ユダヤ人、イタリア人、プエルトリコ人、、、
どうして生まれた国、生まれた時間なんかによって、人間に上下や優劣の差が生まれるのだろうか?

ブルックリンの下町の日常をとらえたコメディから、ハードな差別問題に引きこむあたりは上手い。
よりリアルに見せるアップテンポな撮り方は新しいし、黒人独特のビートやセンスに溢れている。
「W.ヒューストン、M.ジャクソンetc.・・・我々が日々耐えていけるのは君らのお陰だ」「彼らは黒人を超えた黒人なんだ」
「左手が憎しみ、いつもトラブルを起こす。次第に強くなっていくが、右手の愛はいつも勝つ。人生は愛と憎しみなんだ」
ジョン・サヴェージが1カット出ているのもチェック/驚
日本も今年は最高41℃なんてゆうひどい猛暑。これを観ると、朝から汗びっしょりの日々の記憶が蘇るけど、
あの暑さは今はどこへやら。ブルックリンにも寒い冬が訪れることだろう。
チーズがたっぷりのったピザが食べたくなったなあ!


『キャンディマン』(1992)

監督:バーナード・ローズ 出演:ヴァージニア・マドセン ほか
たしかに『羊たちの沈黙』に通じるものある、血生臭いホラーなんだけど、
サイコでロマンティックな雰囲気さえ漂う。上品なスプラッタとでも言おうか。
初期作品の初々しいヒロインから、モンローばりの完璧セクシー・ビューティまで、マドセンの魅力もたっぷり堪能できる。
その名前の甘い響きとは全く反対な恐怖と生贄を糧とする伝説のキャンディマンが
なんともクラシックでゴージャスで哀愁漂う魅力的な黒人なのがポイント。
思い出すのは、学生の時、私たちもやっぱりこんな噂話をよくしていたこと。「口裂け女」もそうだし。
話しながらもどこかで深層心理が生み出す恐怖のひとつで実在しないんだと思っているけど、
映画ではジェイソンやフレディまで、次々と心の奥に巣食う恐怖をスクリーンで体現させてゆく。
久々に背筋がゾクっとくるあとをひきそうなホラー映画。


『パーフェクト・ワールド』(1993)
監督:クリント・イーストウッド 出演:ケビン・コスナー、ローラ・ダーン ほか
同じ逃亡劇でもイーストウッドが撮れば叙情的。「俺は善人じゃないが、根っからの悪人でもない」
今作には、暴力をふるう親と、無力に従う子どもが描かれている。
子どもの教育にはちょっと向かないワルだけど、親子関係には特別な信念を貫くブッチ。
クリスマスや誕生日を祝っちゃいけないなんてくだらないルールに絶対服従させられる子どもと宗教の問題もある。
彼らにとって親はやはり必要で、どんな親だとしても愛情を求めていることを忘れてはならない。
「20世紀のタイムマシンだ。俺がキャプテン、お前はナビゲーター。これから向かうのは未来。
 後ろに過ぎ去ったのは過去。タイムワープしたきゃアクセルを踏めばいい。止まったここが現在。現在をたっぷり楽しもう」


『ジャングル・フィーバー』(1991)
監督:スパイク・リー 音楽:スティービー・ワンダー
出演:ウェズリー・スナイプス ほか
トボけたキャラで自作に登場する才能あふれるリー監督。
今作は、黒人と白人のロマンスをウディ・アレン風にじっくり描いた感動的なヒューマンドラマ。
「白人男は、昔、小屋に黒人女をかくまい、好きなのを選んで遊んだ。それで生まれたのがハーフや1/4、1/8の黒人たちだ。
 白人妻はそれに誇りをもって耐え、夜になると黒人男に抱かれる夢を見た」
どれだけ差別がはびこっていようと、愛する気持ちは変えられない。
なのに、肌の色、過去の恨みつらみ、偏見で気持ちを抑えたり、影でこそこそ欲望を満たすなんて、なんて妙な話だろう。

「愛は勝つ、なんてディズニー映画の話だ」現実はロマンス映画のようにカンタンじゃない。
リーは黒人が白人をとやかく言う“逆差別”にも触れている。そして仲間同士のあけっぴろげの話し合いを通して、
もっと肌や生まれなど関係なく自由に愛し合えないのか?という問いも投げかけている。
「2年間ひと言も口をきかずに大喧嘩していた時も背中を流す務めだけはおこたらなかった。それが本当の結婚というものだ」
カトリックの性に関する掟を破らない者なんているだろうか、牧師も含めて。
この問題はとてつもなく深刻で複雑すぎて逃げ道はどこにも見えない気がする。


『ボディ・スナッチャーズ』(1993)
監督:アベル・フェラーラ 出演:ガブリエル・アンウォー、メグ・ティリー ほか
「どこへ逃げようと、どこへ隠れようと、あなたと同じ種族はもう残ってはいない」
3度目の映画化。よっぽどアメリカでウケたみたい。
私の好きな眉村さんのSF小説の世界みたい。薄気味悪さが後味に残る。
エイリアンに身体も魂ものっとられるSF映画は多いけど、人々の未知なる宇宙の知的生命体のイメージは
いつもグチャグチャと湿っぽい、得体の分からない姿なのね
今回は特別、なにやら長いパスタみたいな触手で人の体内の養分を吸い取って、
DNAデータを読み取るのか、殻の中に全く同じ姿を再生するっていう寄生系。

「仲間になれば怒りも葛藤も感じない」それが本当なら結構な話だ。さっさと仲間になっちゃったほうがラクかも。
個人を尊重しすぎるあまり問題を抱えているアメリカでは、「個々よりは種族のほうが重要だ」となると
個人の意識はなくなって、死と同じなわけだから、どのみち大量虐殺と変わりない。
この考えを強制的に押しつけるのは賛成できない。
個よりも団体の連結を優先させる、感情を隠した日本人の進出も、アメリカ人にとってはエイリアンと同じに見えるのかも。
そんな潜在的不安感が作品から感じられる。

アンウォーの初々しい演技もいいけど、いつも何かにとりつかれていそうなメグの新作ということで注目。
フワフワとした彼女の雰囲気はどう見ても異生物にのっとられている感じ
でもボーっとしているフリだけで、仲間と見分けがつかなくなる異性人連中もちょっと間が抜けているところがありw


