過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part6らのつづきで、青いノートのラスト。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。
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『スペース・エイド』(1992)
監督:グレッグ・ビーマン 出演:テリー・ガー、ジェフリー・ジョーンズ、
エリック・アイドル ほか
さて、エリックが'92に出演した作品。どんな形で出てくるのかドキドキして観たけど、結局2シーンしか出番がないのが残念。
『フェリスはある朝突然に』で大いにボケをかましていたジェフリーの主演SFコメディ。
バカばっかりの星という設定といい、『スターウォーズ』のパロディ風クリーチャーがたくさん登場。
意外と予算がかかっているんじゃないかしら?
オバタリアンとも言えないこともないママ役のテリーがコケティッシュな好演を見せている。
魚やブルドッグの異性人がなんとも可愛い。ちゃんと家族があって情も分かるし。
ディックは腰が悪いといいつつも、高い所から落ちても、レーザーに襲われてボロボロになりながらも結構タフ。
J.ジョーンズのやられっぷりのよさ、何度も蘇るタフな反骨精神はいつ見てもご立派で笑える。
MPの面々は、こうゆうSFコメディが好きなのか? わざわざ2シーンのために出演しているんだものね。
やっぱりマーケットが大きなアメリカ映画への出演が続いているけど、イングリッシュな笑いの世界も捨てたもんじゃないんだけどね。
エリックの話から始まる今作。いろんな声の持ち主で、渋くていい声なんだから歌が入っていないのが残念。
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『欲望』(1993)
監督:スティーブン・ギレンホール 出演:
デブラ・ウィンガー ほか
デボラの熱演がセンセーショナルな話題となった。ファンには嬉しい主演作品で、久しぶりにプロの演技がじっくり味わえる。
微妙で複雑な男と女、ある愛の形を繊細に描いている。
共演のバーバラ・ハーシーと、ガブリエル・バーンらががっちり脇を固めて、
思い通りにならない人生をそれぞれの立場から表現。単なるロマンスでないストーリーにしている。
デボラはいつも一風変わった役どころが多いが、このマーサは特別変わったキャラクターだ。
町や学校、職場で一人はいそうな変わり者。でも、こうした人をヒロインとしてとりあげる映画は今までなかった。
歩き方から服装もすべてダサくて、正直さがかえって人間関係を壊している。普通なら嘘も方便。
自分を守るために偽り、世の中を渡っていく、それが出来ずにいる彼女が笑われるような世の中なんだ。
「幸せがただ通り過ぎてゆく」このセリフが作品中2度も繰り返される。
登場人物は皆なんらかの心の痛みを抱えて悩んでいる。
マックもけして女をもて遊ぶタイプでなく、正直なゆえに人を傷つけ、自分も傷ついている。
欲望に負け、酒で紛らわす人間の弱さを持っていて、それを隠すことすらできずにいる。
人それぞれ幸せの価値や基準は違って、愛することの意味も違う。
そこから生まれる男女間のひずみ、また孤独な人生観の中で翻弄されながらも、
折り合いを見つけて生きていく人間の様を今作は見せてくれる。
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『バンデットQ』(1980)
監督・出演:
テリー・ギリアム 脚本・出演:
マイケル・ペイリン、
ジョン・クリース、ジェリー・デュヴァル、ショーン・コネリー ほか
バンデッド=山賊・強盗・ならず者 なぜ邦題にQが付いているのか?
ギリアムが本格的に映画界に進出した初期作品。あふれんばかりの奇想天外なアイデアが詰まったSFファンタジー。
MPのメンバも2人出演しているのも見逃せない。
J.クリースが怪演。ケビンが名を言いかけて「ケ・・・」と言ったのを名前と思い込むシーンは笑える。
"ke...? It's jolly good name, yes."
