メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『精神分析が面白いほどわかる本』(その1)

2013-02-28 17:02:14 | 
『精神分析が面白いほどわかる本 人間のアブナイ本能が見えてくる 絵解き入門書』(河出書房新社)
心の謎を探る会/編

昔から心理学が好きで、短大時代にも心理学のゼミを受講したり、一時期は関連本を読み漁ってたりしていた
最近また、カウンセリングつながりで改めて、ヒトの深層心理、無意識の言動について興味が湧いてきて、
図書館で目に付いたこんな本を借りてみた。
イラストも多くて、ともすれば難しい、敷居が高そうなこの分野も、身近な例を挙げて面白く書いてある。
あくまでフロイト、ユングを中心に話が進められているけれども、後半にはちょこっと最新の「機能不全家族」などの単語も出てきて、
最近読んだ『わたしの家族はどこかへん?機能不全家族で育つ・暮らす』などにもつながってきて興味深い。
偉大なフロイト、ユングが根底にありつつも、こころの研究も日進月歩であり、また、時代によって大きく変化し続けている現状もある。
いったん原点の基本にかえりつつ、現代と照らし合わせてみるのもおもしろいと思った。

【内容メモ】
恒例になってきたこの長さ/謝
本来ならこれまではノートに記録魔していたことを、ここに書いているのでどうしても長くなってしまう。
なにせ、ペンで書くより、データ入力のほうが速いし、まとめやすいんだよね。
興味ある方はどうぞお付き合いくださいませ/礼

第1章 無意識って何だろう?

「無意識」の発見
無意識は、意識が無いことではなく「無意識という意識」。
発見したのは、「精神分析の父」と言われるフロイトで催眠術の研究中
ベルネームという催眠研究者の研究がきっかけ。
フロイトのアプローチ法は長椅子を使う「自由連想法」
近年は「退行催眠」がメジャー。患者は催眠で心の原点に退行することによって原因不明の悩みや不安の原点に行き着く。
うつ病や分裂症患者は、その原因があまりに恥ずかしかったり、他愛ないことだと、本人が認めず埋めてしまう。
催眠療法は無意識に埋められた理由を本人が認識することで、原因不明という最大の不安を取り除くことにある。
無意識には不安の原因が隠されていることが多い。
「無意識の世界」にこそ神経症の原因があると言った。


「無意識」→「前意識」→「意識」
「意識」自分で意識している部分
「前意識」忘れているが意識すれば意識の世界に上がってくる部分
「無意識」自分では意識できない、自分の知らない部分

例:女性が口を隠しながら話す(指摘されて気づく行動)←小さい頃に父から前歯が大きいことを笑われた(無意識)

「無意識」は、意識の連続で脳がつかれきってしまわないための采配とも言われる。真の「無意識」は、決して意識できない。
“自分では気づかない”“自力では自由にできない”無意識が、ヒトの行動を規定することも多々ある。


嫌な感情は心の奥にしまう「抑圧」
例:中国の怪談集『聊斎志異』では、官僚の夫人が夫の浮気を知りつつ、知らぬふりをしている。
  夫は浮気中に黒蛇が現れることに悩む。そのあとを尾けると妻の口の中へと入っていったという。

妻は自分の嫉妬を「低級でみっともない感情」として無意識の世界に追いやってしまった=「抑圧」
「抑圧」は、怒り、嫉妬、悲しみ、恐怖などの激しい感情を無意識に閉じ込めること。
社会人として体裁を整えたい、大人としてまともでありたいという願望から起こる。
どんな形であらわれるかは、抑える側と、押さえられる側の力関係で変わる。
抑圧された感情は姿を変えて表面にあらわれる。


無意識がヒトを失敗させる「錯誤行為」
言い間違い、聞き違い、失念、おき忘れ、寝過ごし、紛失など、日常の失敗を疲労や不注意のせいと思っているが、
本人の意志に反して、無意識がオモテにあらわれた結果であり、ヒトの失敗には“無意識の意志”が働いている=「錯誤行為」
(フロイト『日常生活の精神病理』より)

錯誤行為の1段階:なぜ失敗したか本人にも思い当たる(浮気女の結婚式で「お悔やみ申し上げます」とスピーチする
錯誤行為の2段階:なぜ失敗したか思い当たらない(胸の大きな宗方という女性の名前を「胸方」と書き間違える
錯誤行為の3段階:指摘されても本人は認めない(妻と別れたいと思ってる男がクラブの名刺をキッチンに置き忘れる など


「超自我」→「自我」→「原我」
「超自我」高次元の理想を自分に課す「エライ人」「やさしい人」
「自我」超自我と原我で板ばさみ状態
「原我」欲しいものは欲しいという原始的欲望(原我は抑えられるほどパワーアップ

援助交際などノンルール(ルール無視)の原始的欲望は、「原我(エス)」という心理層から発している。
超自我が強いヒトほど、そのストレスの反動でエスを揺り起こす。
例:SF映画『禁断の惑星』のイトというモンスターと厳格な科学者