『バックドラフト』(1991)

監督:ロン・ハワード 出演:カート・ラッセル、ウィリアム・ボールドウィン ほか
偉大な監督、スタッフ、キャストが揃えば完璧な映画がうまれるという例のひとつ。
今日も夜昼となく火と戦い、自らの命を賭けて他の命を救う、
普段はあまり気にもかけない消防士さんたちだけど、こんな仕事もあるんだなあ!
『スパルタカス』並のカッコいい音楽がいやがおうにも盛り上げて、
ラストシーンのボールドウィンは煙草のCMかと思うほどニヒルにキメたアップ。
2時間たっぷり、兄弟と炎の戦士の大作ドラマを観たなって満足感が残る。

ストーリーもしかり、もっと驚くのは、生きているとしか思えない火のしたたかな動きの映像
スルスルと部屋の奥に隠れたと思ったら、いきなり背後からBOOON!!と人を吹っ飛ばす。
「火を読むんだ。火は憎しみ、だがそれを消すには愛が必要なんだ」

議員の秘書役にはジェニファー・ジェイソン・リーも出演。
カートの熱の入った演技は文句なく脱帽。自分で自分を追い込んで責任の重さに気を許せる相手が妻しかおらず、
その妻ともうまくいかない、この微妙で取り返しのつかないすれ違いがなんとも悲しい。
炎と戦い、炎にとりつかれた消防士さん。できるならずっと他人ごとであって欲しい。


『ベルエポック』(1992)
監督:フェルナンド・トルエバ 出演:ペネロペ・クルス ほか
日活系な作品だけど単なるピンク映画じゃない人生の機微さえ感じる。
スペインのおおらかさの中で繰り広げられる1人の若い脱走兵の青春と4人姉妹。
そして気のいい老父の恋愛と人情物語。
料理は上手いし、お酒は飲まない、若くてハンサムな男は、スペインのロバート・ダウニー・Jr.って感じ。
監督の自伝的要素も入っているのだろうか? 子どもが巣立っていく親の気持ちってこんななのかしら?

コメント

notes and movies(1994.10~ part2)

2013-02-08 11:20:52 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『エンジェル・アット・マイ・テーブル』(1990)

監督:ジェーン・カンピオン 出演:アレクシア・キオーグ、カレン・ファーガソン ほか
3部に分かれ158分にわたって描かれる原作者ジャネット・フレームの半生。
監督は『ピアノ・レッスン』でも高い評価を得たカンピオン。舞台はフレイムの故郷であるニュージーランド。
英語圏だけど鼻が詰まっているような独特のアクセントがある。
『ベル・エポック』同様4人姉妹と兄の話だけど、撮る監督、時代、場所、テーマによって随分違う。
とても他人とは思えない彼女。本物の苦しみの中から生まれた美しく光る詩と物語。
いつか原作を読みたい。大人になってすっかりキレイになったジャスを演じたケリーは熱演。
心の悩みを抱えながらも書くことに一身を捧げる主人公の微妙な心情を見事に表している。


『トラック29』(1987)
監督:ニコラス・ローグ 出演:テレサ・ラッセル、ゲイリー・オールドマン、クリストファー・ロイド ほか
??? どうもスッキリしない。彼は存在してた? ヘンリーは殺された???
ラッセルにゲイリーのキャストなら何かトラブルが起きなきゃ不思議だけど、
のっけからジョンの♪MOTHER をかけて、なんだか腑に落ちないミステリーと家族愛のゴチャまぜ。
イギリス映画だからブラックでシニカルになっちゃうのね。

子どもじみた不気味な青年役のオールドマンの、多才で常に毒をはらんだ演技には驚かされる。
彼が出るだけでどうってことない作品も面白くなる。ラッセルの豊かなヒップのアップも妙に多かった。
彼女ほど飲んだくれた妖艶な女性が似合う人はいないな。男女関係にも近い母と息子の関係。
母性愛はそれほど取り返せないくらい女性を傷つけうるのだろうか?
リンダが傷心からの精神分裂にかかっているならかなりの重症だけど、もしかしたら
心霊現象かミステリーゾーンの世界なのかも。
それともラストの平和な歌のように最初から想像の出来事なのかもしれないし。


『ベイビー・オブ・マコン』(1993)
  
監督:ピーター・グリーナウェイ 出演:ジュリア・オーモンド ほか
『プロスペローの本』は1シーンも見過ごすのが惜しい凝った映像だった。
『コックと泥棒とその愛人』は、血生臭くショッキングな展開にげんなりさせられた。
そして、昨年アートシアターで上映された今作を相当な覚悟の上で観たけど、
この侮辱、このストレスに耐えられずに私は震えている。

幕引きに彼女が衣装も新しく笑顔でアンコールの列に参加してくれていたら、よっぽどマシだったのに。
しかしそれだと真実性に欠け、私たちはこれが単なる芝居で、作り話で、映画で、空想の世界と片付けてしまうだろう。
そして、形だけは元通りの平穏な現実に戻ってくる。今作はそれを許さない。
宗教と性。このあまりに深く根付いた2つの関係を取り上げて、真正面から、誰も観たくないその真実の姿を突きつけた。
映像はルーブル美術館に飾れるほど、中世ヨーロッパ絵画のようだけど、これほど吐き気がする映画は最初で最後だ。

今作のハイライトであるレイプシーンは、『告発のゆくえ』のジョディなんてもんじゃない。
動物以下の悪魔そのもの。この侮辱と胸糞悪さは女性だけじゃない、男性だって耐え難いはずだ。
私はふと戦時中の慰安婦の証言、それが実際どんな状況だったかを思い出した。
ひどい時には1日10人も相手にさせられ、ついには抵抗できないよう手足を縛って輪姦状態だったという。
ある兵士はそれに恐怖し逃げ出した。でも中には構わず犯した者もいる。
それほど、性欲とは命を奪うことさえ構わなくなるほど抑制の効かないものなのか?
これは“お話”じゃない、今、この瞬間も起こっている事実。
セクハラ、ポルノ、写真集、日々耳に入る陳腐な下ネタの笑い話、私が男性側ならどんなに気がラクか。
エイズが存在する現代、ヒトを愛する純粋で温かな心を私は信じている。
ヒトは獣以下になり得ると同時に、幸福な善人にもなり得ると、今さらながら、わたしは信じているんだ。