小人の頭は『Private Party』にMPと出演していた彼。
ギリアムはこの後'85にあの『Brazil』を撮るわけだが、今作を超えるブッ飛びイメージの世界へとつながっていく。
奇抜なアイデアと映像の絶妙な組み合わせによって生まれるギリアムの世界。
ペイリンとの共同脚本も生きて、子どもも大人も冒険できるファンタジー映画。ビックリの連続で開いた口がふさがらなかった。
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『ロリータ』(1961)
監督:スタンリー・キューブリック 出演:スー・リオン、ジェームズ・メイソン、
ピーター・セラーズ ほか
以前観た時はS.キューブリックシリーズで、改めてセラーズ出演作品として見直すと、
こんな深刻なサイコドラマの中でもunusualなスタイルがそのまま生きているのが可笑しい。
命を狙われていながら、ひっちゃかめっちゃかの部屋でシーツの下に眠っていたクィンテンが起き、
「病気なんだ」と言いつつチャンプ直伝のピンポンをしたり、ピアノを弾いたり。
その後はいろんな変装で2.5時間のあちらこちらに顔を出す。
ある時は、母の昔の恋人で、黒髪の怪しげな女性と一緒にすましてダンス!
ある時は、心理学者ゼンフ博士。クルーゾー系のなまりで、教授とロリータの家庭環境に問題があると指摘。
また、ある時は、ホテルのテラスで背を向けてアレン風に喋りまくる警官。
「疑っていると思って逃げるんですね。私も疑われて仲間に捕まったことがある」そうで、
黒髪の女性とは柔道をしているそうなw
セラーズはこの翌年、国際的に知られる俳優となるチャンスを掴む。つまりピンク・パンサーのクルーゾ役。
今作の変装とunusalさが伏線となっているわけ。
セラーズ自身もロリータ趣味があるのではと噂されるほど若い女優とのいく度かの結婚歴がある。アレンも同じく。
セラーズは'61当時は36歳。キャリア初期の作品を観るのも楽しい。
先日、新聞を調べていた時、都内のアートシアター系で今作が再上映されていたのを知った。
どんなコンセプトで上映したのか知らないけど、当時のポスターのキャッチが印象的。
"She's not more girl, She's not woman enough. What is she?"(ちょっと違っているかも)
コギャルと呼ばれる女子高生が売春して服代
を稼ぐ今の世の中とは比べものにはならないけどね。
若い娘に惹かれる中年男の気持ちも分からんでもないが、この倒錯の源がどこにあるのかが問題なのよね。
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『何かいいことないか子猫チャン』(1965)
監督:クライブ・ドナー 音楽:
バート・バカラック、歌:トム・ジョーンズ
出演:ウッディ・アレン(兼脚本)、ピーター・オトゥール、
ピーター・セラーズ、
ロミー・シュナイダー ほか
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trailer
♪What's new pussy cat WOOW WOOW WOOW~ トム・ジョーンズの情熱的な歌声で始まる今作。
なあーーーんてゴージャスな映画。こってこてのバタークリームにマヨネーズ、
チーズにオリーブ油をかけたようなてんこ盛りゴージャスコメディだ
当時30歳、大はりきりのアレンが脚本担当。映画はこれが初出演? セラーズのほうがずっと先輩なわけね。
この2人の顔合わせは夢のよう。まるで師弟か双子のようだもの。
そこにオトゥール。英国演劇界のプロフェッショナルにどんな役を演らせてもパーフェクトな上、この若さと美しさはいつかのD.ボウイのよう。
2大コメディアンが跳びはね回っても、彼の存在感は変わらず。負けずとも劣らぬコメディ演技を披露。
そして若き日のシュナイダーは、もぎたてフルーツみたく初々しい美しさをたたえて、
他にもアメリカ、パリ、ロンドンからよりぬきの美女が次から次から。これはフェリーニの『女の都』に次ぐ美女多出演記録。
最初のテンションが落ちるどころか上がる一方。ついにはいしにえのモノクロ無声映画のドタバタ喜劇風になっちゃうのは映画フリークのアレンの発案か?