自我とは?
日本には幼児は一人の人間ではなく、七つを迎えるまでに通過儀式を経て一人の人間に仕立て上げるという考えがあった。
自我=自己であるという強い認識「これが私だ」。自己を一個のヒトとして確立するため、言動をコントロールするシステムのこと。

1.現実機能:ありのままの自分を把握する
2.適応機能:自分の行動を、能力・目標などと照らし合わせて選択する
(例:理不尽な上司に反発するか否か。これが壊れると暴力をふるったり、引きこもったり、極端へと走りがちになる
3.防衛機能:理想主義を適度に押さえ、心の安定を保つ。
4.統合機能:1つのまとまりある人格をつくる。矛盾した部分も含まれる。

「自我」は、現実社会の営みに大きく関わり、「超自我」と「原我」に挟まれて揺れ続けている。


良心とは
ヒトは「原我」「自我」「超自我」の順で育っていく。
親に叱られた子どもは、親に見捨てられてしまうのでは?という不安・恐怖を抱く→自分で行動を監視・規制する→良心の芽生え
子どもは親の言動の背後にある「超自我」を見つめて育つ。
例:お受験ママは、世間に対する見栄を子どもに見抜かれている。また、厳しいしつけが家庭内暴力となって跳ね返る。


集合的無意識
ネコが教えられないのに手で顔を洗うのと同様、ヒトも個体群の一部だと唱えたのがユング
自我に対する「個我」という概念を生んだ。
例:女神や菩薩は母性を象徴する。トランス状態から生まれるマンダラなど
人間共通の無意識を「集合的無意識」と呼んだ。遺伝的に生まれながらに持っている。
個人→家族→部族→民族→人類という心理層があり、もっとも深い「深層心理」には人類の歴史が関わっている。

デカルトが「我思う、ゆえに我あり」と言った個人崇拝が17世紀ヨーロッパでは主流だった。
東洋では、自我は幻想で、自己を捨て去ったところに真の存在があるという哲学。


第2章 人が悩む本当の理由は?

コンプレックス
一般的に使われる「劣等感」の意味とは違う。抑圧されて意識されないまま強い感情を担っている表象の複合体←「広辞苑」
ユングは「言語連想法」により、100ある単語の中で口ごもってしまう現象に気づく不快・反感を抱いている=ウソ発見器にも応用/驚

わたしもやってみたら、すぐ連想を思い浮かばなかったのは以下の言葉。
踊る、同情、軽蔑する、家族、牝牛、偽りの、選ぶ


ペルソナ
素顔を隠す「よそいきの顔の仮面」。自分の役割を明確にすることで、社会生活における対人関係を適度な距離に保つための処世術。
その一線の引き方には、他人を侵害しないことによって自分を守る目的も含まれる。自我を守る鎧。
問題は『鉄仮面』のように、仮面が取れなくなってしまうこと。
体裁や自己防衛のための仮面が、自分そのものになり、かえって自己喪失を招くケース。


自分の影におびえる「シャドウ」
例:「あいつはオレの足を引っ張ろうとしている
これは、出世ばかり考えている自分の「影の人格」を他人に投影し、自身の影に怯えている状態。
コンプレックスに近い。
「コンプレックス」は他から受けた傷の隠蔽だが、「シャドウ」は自身の中にある悪や歪みの隠蔽から生まれる


「グレートマザー」「マザコン」
「マザコン」の2つのイメージ
1.いつまでも母親を慕うヒト
2.いつまでも母親を怖がるヒト
例:シンデレラを虐待する継母、白雪姫を呪う女王など

ユングは、優しく豊かな姿であるが、怖ろしい怪物の姿でもある「グレートマザー」を唱えた。
「元型(アーキタイプ)」は、「集合的無意識」から生まれるシンボルで、「グレートマザー」もその1つ。
マザコンは男性が陥ると思われているが、極度のマザコンは、むしろ女性に多い。
娘にとって母親は同性であるがゆえに「同化」が起こる。
“子どもを自分だけのものにする”という負の一面がある。
“母から逃れられない””母を恐怖する”という影を落とし、成長した子どもに歪んだ行動をとらせることもある。


「オールド・ワイズ・マン」
知・力・神秘を備えた大いなる隠者の姿をとる。
ユングの父は理想とは程遠く、絶えず父と反発し、論争を挑みながら成長した
父を超えたいという願望は、権力・成功への激しい執着を意味する。
それを乗り越え、自分の中の「オールド・ワイズ・マン」を意識できた時こそ自己の完成がある。

女性の場合は、まず“理想の父親像”が浮かぶ。それにふさわしい伴侶を導き出す形で、実母を超えた「グレートマザー」の像が浮かぶ。
「あなたのパパはダメなヒト」と言って子どもを味方につけようとする母親は、
「ダメな男を選んだダメな女」という自分の悪いイメージを子ども植えつけていることに気づかない