(これを観た時は、本当に気分が墜ちたっけなあ・・・


『上海1920』(1991)
監督:レオン・ポーチ 出演:ジョン・ローン、ロレッタ・リー ほか
中国のノリが強いのに、洋画要素も取り入れて、なんとも中途半端な感じになっている。
育ちの違う中国人と白人の男同士の友情物語、おまけにロマンスも着色されているけど、
結局何をテーマに撮ったのか、ラストもハンパでよく分からない。
1ついえるのは、戦時中の日本がどれだけ狂った罪を重ねていたか、
そしていつの時代も女性は囲われるか囚われて、レイプされるしか道がなかったということ。

ローンは『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』や『チャイナ・シャドー』系の同じトーンのオファがやはり多いようだ。
アメリカン・ドリームでのし上がる野心的アジア系。彼ならもっと幅広く演れるのに。
ドーソン役は三文オペラ風だし、一番参ったのは、中国人スタッフが奇妙なキャラばかり。
皆男色っぽくて、極めつけのドンは白いガム風船みたい。カメラの動きやカットは昔のカンフー映画っぽいし。
一応、これでローンの出演作はひと通り観た。今年で42歳。キャリアも充分。
『M.バタフライ』で親境地を開いて、もっと活躍することを期待したい。


『エロティックな関係』(1992)
監督:若松孝二 出演:内田裕也、ビートたけし、宮沢りえ ほか
「フランスの小説の盗作にてフランス人は見るな」という冒頭の断りが入っている。
日本のギャング映画(巻き込まれ騒動型)+パリ観光案内付って感じ。
日本人がわざわざパリで探偵するだろうか? いかにも客が少なそう。
日本人に銃撃戦アクションはしっくりこない。緻密な工作員や、裏取引ならともかく。
一番の見どころは主演3人の顔合わせ。これはなんとも貴重でスリリング。
この3人なら時代劇や西部劇だって観るだろう。宮沢りえのルックスはインターナショナルだし。
ラストにサッチモの♪ラ・ヴィ・アン・ローズ が流れ、パリのあちこちをとらえた映像はキレイ。
パリ=ファッション=黒ってことで、どこでも黒で決めた怪しげな日本人による、日本向け娯楽映画ってわけ。
セリフにも初級のフランス語もとりまぜて「パリの日本人」ってところかな。
流暢にフランス語が話せたらステキだろうね。


『ザ・スタンド』(1994)
 
原作:スティーヴン・キング 監督:ミック・ギャリス
出演:ゲイリー・シニーズ、ロブ・ロウ、モリー・リングウォルド、ローラ・サン ほか
キング・オブ・モダン・ホラー。最近はロックバンドまで作ってツアーに出てる(キングがギターもって歌うってどんな)て活躍ぶり。
本を書けばベストセラー、そしてすぐさま映画化されヒットする。まさに現代の売れっ子にして天才作家キングの新作がコレ。
1本3時間ずつの2本てちょっと手を出すのに勇気がいるけど、ヒッチコック同様、自作にいつもちょこっと顔を出してる彼が
今回はセリフつきでちょっとした演技をしているのまで観れちゃう(良し悪しは別として
いつものクリアなカメラ映像でキャストも豪華。キングの小説はテレビ向きだと常々思っている。
人物の作り方、現実的、日常的なストーリー運び、迫ってくるリアルな恐怖。
今作は、製作、脚本にも加わり、その計り知れない頭の中のイメージを映像化している。

注目はやはりシニーズ。彼の緊迫感のある目元からくる雰囲気、小柄だけどマッチョマン的ヒーローと違って、
理性的で、女性を理解してくれそうな理想的キャラがピッタリ。
色男のロブ・ロウは、耳が不自由なとても善良な役所。モリー・リングウォルドは爽やかで明るい女の子役で光っている。
それから『ツイン・ピークス』ですっかりアブノーマルさが板についた男優が悪玉の右腕なんだけど、
コンプレックスなどからワルになりきれてない、どこか共感がもてる哀愁ある悪役でいい味出してる。
歌手役の男優は、ティモシー・ハットン風の完璧なハンサムガイ。これから活躍しそう。
妖しい美女ナーディーンはローラ・サン。『ミザリー』のキャシー・ベイツもDJ役でチラっと出てる。

アメリカの様々な土地が舞台となる、いわばアメリカの代表作家によるアメリカを描いたドラマ。
どこか聖書の使途か『里見八犬伝』を思わせる感じ。キングに珍しく宗教色の濃い作品。


『ゴッドファーザーPARTⅢ』(1990)
製作・監督・脚本:フランシス・コッポラ 出演:アル・パチーノ、アンディ・ガルシア、ソフィア・コッポラ ほか
'72、'74、そして約20年ぶりに製作された'90のこの完結版。
さしずめゴッドファーザー・ブランドともいえるコルレオーネ一族のその後の行く末をコッポラが20年間もあたため続けた理由とは?
初作で赤ん坊だった実娘が美しく成長してスクリーンに再登場し、あたかも彼らの歴史は実在し、共に時間を経てきたかのよう。
俳優それぞれも年季が入って深みや渋みを増し、この壮大な新旧入れ替わりの物語をいやがおうにも盛り上げていく。
とはいえやはり“血には血を”の復讐劇はいつか自らを滅ぼす時が来る。
「奴らは愛する者らを狙う」というセリフは重い響き。

すっかりマーロン・ブランドの座を奪ったかのようなアル・パチーノのマイケル晩年の演技が見物。
ブリジッド・フォンダやジョン・サヴェージが端役で出ているのはコッポラの影響力がうかがえる。
ガルシアはイタリア系の風貌を生かして、俳優陣にも新旧交代の雰囲気が漂う。
一家揃ってオペラとともに暗殺劇が裏で進んでいくあたりは初作を思い出させ、サスペンスはヒッチコック並。
家族を守るための戦いがいつしか金のうずまくビジネスに変わり、女は単なる飾り、跡継ぎを産む存在でしかない古い格式はそのまま。
'72の晴れやかなダンスシーンを、その後のシーンとダブらせるなんてにくい演出だった。