ルーにフラれて船着場で自殺しようとしている英国国旗をまとっているセラーズと
誕生日祝い
でテーブルをセットしてディナーをとってるアレン。
このなんともエキサイティングな2人のコメディ対決。そろって常軌を逸しているから不思議と調和している。
英国と米国の笑いのミックスが本当にゴージャス。
でも、相変わらずセラーズは妖しいアクセントのパリの医師なのはどうしてか?w で、やっぱり柔道の話をしている。
この時の格好がまたなんとも愛らしいピエロのように大きな白いダッフルコート。
カーレースの時なんか上下デニム。笑わせてくれるよね、ほんと。
きっとトーンの合っているアレンの脚本をセラーズは大いに気に入ったと思うな。
出演者が皆イキイキと好きに動いていて、撮影中もこのストーリーと変わらない刺激的な混乱が起きていたんじゃないかって気さえしてくる。
そうそう、自分の子どもに変質者、変質者と歌われるシーンなんてスゴイ家庭!爆
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『パパ』(1979)
監督:ルイス・ジョン・カリーノ 出演:
ロバート・デュヴァル、プライス・ダナー、マイケル・オキーフ ほか
アメリカ映画が問い続ける家族の絆。
骨の髄まで軍一色のワンマンおやじと、戦争を知らない新人類のいたって平和な息子、
ちょっと皮肉がキツいおどけ役の娘、優しく包み込む母親。
日本じゃ戦争の恐ろしさ、無意味さを説いて、二度と繰り返さないと願う気持ちが強いけど、
アメリカじゃ勝利、闘う潔さ、誇りを大事にするある種の文化みたいなものがあるのか。
子どもを喜んで兵士に送って、自分の子だけは死なないとでも思っているのか? ギャンブルかゲームみたいに。
父と息子の心の溝と、南部アメリカに根強くはびこる人種問題も絡めてじっくり描いている。
父親って理解しがたい存在だな。そんなパパを演じきっているのがデュヴァル。
彼のような俳優がいい映画に絶対必要。あの乾いた皮肉っぽい笑い方が好きだ。
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『あきれたあきれた大作戦』(1979)
監督:アーサー・ミラー 出演:ピーター・フォーク、アラン・アーキン ほか
フォークがいつものしかめっ面のコロンボを離れて、テンション高いコメディ演技をしているのが見物。
巻き込まれてウロたえるアーキンとのコンビが最高。ほんの2分で済むから・・・て話がそもそもの始まりで、
次々と迫るドンづまり状態でも、明るい展望を失わないヴィクターのタフな楽観性はご立派。
本当にCIAだったからよかったものの、誇大妄想狂だったらどうなっていたことやら。
どんなにクレイジーでもフォークが演じるとどこか信用できちゃうのは、彼からにじみ出る人柄の良さのせいかな。
スナイパーの弾をよけるためにわざわざ戻ってからジグザグ歩きをする生真面目なシェリーのシーンも笑える。
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『キャプテン・ロン』(1992)
監督:トム・エバーハート 出演:カート・ラッセル、
マーティン・ショート ほか
マーティン・ショートがやっと歳相応の役を演じている! でも何をやってもドジって頼りがいのないダメおやじ。
グイグイ引っ張って皆をひきつけるロンとは大違い。でも、彼のちょっとしたアイデアで父親の威厳を取り戻す。
1ヶ月まるまる海、また海のアドヴェンチャー・ホリデー。都会暮らしのせせこましさもパァーーーーっと晴れる爽快感。
ラッセルが声音まで荒っぽく変えて、片目をサメに食われてガラス玉が入っているってゆういかにも海賊のようなワイルドな男を好演。
最初は幽霊船みたく冴えなかった船
も磨きあげて乗りこなすうちに命を吹き返したように立派な帆船に見えてくるから不思議。
嵐や海賊はいただけないけど、こんな自由で破天荒な海の旅も気ままでイイ。
どこのロケなのか夕陽で赤く染まった椰子のある海岸。人の手がはいっていない原型をとどめた島々、
どこまでも真っ青にすみきった海と空。無計画で進んでいったにしちゃもったいないくらいのゴージャスツアー!
陽気なサンバのリズムに日焼けした陽気な人々。1ヶ月もこんなに解放された場所にいたら
元の生活になんか絶対戻りたくなくなるよね、ほんとに。
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『イカレたロミオに泣き虫ジュリエット』(1986)
監督・出演:アンニャ・フランケ、ダニ・レビー ほか
図書館の司書の選択眼て称賛に値する。こうゆうレンタル屋にはないマイナーでいい作品を並べてくれるんだもの
MPの『人生狂騒曲』もあったし、行くたびに新たな発見がある。ドイツもなかなかやわらかな作品を撮るんだな。
注目なのはジュリエット役の女優と、ロミオ役の男優が、脚本、監督まで兼ねていること。何者なのか?