なぜ失敗を繰り返すのか「トリックスター」
「トリックスター」=日本で言えば化け狸、河童、天狗などの妖怪のこと。イタズラの名人。
「トリックスター」は社会の秩序をぶち壊す迷惑な侵入者。逆に、退屈な沈滞状態に混乱を巻き起こして、社会を活性化させる存在
失敗があってこそガス抜きができ、活気があり、笑いもある。ヒトをショック療法で癒しているとも言える。
失敗の連続で平和と明るさを提供する『サザエさん』一家は「トリックスター」の集団といえるw


自分とは何か?「アイデンティティ」
精神分析上では、カードや証明書ではなく、あくまでも自分の内的な実感による証明。心理学者E.エリクソンによって確立。
幼児期(2~3歳)でアイデンティティの基礎を築き上げる。
「自分が誰か」→「どうゆう者か」を定義した時に確立。
その作業は青年期に課せられる。なぜなら、「どう生き延びていくか」を意味するから。
サッカーやバイクが好きでも、それでは食えない作り上げたと思い込んでいた「自己」を処分することを強いられる。
アイデンティティ確立の失敗で「同一性の危機」が起こる。非行の原因
未来に対する自身のイメージを失い、「何者でもない」よりは「害があるヒト」のほうがマシと考える。


夢の世界「エロスとタナトス」
フロイトによると、睡眠の無意識状態で、深層心理の怖ろしい記憶やイメージが表出するのに修正を加え、
安眠を妨害しない程度に危険度をやわらげる、というのが夢の前期の理論だった。
その後「心理には快感の一方で不快を求める傾向もある」と考え『快感原則の彼岸』を書いた。
「エロス」愛の神。あらゆるものを結合させ、混沌の中に秩序をもたらす。
「タナトス」死の神。あらゆる秩序を破壊し混沌に戻す。
エロスとタナトスは表裏一体の関係で心理に備わると定義し直した。
むしろ健全なヒトほど、死と破壊の願望を秘めていることがある。
フランスの作家アナトール・フランスは「自殺は一種の生への情熱である」と言った。
うつ患者も極度に悪化している時は自殺欲求は起こらない。


「内向的」って暗いこと?
もとはユングの性格類型。暗い・明るいというのとは違う心理学用語。→参考

1.内向思考型
2.内向感情型
3.内向感覚型
4.内向直感型
5.外交思考型
6.外交感情型
7.外交感覚型
8.外交直感型

暗い・明るいはオモテ(意識)に表れた行動様式で、本質(無意識)とは違う。
例:太宰治は表向きは外交的だが、じつは危険なほど感受性豊かで繊細な人間だった。
オモテの型は、内面の傾向に引きずられないための調整・抵抗の場合が多い。ヒトは外面だけで判断できない。


「甘え」の構造
土居健郎『「甘え」の構造』は欧米でも大ベストセラーとなった
欧米人の「自立」と日本人の「甘え」との相対論。
欧米では30歳過ぎても親元にいる“パラサイト・シングル”は一種の病人とみなされる。
動物学的には、モンゴロイド(黄色人種)の脳は、「甘え」によって育まれる構造。
「ネオテニー」(幼児化戦略、幼形成熟)=脳を柔軟に保つことで、より多くの情報を取り入れる進化戦略/驚
日本人は親と1つの部屋で川の字で寝るのも、親の教育・監視・庇護を必要とするモンゴロイドの道理にかなっていた。
現代は個室を与え、厳しいしつけを「放任」に変えている。「擬似自立」をうながす一方、何でも買い与える「甘え」を残す。
庇護して教育する「甘え」が、ただの「甘え」になってしまっている。今では“amae”という心理学用語にもなっている。


第3章 欲求不満を開放!

自我防衛機制(八つ当たりなど)
「自分の心の防衛」こそが無意識の最大の役割。精神の崩壊を防ぐための転換・隠蔽。
ヒトの精神は無意識の防衛なしには、ガラスのようにモロいものなのだ
極度の恐怖には精神が完全崩壊しないよう回路遮断システムが働く=自我防衛機制

ヒトはみな「欲求不満」を抱いている。
例:社長は業績を上げられない不満、理想の女性と結婚した男性は、妻や母となった彼女に不満を抱くなど
ヒトの欲望には際限がなく、すべて思い通りにいくことはあり得ない。
ヒステリーは「頭がどうかしてしまった」状態ではなく、逆に「頭がどうかしてしまわない」ために八つ当たりをしている。

自我防衛機制には14種類ある。
1.抑圧
イヤなことにはフタをする欲求は潜在意識に残り続ける

2.逃避
とにかく逃げる。例:都合性腹痛炎など

3.退行
幼児にもどる。例:ぬいぐるみに話しかける責任・体裁・重圧で精神を擦り切れさせないため

4.置き換え
弱い者いじめ、動物虐待など、非力な対象に憎しみを向けて、欲求不満の一部を解消する
ヒトには「対象が特定された憎しみ」と、「欲求不満による社会全体への憎しみ」がある。

5.昇華
満たされない「破壊衝動」を、生産的なエネルギーに転換する
例:破壊衝動の強いヒトは、機動隊や消防士など危険で活動的な仕事を選ぶことが多い。

6.反動形成
本音に反して、建前を演じることに似ているが無意識に行われる点が大きく違う。
無意識の憎しみ・劣等感に気づかず、正反対の愛・傲慢を表現し続ける。
例:「私は豊満な自分の体が嫌い」→体を武器にしている自分がいる