『エム・バタフライ』(1993)
監督:デヴィッド・クローネンバーグ 出演:ジョン・ローン、ジェレミー・アイアンズ ほか
これほど最初から終わりまで画面に釘付けにされる作品は他にないだろう。
'60の政治状況がからんで、この時代の特異で微妙な国と国民の様子も描かれる。
惹きつけられるのはジョン・ローンの女装の美しさ。“真実は小説より奇なり”とはまさにこのこと!
髪を短くして、背広を着れば、美しさは変わらずともやはりローンは魅力的な男なんだ。
『ラストエンペラー』以降、その神秘的なアジア系の魅力と演技力を生かしきれずにいたローンにとっては久々の大役。
『ダメージ』等、愛と欲望に翻弄される典型的イギリス人を演じるジェレミーのせつな的な魅力も見事ハマっている。
重要なテーマは“永遠の女性はすでに幻でしか存在しない”ということ。
東洋でさえ“貞節”は死語になり、男に仕え、命すら捧げるような奴隷になる女性は伝説。
浮気相手に恥じらいもなく裸になる女性がそれを象徴している。
ルネは自分でその役割を演じるしか仕方なかった。対等な人間として見れずに幻を追うしかないなんて悲しい。
最初のCGによる日本的な映像がキレイ。ラストには狂気さえ感じる。


『ハウス・オブ・カード』(1992)
監督:マイケル・レサック 出演:キャスリーン・ターナー、トミー・リー・ジョーンズ ほか
愛する家族を突然失ってしまう計り知れない絶望感、虚無感から必死に這い上がろうとする母、娘、息子。
自閉症と天才的な未知の力のフシギな関係も取り上げて、シンプルながら繊細でファンタジック、
重い心の傷と家族の強い絆を描いた佳作。
今もそれぞれの障害を抱え、その奇妙な世界から抜け出す術を知らない子どもたち、大人たちが大勢いる。
心理学も時とともに発展し、色々なことが分かっている反面、障害を取り除くカギは人それぞれ。
ピッタリの鍵穴とマッチする答えを見つけるのは大変なこと。
いまだ未知のことが多い精神の世界。家族の愛はその答えを見つけるのに不可欠なんだ。
ターナーとジョーンズという魅力的な顔合わせだけど、今作はお色気なしのシリアスな家族ドラマ。
木そっくりに肌にペイントしたり、コンピュータ並みの計算をしてしまう子どもたち。
私たち人間の脳と力にはまだまだ知られざることがいっぱいつまっているらしい。


『ゴールデン・イヤーズ』(1991)

原案・脚本・製作総指揮・特別出演:スティーブン・キング
出演:キース・ザラバッカ、フェリシティ・ハフマン、エド・ローター、R・D・コール、ビル・レイモンド ほか
キングはロックスピリットを持つ一流SF作家だ。彼と同じ時代に生きてわたしはなんてラッキーなんだろう
できれば今すぐ彼が創るAnother World へ消し飛んでしまいたい。D.ボウイの音楽の流れている世界へ。
キングが製作の大半をこなして、また出演もしている。彼が作り出す悪役には興味深いキャラクターが多い。
今作の見どころの1つは、プロのキレ者ハードボイルド系の殺し屋アンドリュースと、
元パートナーでスマートなテリーとの知恵比べの追跡劇が面白い。盗聴器、コンピュータ、暗号・・・探偵ドラマみたい。
もう1つは、老夫婦の年季の入った深い愛情。ハーランが若返り過ぎないところがイイ。
中年離婚が日本でも増加しているけど、これこそ奇跡に近い。
そして、久々に聴いたダンサブルなボウイの♪GOLDEN YEARS がテーマ曲なら完璧だ。
この本物の怪物の色とりどりのイマジネーションはこれからも尽きることはないだろう。

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notes and movies(1994.10~ part3)

2013-02-08 11:20:51 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『ペリカン文書』(1993)
監督:アラン・J・パクラ 出演:ジュリア・ロバーツ、デンゼル・ワシントン ほか
アメリカ映画に欠かせないヒーローが立ち向かうべき凶暴な悪や敵。
これまでは主にソ連だったのが、次第に国内へと目を移し、大統領でさえ完全無欠のイメージが壊れつつある。
社会派ドラマでは『JFK』も難解だったけど、今作も入り組んでいる。元々は現在注目されている環境問題から。

シビル・シェパードジョン・ハード(彼の大きな腹にはビックリ)、FBI長官役は『HSB』の俳優、
その部下はウィリアム・アザートン、次から次へと出てくる豪華キャストに加えて、
主演は久々のジュリアのウサギみたいなキュートな魅力が楽しめる。ラフなジャージやピシっとしたスーツ姿、
探偵顔負けの変装、リサーチのキレ具合等のスリルは、シリアスなテーマのことも忘れてしまう。
世の中いろんな仕事があるけど、こんな殺しを職業にする殺人マニアがいるのかな、本当に
周りに支えられ、操られる大統領がマペットに見えてくる。


『ミラーズ・クロッシング』(1990)
監督:ジョエル・コーエン 出演:ガブリエル・バーン、アルバート・フィニー ほか
そのルックスでシリアスな役所の多かったバーンが、渋さを三枚目のギャング役に生かして
奥さんのエレン・バーキンのお株を奪ったよう。
絶対トップに立たず、口達者で世の中を渡ってゆき、殴られ強いお調子者なのが面白い。
“人の腹は分かりゃしない”“計画づくめじゃダメなのさ”などキザったくキメてるけど、
愛する女性に好きだという態度も素直に出来ない。ま、その相手もかなりのはすっ葉で同類なんだけど。

コーエン兄弟作品。『バートンフィンク』ではゾッとする寒気が走ったのと同様、
マニアックながらなんとなく筋の通った悪役ってゆうのが今作にも通じている。
1つ1つのシーンがクリアで今作のほうがスッキリしている感があるけど、
殺しや死体の描写にはやっぱりどこかうすら寒いマニアックさが共通している。
張り詰めた雰囲気に突然現れる犬と少年などのシーンはサイコーだね。
青く澄んだ眼に黒い髪、エキゾティックで頼りがいのある体格、バーンの魅力が余すところなく出ている。