日本じゃあまり話題にのぼらなかったけど、この邦題はとっても粋。
それにこのジャケット。フランケの元気いっぱいの笑った顔と、いっぱいのコラージュが当たった勝因じゃないかな。
美人てタイプじゃないけど、光の具合でゲジゲジまゆげがビョークみたくとってもチャーミングで印象的。
男がトイレで用を足している横にいるなんて倦怠期もここまでくるとさすがにイヤだな
洗わない手で握手したくないし。地下鉄でタダのりしてつかまって、ロンドンから来た医師と患者のマネをしたり、
ショーの途中でくだらんジョークを披露したり、ハチャメチャ破天荒な2人だけど、自由に大空を飛べたのは夢の中だけ。
現実では翼をもぎとられる。いまだ影をひきずっているドイツの政情の影響か?
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『CLUB PARADISE』(1986)
監督:ハロルド・ライミス 出演:ロビン・ウィリアムス、ピーター・オトゥール、リック・モラリス ほか
3大クセ者俳優が揃って、南の島
のロケーションで、さぞかし撮影も楽しかっただろうと思われるパーーーっと解放しちゃおうコメディ。
島につきものな陽気でのん気なレゲエ、レゲエ、レゲエ
歌手が本業だろうか現地民アーネスト役の彼に注目。
ストーリーはなんであれ、いつでもどこでも、なにが飛び出すか分からないロビンのジョークが可笑しい。
牢屋にいっぱいのノミが軍隊作って「あいつを襲え」なんてゆうのとか。
今回はブロンドの英国娘が相手だけどお下品なやつは控えめ。
モラリスも脇役ながら、無人島に流れ着いたと思い込んで「家を作ろう
」と冷静な判断。
猛進するヨットのバックにベンチャーズの
アパッチ 友との感動的な再会にはクラシック映画音楽など音の遊びも楽しい。
オトゥールはすっかり日焼けした退役軍人風。こうゆうオフビートなマイナー映画、特にナンセンスコメディが好きなんだね。
ツアー客の1人でキョーレツなおばさんリンダ役の女優(どこかでよく見る)もスカイダイビングで林に突っ込んだり、ギャンブルでも大活躍。
ツアー旅行にありがちなシチュエーションがパロってあって、実際起こり得るから、うまい話にはご用心。
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『COMEDIE!』(1987)
監督:ジャック・ドワイヨン 出演:アラン・スーション、
ジェーン・バーキン ほか
最後に気持ちだけ流れる主題歌はバーキンも彼女らしい声で歌っている
ともに歌手でもある2人きりの出演で、これだけ中身の詰まった作品になるのはフランス映画だから。
でもほんと映画で観るかぎり、フランス人は饒舌。それともフランス語が人をそうさせるのか?
普段こんなに喋り続け、動き続け、行き当たりバッタリにたくさんのことをしてたら、きっと1日でぐったりしちゃう
男女がもっと相手を知ろうとして、愛そうとするほど傷つけ合う。ギリギリまで自分をさらけ出し、また隠して、
ひとつ屋根の下で過去や現在、欲望と嫉妬がぶつかり、こすり合う。
当時40歳のバーキンが時に夢追う少女、時に嫉妬に疲れた大人の女、時にワイルド、時に純情に様変わりし、
一方のアランも暴君、色男、傷つきやすい少年、素顔の1人の男にどんどん変わってゆく。
一時も目が離せない2人の心情の移り変わり。演技対決が見物。
そしてラスト「愛してる」という告白にやっとたどり着くまで。
「お静かに」とこちらにふいに話しかけられ、傍観者から証人になった気がしてドキっとする。
ともかくハッピーエンディングは仏映にしては珍しくホッとさせられる。
本当は1分1秒ごとに違ったシチュエーション、粋なセリフで溢れんばかりだけどとても書ききれない。
水に困りそうだけど、プールもあるし、眺めはいいし、こんな自然に囲まれた立派な別荘、手放すことはないと思うけどね。
【歌詞をメモした曲】
♪星めぐりの歌/エリック・アイドル