7.補償
劣等感を補う強い欲求に衝き動かされること。
精神分析学者アドラーが発見。目にハンデを持つ患者ほど猛烈な読書欲を持つ「器官劣等性」を唱えた。
例:格闘技の一流選手には、元いじめられっ子が多い。背が低いナポレオン、虚弱体質だった三島由紀夫など

8.男性的抗議
バリキャリ女性社員は、男性より“男らしい”ふるまいをする。
男性社会に遅れて入ってきたハンデを克服しようと躍起になっている状態。
例:組織論をぶつ、部下に威張る、ガンガン残業する、根回しに奔走する、上司にとりいるなど
パロディのコツは、特徴を極端に強調すること

9.取り入れ
憧れの人のマネをする満ち足りない自分を埋めようとする自我防衛。強烈な嫉妬・劣等感が働いている。

10.同一化
原動力は「愛」。対象への「愛」と「自己愛」の境が消えてしまうほどの一体化。
例:飼い猫が死んで、「ぼくは猫になった」という子ども
逆に「自己愛」を対象に投影する「同一化」もある=「惚れ込み」
「惚れ込み」=相手が自分と同じ理想を持っていると信じて疑わない。やたら相手を励まし賛美し、自身の理想を実現させる身代わりにする。

11.投射
もともと自分が対象に持っている敵意を、鏡のように相手に「投射」する。
例:「どうして彼女は私を嫌うのかしら?」←自分が彼女に向ける敵意の裏返し
「被害者ヅラ」は女性に多い。「夫は自分をぞんざいに扱う」←自分が夫をぞんざいに扱っているのを棚に上げている

12.合理化
例:リストラされた男性が「これで会社の歯車から解放された」と言う。
“プラス思考”と間違われやすい。怖ろしい現実から目をそむけ、自身をあざむくための思考。
俗に言う「やせ我慢」「負け惜しみ」。心理的ダメージを防ぐ有益な心理メカニズム。

13.打ち消し
例:描きかけの絵を切り裂く芸術家
物事がうまくいかなくなると、あともう一歩の頑張りでなんとかなる段階でもすべてを無に戻し、“リセット”してやり直す。
背景には、欲求不満を解消しようとする防衛機制が働いている。
「ゼロからの再スタート」がヒトを妙に救われた気分にさせる。

14.隔離
「見て見ぬふり」「知って知らぬふり」ではなく、意識の上で「見なかった」「知らなかった」ことに転換されてしまう。
例:夫の浮気現場を見て、その場を離れる。
関係を壊したければ「見た」ことにし、壊したくなければ「見なかった」ことにする。これは女性の恋愛の極意?

コメント

『精神分析が面白いほどわかる本』(その2)

2013-02-28 17:02:13 | 
『精神分析が面白いほどわかる本 人間のアブナイ本能が見えてくる 絵解き入門書』(河出書房新社)
心の謎を探る会/編

とうとうgooブログ最大文字数2000文字を超えたとのお達しがあったので、前半と後半に区切りました

第4章 夢の“暗号”を解く

「夢は無意識に至る王道」
フロイトの『夢判断』は夢を学問的・体系的に研究した最初の書。
「夢は無意識の願望を満たすもの」「夢は抑圧された願望が偽装した形で出る」と定義した。
夢には「パラドックス(逆説)」「メタファー(比喩)」などの表現法が多い。
無意識に閉じ込めた願望や思いは、覚醒中は監視が行き届いているが、睡眠中は監視もゆるみ、変装して抜け出る。


フロイトは夢を性に結びつけた「リビドー」
夢は抑圧された「リビドー(性的衝動を発動させる力)」の表出。
「夢の象徴化」露骨・過激になりすぎないための装い。
象徴化というソフィスティケート(洗練)によって刺激が弱まり睡眠が確保され→夢を見る→願望も充足する。


夢はなぜ支離滅裂か
相手の顔がくるくる変わったり、場面や時間が突然飛躍したりするのは「夢作業」のうちの「圧縮」。
「圧縮」=さまざまなヒトが合体したり、話の重点がすり替わること。
膨大な記憶、願望、抑圧された感情が埋められている無意識のファイルは、コンピュータのように系統立てられていない。
乱雑としか思えない形で、記憶の強弱、連想などの独特の系統で整理されている→支離滅裂になる原因

「二次的加工」=支離滅裂なラッシュをストーリーのある映像に編集しようとする働きもある。
例:サッカー選手になりたいという願望サッカー選手として大会に出場するも、競技場は小学校の校庭。

「翻訳」=潜在思想にある抽象的、感情的な要素を映像に翻訳して映し出す。
例:焦りがある飛行機に乗り遅れる夢(よく見る!