『天と地』(1993)
監督:オリバー・ストーン 出演:ヘップ・ティ・ッリー、トミー・リー・ジョーンズ ほか

“私はいつもその中間にいた。それが私の運命なのだ。北と南、東と西、ベトナムとアメリカ。戦争と平和。天と地のはざまで”

『プラトーン』『7月4日に生まれて』をはるかに凌ぐ、ベトナム戦争とそこで生き抜いた1人の女性の激動の人生を内面から描いたストーンの最高傑作。
実話に基づいているだけにストーリーと真実味は重く、映画というより貴重な記録、生き証人が残してゆくべき記憶そのものといえる。
人間の最大の過ち、すなわち戦争の悲惨さが実際どんなものかは忘れてならない。
ここまで表面と内面をえぐり出して見せられるのはストーン自身、ベトナム戦争に参加した生の体験があるからだろう。
前2作とはガラリと視点を変え、戦う兵士ではなく、すべて受け入れ、流され、運命に身をゆだねるしかなかった
無力なただの小さな村の女の子の眼で見て、体で経験した戦争。
なにものも引き裂くことはできない血と血で結ばれた家族の絆と愛、根底を支える仏教の教え、
今作がデビューとは思えないティ・リーの迫力迫る演技と、登り調子のジョーンズの演技が見せ所。
ストーンが改めて世界に問いただす超大作。


『ヒア・マイ・ソング』(1991)
監督:ピーター・チェルソム 出演:ネッド・ビーティ ほか
淀川さんの「好きです。好きです。信じられないくらい大好きです」というコメント入りのジャケット。
ビデオの中からたくさんの鳩が出てきそうなステキなハートウォーミングストーリー。
♪帰れソレントへ が辛うじて分かったくらいだけど、どの曲も感動的で涙が止まらないエンターテイメント万歳!
若い女の子たちを指さして「彼女たちの夢の責任をおえるか?」というセリフが印象深い。
リヴァプールといえば言わずと知れたビートルズの故郷。
太っちょの2人の相棒が鼻歌を歌いながら踊ると黒い帽子にチャリンと小銭が入るシーンなど、
イギリス映画だけどどこか朗らかで明るいイタリア系の雰囲気がある。
笑いあり、歌あり、恋あり、ファンタジックなアートシアター系の名作。


『さらば、わが愛 覇王別姫』(1993)

監督:チェン・カイコー 出演:レスリー・チャン ほか
昔から香港映画っていうとカンフー道場、師弟愛、看板を守るための戦いなんかのイメージが強いけど、
今作はそんなイメージから全く離れて、京劇という、日本の歌舞伎と同じく中国を代表する文化を通じて
次々とめまぐるしく変わってゆく政治のもと、その影響を受けざるを得なかった2人の役者の運命と微妙な愛情を描いた歴史絵巻の大河ドラマ。
守らなければならないはずの文化遺産、伝統芸能。その時代背景が人間性を狂わせていき、
もっとも熱狂的に観劇していた市民が裏を返したように非国民扱いをして、3人の絆もプライドもいやおうなく粉々に砕いてしまう。
私たち日本人も決して無関係ではない。町に押し寄せる兵隊と日の丸国旗。中国国民がいまだに深い憎しみを抱いているのも当然だ。
改めて、複雑な経路をたどった中国の政治的問題、市民への影響、常識・非常識、善悪の境界線があやふやになった群衆の
常軌を逸した力の恐さを見せ付けられた気がする。

そして、京劇の独特の歴史。これじゃ幼児虐待もいいとこ。愛情もなく育った身寄りのない子どもたちを
ムチで死ぬほど叩いて恐怖を植え付け、芸を教え込むなんて反逆児に育たないのがフシギなほど。
しかも一番素質のある女形は、文芸評論家などにオモチャにされてしまうなんて
劇が象徴する女の貞節にはほとほとウンザリさせられる。娼婦が娼館ではまるで天使のように扱われるのに、
一歩外に出れば人間の価値もないほどさげすまれるという矛盾にもウンザリだ。
体当たりの演技でこれまでにない役に挑んだチャンのなまめかしい女形、小豆が目を惹く。


『マルコムX』(1992)
監督:スパイク・リー 出演:デンゼル・ワシントン、アンジェラ・バセット ほか
快進撃が続くリーとワシントンが組んで撮った、キング牧師と同時代を生きたもう一人の黒人指導者マルコムX。
一時期Tシャツやらのグッズが流行ったりもしてテレビでも紹介されたが、3時間もかけた今作でより人間的に奥深く掘り下げている。
「白人が暴力を続けるかぎり、自衛のためには銃も必要だ」という発言とは裏腹に彼が暴力で強いたりした事件はなく、
彼の宗教観がうかがい知れ、マスコミによってどれだけ真実の姿が歪められていたかが分かる。
しかし、一発の銃弾で、どれほど貴重な人間が簡単に葬られてしまったことか!
ロドニー・キング事件のショッキングな映像や、途中モノクロを挟んで現実的な効果を生み出している。
実写記録フィルムも多く、近頃ドキュメンタリーも発売されている彼の一言一句は説得力充分で貴重なメッセージばかり。
デンゼルがなりきっての演技。本人がのりうつったような様子に驚く。
「人種差別がアメリカを滅ぼしている。我々が望むのは、自由と正義と平等、生きる権利、幸せを追求する権利だけだ」
サム・クックの歌が心に響く。スパイク・リーもファンらしい。


『タンデム』(1987)
監督:パトリス・ルコント 出演:ジャン・ロシュフォール ほか
次々と奥ゆかしい作品を生み出して注目されているルコント監督が初期に撮り上げた主人公の職業はラジオのクイズ番組の司会者。
監督が描く主人公の職に対するプロ意識や、表には見えない苦労、哀愁は、いつも並々ならぬものがあるけれど、
今回はふりしぼるようなロマンティックな歌声♪君は僕の家 をバックに「25年も続いている」というのが自慢のベテラン司会者と
彼に心底ほれ込んで仕事をともにしている付き人兼運転手兼スタッフである男との友情、それ以上の優しさ。
甘いロマンスなんてない。女が入り込む余地のない本物のダンディズムの世界を覗いた気がする。

根無し草のような生活で、人々から「ずっと同じで飽きないか?」としょっちゅう聞かれる。
女は家や港、待つ者であり、男はそこへ帰りたいと切望する反面、外に旅に出る。
これだけ愛することができる仕事を持てるというのは本当に稀だし、羨ましくもあり、人生はちゃんと完結していて、彼も満足なはず。
だからラストは全く湿っぽくなく、むしろ晴れ晴れとしている。
途中、赤い犬の幻を見たり、歩道橋から自転車を落とすイタズラなど、いろんな人間がいるものだけど、
一番強烈なのは老いたバーテンダーのセリフ。一体世の中どうなっているんだろう!?


『リコシェ』(1991)
監督:ラッセル・マルケイ 出演:デンゼル・ワシントン、ジョン・リスゴー、リンゼイ・ワグナー ほか
さすが『ダイ・ハード』を放った監督。痛快アクションのコツを心得ている。
今作は、なんといってもノリにノってるデンゼルがとにかくセクシーで、
強くて優しくて頭のキレるブラックヒーローを生き生き演じているのが見どころ。
アンソニー・パーキンスばりのサイコ演技が板についてきたリスゴーと対して、
肌の色も歳も違う2人の男だが、どこか似通ったコインの表と裏、引き合い、反発しあう、警官と殺し屋という設定は面白い。
ド派手に立ち回るとても警官とは思えないニック。三つ揃えのスーツでインテリな姿も、
革ジャンでヤク中っていうのも難なくこなしちゃうデンゼルの幅の広さを堪能できる。
ブラックカルチャーが日本でも若い子に人気が高まっているのも分かる気がする。
今作では素人のビデオカメラがニュースに使われて話題となる。
テレビによって証拠となり、善悪の裁きがなされ、またそれらによって名誉も正義も取り戻す。
まさに現代アメリカのマスメディアの姿そのまま。たとえ暴力に満ちた結果であっても。


『フィラデルフィア』(1993)
監督:ジョナサン・デミ 出演:トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン ほか
世界中に広まってからもう長いこと経つのに、エイズを正面から描いた作品がなかったのはフシギ。
しかし、もう誰も目をそむけられない、これは実在する現実だ。
これまで死亡率が高いイメージのがん患者は同情され、最適の治療が受けられるのに対して、
この世紀末的病気にかかった人々は軽蔑され、嫌悪と差別になすすべもなく、
病気と冷遇の2つの大きな壁に苦しみ、耐えている。

コメディから一転シリアスな真に迫る演技でオスカーをとったハンクスとデンゼルの共演。
主題歌♪フィラデルフィア はブルース・スプリングスティーンが作り、PVがついているというサービスもあり、
なにかと話題を集めた今作だが、肝心なテーマははたして何人の心に直接届いただろうか?
これはほんの1ケースであって、エイズに効く新薬でも奇跡的に発見されるまで恐怖と偏見はこれからも続いていくだろう。

理解するにはまだ分からないこともありすぎる。防ごうにもこのウイルスは“人の愛”を媒体としているんだ。
これはもはや同性愛者だけの問題ではない。生まれてくる子どもにまで関係する。
誰が犯人か責任追及より、どう理解し、受け止め、解決するか、一緒に考えることが大切だ。
「問題が起こったら、必ず解決法がある」
目に見えて弱ってゆく体。これは人間が尊厳死を考えなければならなくなるほど精神面をも問われる病気なんだ。
近いうち、この瞬間にも治療法が見つかることを心から願っている。


『虚栄のかがり火』(1990)
監督:ブライアン・デ・パルマ 出演:トム・ハンクス、ブルース・ウィリス、メラニー・グリフィス ほか
面白い! アメリカじゃ結構知られている小説の映画化らしいがベストセラーだけあってストーリーのメリハリ、
次の展開はどうなるのかという面白さ、法廷ドラマでもあり正義とは何か?を問いかける真摯なメッセージもある。
ある程度人々に知られたキャラだけに、ハンクスが主人公に扮するキャストには賛否両論だったらしいけど、
最近の『フィラデルフィア』でのオスカー受賞で証明されたとおり、見事に演じきっている。
ウィリスとの2ショットも豪華。アクションスターより『ブルームーン』で見慣れている記者役にハマっている。
そしてメラニーの悪女がストーリーをよりスリリングに盛り上げる。
ベビーヴォイスにセクシーボディ、破天荒な言動はマリアにピッタリ。
「彼はすべてを失ったが、魂を得た。俺は失うものはほとんどなかったが、すべてを得て、魂はどうなる?」

コメント

notes and movies(1994.10~ part4)

2013-02-08 11:20:50 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part3からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『から騒ぎ』(1993)
監督・出演:ケネス・ブラナー 出演:エマ・トンプソン、デンゼル・ワシントン、キアヌ・リーヴス、マイケル・キートン ほか
監督、俳優などで多才な顔を持つブラナーと、オスカー女優トンプソン、
このおしどり夫婦が組んだ2作目はシェイクスピアの「から騒ぎ」。
シェイクスピアを読まない英文科卒としては、映画が唯一作品を知る接点だけど、
何百年も前にこれだけ楽しいミステリー・ロマンスを書いていた彼は改めて偉人だなと感心。
「じゃじゃ馬ならし」から「ロミジュリ」風まで入ったストーリー。悪役のキアヌがキャラ的に弱いが、
強烈なのは役人のキートン。警察もいない中世じゃ、ちょっとした誤解を晴らすのも命懸け。
“処女性”が尊ばれていた時代、バージンじゃなきゃ生きる価値もなく、貞節であれば天使の如く扱われる。
シェイクスピアが好む女性像は、無力で泣くばかりのジメジメしたタイプじゃなく、
男と対等にものを言う(言い過ぎない程度に)知性とエネルギーを持つ美人がいいらしい。

どこで撮影したのか、まさに中世の城。イギリス風の見事な庭が美しい。
現代的アレンジではあるけど、古典はキチっとおさえている。
オーバーアクションに“thee”などのセリフの言い回しはやはり舞台劇風。でも古めかしい本の世界から飛び出して、
中世の人々の活気溢れる暮らしぶりがこうして生き生きと蘇るなんて、書いた当人も予想できなかったことだろう。
格式や伝統の強いシェイクスピア劇のプリンス役にデンゼルを起用しているのも面白い。