核心を歪ませる「夢の検閲」
無意識に封じ込められた“恐ろしい何か”がクマとして現れるなど
その恐怖・願望に精神が耐えられないため、ストレートに登場させないためのシステム。
クマは“代役”。こうした置き換えによる検閲を「変容」という。
「材料の脱漏」=公権力顔負けのカット作業もある。
「編成替え」=構成を替えることで“本当の感情”からポイントをずらす作業。
例:不倫して会社がクビになるかも?上司と妻が不倫している夢を見て「こんな会社辞めてやる!」と怒る

「瞑想・座禅」
ユングは目覚めたまま夢を見て無意識を得る方法を編み出した。半意識の中で浮かぶイメージや言葉を自動筆記する。


夢分析で分裂したフロイトとユング
『夢判断』に共鳴して夢分析を始めたユングだったが、やがて2人を決別させる最大の要素になってしまう。
フロイトが「ヒトを衝き動かす最大の力はリビドーだ」という主張に対し、
ユングは「夢はヒトと宇宙全体の関わりをあらわす。集合的無意識にこそ夢の原材料がある」と考えた。
例:蛇が夢に出た。フロイトは男性器のシンボルとみなし、ユングはマンダラ、宇宙のシンボルととらえる


第5章 性と愛が歪んでいく謎

赤ちゃんの性欲「口唇期」
フロイト『性欲論三篇』で小児の性欲と、すべての神経症はその発達の歪みから起こると唱えたことで物議となった。
赤ちゃんは、生後6ヶ月を過ぎると、唇や舌が母親の乳首に触れる「性的刺激」を求めるようになる→「口唇期」
フロイトは当時、タブー視されていた


ウンチの話ばかりする3~4歳児「肛門期」
排便時、我慢している時の肛門の刺激に興奮の悦びを感じる。
食欲・排泄欲が未分化の幼児性のたまものである「糞尿愛好」。


お医者さんごっこが好きな5~6歳児「男根期」
口唇からはじまり、肛門に移った性感は、性器に移行する。
自分の体はこうなっているが、異性の体はどうなっているのか?という関心が生まれる


性欲の欲求不満から人格が歪む「リビドー」
物欲・出世欲・名誉欲・成功欲などさまざまな欲は「リビドー」の仮の姿。
年齢に応じて対象を変える。「自身→異性の親→同性の仲間→異性の仲間→特定の異性」。
その時々で満たされるか否かによって人格形成に影響を及ぼす。
満たされなくても、満たされすぎても、人格障害・神経症を引き起こす原因となる。

1.「口唇期」への「固着」:露出症、フェティシスト
2.「肛門期」への「固着」:サディスト、マゾヒスト
などの倒錯をまねく。


赤ちゃん帰り「性的目標の退行」
1.「口唇期」への「固着」:アルコール、喫煙、ガム好き
2.「肛門期」への「固着」:貯金好き、我慢好き、ストイックさ
3.「男根期」への「固着」:権力欲、自慢


「オイディプス・コンプレックス」
男の子の潜在意識には、男として父を超え、男として父から母を奪うという欲望がある。
父を超える成功をして、母から父以上の尊敬を勝ち取れれば、その欲望は満たされる。
満たされないと、父への殺意、母を犯したい野望に変わる。
これは古代ギリシャ劇『オイディプス王』の悲劇に描かれている。


人に愛されたい・尊敬されたい「固着」
母親に早めの離乳を強いられた赤ちゃんは、乳首を吸う欲求を満たしたいという「固着」が深層心理に残る→「口唇性格」があらわれる。
例:「同僚がほかの人を酒に誘って、自分を誘わなかった」→自分は愛されていないという決定的な信号として悲劇的になる
「口唇性格」絶えず人から愛されているか否かで激しく気分が変わる性格。

例:子どもの頃に母に性器を誇示して叱られ傷ついたやたらと男らしさを誇示したがる「男根性格」があらわれる。
「男根性格」常にエネルギッシュ、攻撃的、自信ありげ、女性に対してもストレート、仕事でも突き進む


「アニマ」と「アニムス」
「アニマ」は、“心のマドンナ”ではなく、男性の中に存在する女性人格の象徴。
中世の宮廷男性は化粧し、ホホホと笑った。精神的アンドロギュノス(両性具有)は奇異なことではない。
少年期のアニマは母親型青年期を越すと娼婦型最終的には賢く、品位があり、清楚、神秘的な聖女型に変化する
つまり、アニマが最終段階に達した時には、声の甘さやセクシュアリティに惑わされない、成熟した大人の男となる。

「アニムス」は、女性の中の男性人格。
父親型アウトロー型運動選手型聖職者型(知性と神秘)


「ナルシシズム」
「ナルシシズム」は、一般に言われる「ナルシシスト」(自信過剰・自己満足)という単純なものではない。
「リビドーが外部の対象に向かわず、自我に向かう状態」と定義される。自分以外を一切愛さない自己愛の塊。
過剰な自己愛は、あるきっかけで、うぬぼれとは正反対の激しい自己非難に転化し自信喪失してしまう。