『時の翼にのって』(1993)
監督:ヴィム・ヴェンダース 出演:オットー・ザンダー、ピーター・フォーク ほか
詩そのものだった『ベルリン 天使の詩』の待望の続編。今作は、カシエルが人間界に降り、
壁崩壊後も変わらず混沌として、聞く耳、話す口、安らぐ心を持たなくなった人々の中で
どんどん悪に翻弄されるカシエルと、彼を見守る天使と悪の使者。
天使といえど、人の毒気にあてられたら道を誤ってしまうものなのね
それぞれのその後がみれる楽しみと、豪華キャストの素顔がのぞくシーンがイイ。

「愛する人間よ。我々は遠くにいるようだが実は近くにいる。目に見えず、耳に聞こえはしないが・・・」
目に見え、手に触れる物だけを信じざるを得ない私たち。
天使などとうに忘れてしまい、苦悩を内に秘め、互いを干渉せず、助け合おうともしない。
その内なる心を自由にのぞけたら、子どもらの無垢なつぶやきに出会えることだろう。
私たちがいつでも温かな救いのまなざしに見守られ、
死んだら約束の地まで連れていってくれるとしたらどんなだろう?
初作よりはやはり弱いけれど、抒情詩のごときスタイルはそのまま保たれている。
ゴルバチョフ本人が出演したり、ルー・リードが出演しているのは嬉しいショックだった
かつてはベルリンに住み着いたアーティストの1人。新曲?をステージで歌うシーンなんて貴重で一見の価値あり。


『蜘蛛女』(1994)
監督:ピーター・メダック 出演:レナ・オリン、ゲイリー・オールドマン ほか
S.ストーンの出現から悪女もののヴァイオレンス&セックスムービーが今や大流行。
そこに登場した今作のレナ扮するモナは色仕掛けだけでなく男以上の力と知性でマフィアのドンを狙うというタフさ。
“女たらしが血を流す”なんて原題と、強烈なキャラをもつヒロインからイメージした邦題は視点が逆だ。

獲物を誘って糸に絡め、時には同種のオスをも食べてしまう蜘蛛に悪女がよく例えられるが、
この映画のテーマといい、ブームといい、どんどん強くスマートになってゆく女性に対する男性の恐怖心がありありと浮かんでくる。
作品中に出てくる女性を大別したら、若い娘、結婚した女、男をハメる悪女。
男たちは前の2タイプにしがみつき、弱くて泣き虫で、男を信じ、愛し、どこまでも耐えてくれる女像を求めている。
そんな男を誘惑し、渇を入れるしたたかなモナの強さ、潔さ、クールさは浮気男への復讐にはもってこい。
情報屋で儲ける腐った汚職警官役にゲイリーはピッタリ。テキサスの荒野にどうしてサックスの乾いた音がこうも合うのかな。
話が当人の記憶をたどる三人称なのが変わってる。


『スウィート・スウィートバック』(1971)
監督:メルヴィン・ヴァン・ピープルス 出演:マリオ・ヴァン・ピープルス ほか
スパイク・リーがもっとも影響を受けたという映画。
なんともいえないノリだなあ。'70はじめに黒人がこんなサイケデリックな作品を撮っていたなんて、
ブラックカルチャーの爆発と、リーの活躍がなかったらきっとここまで届くことはなかっただろう。

“白人社会にウンザリしているブラザース&シスターズへ”

ロス暴動で初めて公の問題となった、白人警官による黒人への不当な暴力を描きながら、
それだけじゃない黒人独特のリズム、ユーモア、スピリッツも盛り込んでいる。
ここでの性は快楽そのもの。愛ではない。
それを特技にしている口数少ないこのスウィートバックのフシギなキャラクターは憎めない魅力がある。
全篇を通じて流れているグルーヴィなサウンドと、呼びかけ、逃走をけしかける歌ともいえない声が盛り上げる。
素人も出演しているんだろうか。決して金がかかってるとはいえない作品だけど、だからこそよりリアリティが感じられる。


『ソナチネ』(1993)
監督:北野武 出演:ビートたけし ほか
「ヨーロッパでささやかなたけし映画ブームが起こっていて、レンタルショップではちょっとしたコーナーまでできている」
なんて評判を聞いた。ヤクザ映画が多くてこれは3本目。『3×10月』に続く沖縄ロケ。
いつも思うけど1シーンごとが妙に長かったりするのが残る。車が走っていく、人が歩いてゆくなど。
今作では組同士の抗争より、ヤクザの海辺での骨休めと、死にとりつかれた男の話が中心。
「人を簡単に殺せるなんて強いのね」「弱いから銃を持ってるんだよ。怖いから撃つんだろう」
「でも死ぬのは怖くないでしょ」「あんまり死を怖がると死にたくなってくるんだ」
たけし本人は死の縁をのぞいて生きる決心をした。文筆活動を再開して、死を語りはじめ、
そこにはかつてのナンセンスな笑いは感じられない。50歳を前にして、事故をキッカケに人生が一変した男。
ファンはそろそろ禁断症状が出てきている。彼の今後の行動、言葉はひき続き興味を惹くことだろう。


『タクシー・ブルース』(1990)
監督:パーヴェル・ルンギン 出演:ピョートル・ザイチェンコ、ピョートル・マモノフ ほか
労働者階級のブルースを描くのにタクシー運転手は格好のモデルらしい。米・仏・日本でも映画にされて人気を呼ぶ。
ジャケットの宣伝通り、ソ連映画とはいえ、コチコチの政治がらみでなく、仏のソフトなペーソスも交えて、
この道うん十年のタフなタクシー運転手若いアル中のサックス奏者、対照的な2人。
世の中変わって、価値観も生き方も全く異なる世代のギャップ、移り変わり様を描き出している。