激しい自己愛は、激しい自己非難に転化する。
自己愛の塊のヒトにとって、恋愛とは、相手との関係で作られるものではなく、自分の魅力・自分の愛の力から生まれる。
失恋すると、恋人を失ったことへの非難・攻撃のすべてが自身に向けられてしまい「うつ状態」に陥る。

恋愛はそもそも危険がつきまとう。ヒトはみな自己愛対象愛に移行する。つまり恋している相手に自分を重ねているといえる。
もし相手がいなくなれば、重ねていた自我とリビドーを喪失し、自分の存在が小さく思える


「アグリッピーナ・コンプレックス」
暴君で有名なローマ皇帝・ネロは、実母アグリッピーナが未来の皇帝から権力を奪おうと、強引に母子相姦されたという指摘がある。
もとは善政を行っていたが、暴政になったのは、実母を殺害した時期と重なるという。

「アグリッピーナ・コンプレックス」は南博博士が命名。
乳児が母親の乳首を吸うことに性的快感を覚える一方で、母親もまた性的快感を覚えるのだという。
社会的には離乳による「母子分離」が行われるが、母親が無意識に分離を拒否し、息子にベタベタすると陥りやすい


男性にコレクターが多い「フェティシズム」
性器による性行為、生身の女性を恐れ、女性の下着、靴、髪の毛など周辺のみに性的興奮を覚えること。
女性より男性に多いのは、「去勢不安」からきているとフロイトが説いた。
「男根期」の少年が、自分の性器に優越感を感じると同時に、女子にないことに驚きと不安を覚える。
「自分もなくなってしまうことがあるのか?」という潜在意識が、成長しても女性に無意識のうちに「去勢されてしまう」不安を抱く。


「ロリータ・コンプレックス」と「ペドフェリア」
フロイトは「成長期の少女の媚を、可愛らしい、微笑ましいなどと軽んじていると、大きな危険が生まれる」と警告した。
「ペドフェリア」=幼児性愛者。「ロリータ・コンプレックス」が極度に進行した性犯罪者。性的暴行・強制わいせつ・淫行。

「ペドフェリア」には同性愛に向かう者も多い。
1.純然たる同性愛型
2.少女の代用として少年を選ぶ→「ロリータ・コンプレックス」

「ピーターパン」は心理学的には両性具有だといわれる。
中世ヨーロッパの貴族が幼児性愛にふけり、中世日本の僧侶が稚児への愛にふけったのも、少年少女たちの性的未成熟がもたらす美しさに魅せられたから。
それとは逆に「ペドフェリア」は美意識とはまったく無縁。ひたすら成人女性を恐れるあまり、力の弱い対象として幼児を選ぶ。


同性愛
同性愛になる一般的な見方。
1.異性が怖い
2.自分が異性に変身することへの欲望。同性と交わることで異性を演じることができる。
3.異性より同性に魅力を覚える。

精神分析学的な見方。
上記の1.は、母子相姦など強い罪悪感、母への恐れが女性に向かい、男性にリビドーが向けられる。
上記の2.は、母から満足な愛情が得られなかった場合。自身が望む母を演じようとする。相手は年下の男性が選ばれる。ヒッチコックの『サイコ』と同じ。
上記の3.は、父に対する尊敬と畏怖の反面、優しく愛されたいという願望が潜在意識に強く残る。
ひと昔前のイギリスの上流家庭では、父が厳格に接する伝統があったため、その子息がホモセクシュアルになる傾向が多く見られたという/驚


サディズムとマゾヒズムは表裏一体の関係
厳格な「超自我」がもたらすモラルからくる。
「性行為で快感を覚えることは不道徳だから罰し、罰されることで償いをしなければならない」という心理。
「レイプ・ファンタジー」=「マゾヒズム」の悪い形で思春期の少女にあらわれる。厳格すぎる家庭のお嬢さまに多いと言われる。


第6章 心の闇が悲劇を生む

「トラウマ(心的外傷)」
一般的には「心に傷を負った体験」「辛い体験によって負った心の傷」という意味で使われるが、
「腹がたつ」「悲しい」と意識できる傷ではなく、精神を崩壊させるほどのダメージなため、心の奥深くにしまいこまれた傷のこと。

『精神疾患の診断・統計マニュアル』による6つの特徴
1.予測不能の出来事:交通事故など
2.自分の力ではコントロールできない出来事:自然災害・火事など
3.非常に残虐、グロテスクな出来事:露出症に出逢ったなど
4.自分が愛して、大切にしているものの喪失:親の死、失恋など
5.きわめて暴力的な出来事:ナイフで襲われたなど
6.眼前でもたらされた惨事について、自分に責任があるかのように思える出来事:災害で家族を助けられなかった自責も含む

人間の暴力によって負わされた心の傷は、決して消えることのない社会全体への不信をもたらす。


PTSD(心的外傷後ストレス障害)
戦争・災害・性暴力・虐待・誘拐・監禁など尋常でない体験で生まれるトラウマは、
必ず何らかの形でよみがえり、心身の自由を奪うまでにそのヒトを苦しめる。