結末はちょっと納得いかない。天才とは完全にイカれてる状態と紙一重だけど。
世界中を酔わせる音が出せるなら人間失格とはいえないでしょう。
強烈だったのは「悪夢を見ないためにはこうすればいい」って腹筋10回とかいって脳までマッチョそのもの。
でも友人の開いたパーティで「俺は誰からも愛されちゃいない」て大きな声で軍歌を歌いだしたり、なかなか憎めない心の持ち主なんだな。
汗まみれ泥まみれで働いてきた世代と、労働なんてアホくさいといって笑う生っちろい肌で、サウンド、ドラッグを追い求める若者たち。
分かり合える接点はあるはずなのに、変化のスピードにいつも平行線をたどる図式はいつでもどこでも同じだ。
驚くのはロシア人の酒の量。朝から晩までウォッカや、香水やシンナーでも飲んじゃう。彼らの肝臓は一体どうなってるのかしら


『MO' BETTER BLUES』(1990)
監督:スパイク・リー 出演:デンゼル・ワシントン、ウェズリー・スナイプス、ジョン・タトゥーロ ほか
リーファミリーが揃ってブラックミュージックのルーツ、ジャズの世界をスタイリッシュな映像とノリで描く。
と同時に一人の男の成功と挫折のブルースも聞かせてくれる。
デンゼルがクールに決めたサックスプレーヤーに扮してラップまで歌っちゃうファンキーなシーンは一見の価値あり。
シンガーは喉が命、ピッチャーは肩が命、サックスプレーヤーは唇が命か。プロの世界は厳しい。
男女の間も簡単じゃない。作品中の♪ハーレム・ブルース みたくフラフラと花から花へうまくやってるつもりでも
女はペットじゃない。人間としてリスペクトを払わないとそのうち飼い犬にも噛まれるってこと。
仕事でノリまくっている時に何を言っても聞く耳なしだけど。
サイコーなのは、演奏の間に入るトークの太ったおやじ。言っていることはかなりキツいけど、笑っちゃう。
「サックス吹いてるおまえの格好はまるでアホみたいな“?”マークじゃねえか!」なんてほんと笑える
♪モー・ベター・ブルース と紹介される曲は日本のポップスのメロディに近くてビックリした。
マネするのが器用な日本人。音楽文化にもあらゆる国の音とリズムを融合させてほしいものだ。


『愛が微笑む時』(1993)
監督:ロン・アンダーウッド 出演:ロバート・ダウニーJr.、キーラ・セジウィック ほか
心と体がほんわかあったかくなる、Xmasの晩に誰かと一緒に観たらいいだろうなって感じのファンタジーコメディ
『チャーリー』で充実しているダウニーが演じているからこそ楽しい。
ポップアート系の軽妙なスタイルで、見事4タイプのゴーストの乗り移りようが笑える。
'50ポップスが懐かしく、どこかもの悲しいヒットソング
♪Stand up like a man doo doo doo doo に合わせて皆で歌うシーンはサイコー

ゴロツキタイプのマイロ。紳士的だけど意気地のないハロルド、しっかりママのペニー、
そしてキーラ・セジウィック演じるジュリア。それぞれの変貌ぶりがなんといっても見物。
ゴーストもののアイデアはこれからも楽しめそう。トマスの子ども時代の子役も可愛い。
ユーレイが皆こんな陽気な連中ならいいのにね。


『教祖誕生』(1993)
監督:天間敏広 出演:ビートたけし、萩原聖人、玉置浩二、岸部一徳 ほか
ヤクザ映画でハードでブラックな作品が多い中、ちょっと肩の力を抜いた絵と展開、
冗談とも皮肉ともいえない微妙なタッチとフミヤの粋なサウンドが妙にマッチして、
たけしの普段よく口にする宗教観、神の存在に対するなんともいえない独特の見方が表れている。

「神が人を救ったことは歴史上1回もないんだ。神は人が創った最高の創造物なんだよ。
 現実に人を救ってるこの団体のほうがよっぽど神さまだよ」
そういえなくもない。
誰でもいいから超人間的パワーを持つ者に頼り、信じることで安心し、心の平穏が保てるなら、
また、力を信じることで病気の治癒を信じ、信じきることで本当に治ってしまうとしたら、
神は誰であってもいいし、インンチキ団体でも善行だといえるだろう。
実際、寄付金の金額次第で極楽浄土へいけると思っている人もいるのだから、
その期待に応えるべく立派な衣装、立派な寺を構えるのもまんざら悪いともいえない。
変わっていれば変わっているほど、価値あるものに見えてくる宗教の世界はマジックショー、ショービジネスで
芝田は素人をスカウトし、マネージングする神商売人ともいえる。
「どうして教祖になると、なりきっちゃうのかな?」
ごっこ遊びから、本当に超人パワーが身についた気がしてくるのも
大勢の人間が信じて、従ってくれるゆえにあるのでは?

これだけ無数の宗教団体が流行るとは、現代人の魂はどうしようもなく路頭に迷っているという証だ。
玉置浩二のハマっちゃってる演技、萩原の今風の若者からの変わり様、
そして原作者であるたけしのまんざらでもなく楽しんでいる真面目腐った演説、屈折した態度は笑える。


『シティ・スリッカーズ』(1991)

監督:ロン・アンダーウッド 出演:ビリー・クリスタル、ダニエル・スターン、ジャック・バランス ほか
『子鹿物語』ならぬ『子牛物語』とでもいえるなんとも可愛いノーマンに泣けたり、笑ったり。
主演者たちものびのびと自然を満喫してるといった感じ。でも街中で牛を飼っていけるのかしら?
スリッカー(いい身なりの口がうまい)油断ならない人物・・・というより、
これは都会で迷った中年男たちの新規巻き返しのお話。
モンタナのどこまでも続くでっかい空、本物の山と川、決して人に優しくない自然の中で
ストレス解消の軽いバケーション、ゲームのつもりが、ハプニングの連続で牛を目的の町まで運ぶハメになる!!!
都会育ちとカウボーイのカルチャーギャップに、アカデミー賞の司会ですっかりお馴染みのビリーの喋りや動作の面白さが加わり、
+西部劇ファンにはたまらないだろう『シェーン』のジャックの出演など、観た後は私たちまで心の洗濯をしたような爽快な気分になる

「父とは話さなくなっていたけど、野球の話だけはした」
男同士のつながりって時に単純に見えるけど、それが大切だったりするのね。
カウボーイは強い男の象徴だけど、そんなに男らしさにこだわる必要があるのかしら?
「いつになっても、自分を信じていれば何度でもやりなおせる」そんな元気の素になる作品。

to be continued...
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