PTSDの3つの類型
1.再体験
コンプレックス同様、無意識に封じ込められているが、本人には抵抗できない「侵入」の形でよみがえる。
「まるでフィルムが回りだしたように、頭に映像が流れはじめる」という。

2.回避
苦痛の負担が大きすぎるため、事件そのものを忘れ去ってしまう。
ネガティブな感情を抹殺するために、感情全体をマヒさせる。喜ぶことも楽しむこともできない状態。
非現実に逃げ込む「解離」も同じメカニズム。

3.過剰覚醒
極度の緊張状態、警戒心に陥る。ちょっとした物音に跳び上がり、絶えず背中を壁に張り付けていたりする。

PTSDはベトナム戦争体験者の15%、ナチ収容所体験者は100%に兆候がみられたという/驚
アウシュビッツを体験した精神科医ヴィクトール・フランクル著『夜と霧』には、収容所から解放された囚人らが
「よく分からないが、いま、誰かを殺したり傷つけたりしなきゃ、気が済まない」と叫ぶ様子が描かれている。
「PTSD」はヒトの感情、意志ばかりか、生理までも完全に支配してしまうとても恐ろしい状態。


「AC(アダルト・チルドレン)」
ビル・クリントンはACを公言して大統領選に勝利した。そこにはアメリカ国民がACの克服を称賛せざるを得ない実情があった。
もとはACは「ACOA(アダルト・チルドレン・オブ・アルコホリックス)」で、アルコール依存症の親がいる家庭の子どもを意味した。
→その後「ACOD(アダルト・チルドレン・オブ・ディスファンクション・ファミリー」の略語になった。
「ACOD」=機能不全家族。欠陥、トラブルのある家庭で育った人。

幼児は、どんなに酷い親でも、家を飛び出して飢えと寒さに苦しむよりは、虐待に耐えるほうがマシと本能的に考える。
「虐待」ならまだ生きていられる自分の我を殺さなければ、暴力からは逃れられない。
周囲の顔色をうかがう大人になる。“事なかれ主義”でなく、周囲の反応に病的な恐怖を抱きつづける。
逆に暴力的に周囲を支配する。その暴力性も残酷からではなく、他を攻撃しなければ、攻撃されてしまうという恐怖の裏返し。


自信過剰なヒトほど危ない「強迫観念」
「杞憂」空が落ちてくるのでは?などといった途方もない心配をするヒト。
一度不安を覚えたことは、そんなはずはないと思うことができなくなる。
「強迫神経症」動悸・発作・めまいなど身体疾患をともなう病気。その背景にある「全能感」。

「全能感」
1.自分の願望はすべて実現するというプラスの全能
2.自分が悲観したことはすべて実現してしまうというマイナスの全能を信じる感覚
「自分は何でもできる」という誇大妄想家ほど「強迫観念」にとりつかれやすい。


「共依存」
例:ダメ男から離れられない女性
「共依存」は、1970年、アルコール依存症の夫と、支える妻の関係から見出された。
妻は夫の手足となって動く夫は立ち直る意志と義務感を失う。
「この人は、自分なしでは生きられない」と思うことで、自分の価値を実感できる。依存が必要な夫に依存する妻。

「ミュンハウゼン症候群」
子どもに「あなたは自分では何もできない」と言う母親。
エスカレートすると下剤を混ぜて本当に体の弱い子にしたり、砒素などの毒を飲ませ、献身的な看護をするケースもある
自分の犯した罪から「自己陶酔」という“利子”をもらう


自分の中の他人「多重人格」
例:アメリカには64人の人格に分裂した女性がいた!「主人格」は平凡なOL、「副人格」は画家。
「副人格」は「主人格」にはないアレルギーまで持っていた驚驚驚
免疫や体質の違う人間をつくりだすことさえある。

「多重人格」の定義
1.患者の内部に2つ以上の異なる人格が存在する
2.これらの人格の少なくとも2つが、その人の行動を完全にコントロールしている

1994年には「健忘」(別人格になった記憶がない)の要素を加えて「多重人格性障害」から「解離性同一性障害」と名を改めた。
解離は、父親からのレイプ体験など衝撃的な出来事がもたらす「トラウマ」によって起こるとされている。
『ジキルとハイド』とは違って、解離が生み出した人格のほとんどは、人を攻撃するためでなく、自分を守ための人格である。


ストーカー
19世紀の精神医学者E.J.エスキュロールが「狂気的な純愛を抱く者」の類型をまとめたのが最初。
「エロトマニア」と名付けられた。ジョディ・フォスターのファンや、ジョン・レノンを殺害したD.チャップマンが挙げられる。
現代は近付きがたい雲の上の存在ではなく、一般の隣りのおねえさんをターゲットにするのが特徴。

「ストーカー」は神経症と分裂症の境界線上にある「ボーダーライン人格障害」に属する。
1.自己陶酔と自己嫌悪の間で激しく揺れ動く
2.対人関係の不安定、不得手
3.慢性的な空虚感
4.怒りや悲しみなどの衝動をコントロールできない

上記は現代の若者らの特徴とも言える。
警察には毎日のように多数の「ストーカー被害」が舞い込み、
そのほとんどが「私ってモテて困ってるんです」という自己陶酔の裏返しだという。
そのため真のストーカー被害を見分けにくくしている。平成12年より「ストーカー規正法」がスタートした。

現代の若者は、生の対人関係を避けている。みな自分の内部に侵略されることを恐れて生きている。
一方で、「個性の尊重」といって自我意識の拡大がはかられる。
彼らは、自分の思い通りにならない人間に対して、ふいに怒りを覚えたりする


「窃視症」
ヒト(とくに男性)は見えないものを盗み見ることに興奮を覚える→「幼児性欲」からきている
乳児が自分の性器を母親に「露出する快感」が「覗く」快感と結びつき「窃視症」の原点となる。
「窃視症」は何かの秘密を見たい欲望、広い意味の好奇心でもある。
女性の体の中を覗きたい、時計を分解して中を覗きたいは、ほぼ同じレベルの好奇心といっていい。


「露出症」
法的には「公然わいせつ罪」になるものの、真剣に告訴する女性がいない、呆れる女性が多い。
それがますます調子に乗って常習化していく
精神医学者アベールによると、露出症者は、自分の性器を見た女性らは、
性的快感を覚えこそすれ、不快・恐怖を感じたりするはずはないと思いこんでいる。
「窃視症」と同様、身体的接触を恐れる傾向が強いので、常習性は高いものの、性的暴行に及ぶことはほとんどない。
しかし、常に女性に支配されることに欲求不満を抱いているのが原因なので、
勇気を出して非難などするとかえって危険な場合もあるので注意が必要


レイプ犯に共通する性質
レイプが深刻な社会問題でありつづけたアメリカでは、レイプ犯の精神構造についての分析が半世紀以上前から進められていた。
精神分析家ウォルター・ブロンベルグの1948年の報告によると
「レイプ犯は“男性性”の優位が脅かされることに常に情緒をかき乱されている。
 その背景には、自分は社会で劣っているという劣等感がある。だからこそ、優位を保てる“男性性”の優位にしがみつく。
 それが女性への力による性的征服として表れる」

1971年。セイマー・ハレックは
「レイプ犯の多くは、女性を弱い動物と見下す一方で、自分を踏み潰す巨人のように恐れている。
 それも自分の“男性性”への自信のなさからきている。その恐れを克服するためにレイプにいたる」


厳格な親から非行少年が生まれる
宗教家・教育者・法律家などモラリスティックな家庭からは非行少年少女が生み出されることがある。
今村昌平監督『復讐するは我にあり』も同様。
アメリカの精神医学者ジョンソンとスズレクはその心理メカニズムを「黒い羊の仮説」と名付けた。
モラリスティックな親は秩序や作法を重んじる教育をほどこすが、何番目かの子どもには監視の眼がゆるんで、
「ペルソナ」を外したいという欲望にかられる。そこには抑えてきた「シャドウ」がある。
その子は親が「自分たちのできなかった生き方をしてくれ」と要求しているかのように映り、
無意識の授受が行われ、一匹の黒いヒツジが育っていく。


母性本能と幼児虐待
アメリカでは近年、幼い子どもが虐待する親を告訴するケースが増えている/驚
「幼児虐待」の最初の論文は1962年アメリカ医師C.ヘンリー・ケンプによる『被虐待児症候群』。
虐待する母の多くはアルコール依存症、軽犯罪歴があり、自己中心的、未熟、衝動的、
自分でもコントロールできない攻撃性といった内面的歪みがあると判明。
そして、高い確率で自身が幼児虐待を受けていたという。

動物学では、母性は先天的な本能ではなく、教えられたり学んだりして獲得するものだという説がある。
“母性本能”は幻想である


なぜ、ヒトは血を見ると興奮するのか
『羊たちの沈黙』でレクター博士が「最初の殺人に戻れ。すべての答えは、そこにある」と言った。
最初の殺人には何らかの動機があるが、それ以降の殺人はエクスタシーを求めるだけの無差別殺人に変わるという「血の酩酊」の原理を示唆している。
愛憎・復讐・アクシデントによって誰かを殺した時、殺人犯は初めて血を見る。そして異様なエクスタシーを覚え、
以後、その麻薬性に誘われて殺人を繰り返す。

「血の酩酊」
ドイツの精神医学で生まれた言葉。太古の人類は、大きな危険を伴う狩猟における恐怖に打ち勝つため
「狩猟をしなければ生きていけない」という義務感だけでは弱い。
そこで遺伝子に組み込まれたのが「獣から流れる血を見るとエクスタシーを感じる」という遺伝子だった。
エンドルフィンやアドレナリンなどの脳内麻薬といったところか。


【あとがきメモ】
ヒトはhトの支えなしには生きていけない存在。
まずは自分の心の闇を知り、見つめ、分析することで、他者への理解も深まります。
人間の複雑な心理を知ることは、何かと不完全な自分を許し、他人を許すことにつながるのです。



【心の謎を探る会】
他の著作には『図解・相手の性格をひと目で見ぬく技術』などある。

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