■『冥途』(パロル舎)
内田百間/著 金井田英津子/画
ライブ友さんからススメられた内田百間さんで検索して、読みやすそうな1冊を試しに借りてみた。
まず、この装丁デザインにヤラれた。さすがパロル舎さま。感服。
それに、小説ではなく、夢日記だと分かってビックリ/驚
わたしもユメニッキを書いてアップしているけれども、人のユメをこうしてじっくり読むのは初めて。
ユメの話をするのも、聞くのも好きだから面白い。なにせ時間も、空間も、道理も超えた世界。
突飛なストーリー展開は、どんな脚本家が頭をひねってもこうは書けまいw
それに、ユメの内容の傾向によって、それを見ている人となり、時代背景までも推測されて、
まるで夢判断をしているつもりになって読むという心理学的な面白さもある(出来ないけど
どうやら内田さんは女性好き?
それとも、この時代の男性は今みたく風俗店がないから、こうして時には危ない橋を渡って、その刺激も楽しんでいたのか?
昭和初期か、もう少し前の日本独特のあの湿り気をたっぷり帯びた陰気な感じが文面から伝わる。
金田一耕助シリーズや、鈴木清順映画みたい。
友だちがゆっていたように旧仮名づかいもたまらない。
そして金井田英津子さんの画!また素晴らしい画家さんに出逢えて感激した
内田さんの怪談じみたユメの妖しい世界を見事に視覚化しつつも、
読者の想像力までは侵さない、まったく素晴らしい絵描きさん!
それぞれの章の扉絵は、似ているようで、少しずつ人が歩くスピードで村の奥へ奥へと進んでいるように描かれている/驚
昔の暮らしって自然への畏敬の念と、闇への恐怖、妖怪、迷信などに満ち満ちていたんだなあ。
【内容メモ】
花火
土手を歩いていると陰気な女が近付いてきて、一緒に歩き出す。入り江の上に花火がいくつもあがる。
帰りたくなるが、女が泣きそうなので、仕方なくついていく。どこかで会った女だと思い出し、
女は「浮気者浮気者浮気者」と言ってうなじに獅噛みつく。
尽頭子(じんとうし)
女を世話してくれるというので、ある屋敷に来ると、お給仕の女が食事を出してくれる。
見えないように鼻をこすっているのが狐のようで気になる。
馬のような顔の旦那と弟が帰ってきて肝を冷やすが、女は「すぐ出かけるから大丈夫だ」と引き止める。
誤魔化すために「弟子にきた」と嘘をつかされるが、馬にお灸をする師匠と聞いて驚く。
馬にお灸って ちょっと考えれば可笑しいのにユメの中ではまったく疑いもせず、
どんどん成り行きが進んでいってしまう焦燥感はよく分かる。
烏
遍路の旅先で泊まった宿で、隣りの部屋の客がどうやら烏を狩る生業らしく、物音が気になって仕方ない。
犬が“びょうびょうと吠える声”が聞こえ、恐ろしく足の速い犬だと思い眠れずにいる。
件(くだん)
気づくと、体が牛で頭丈(だけ)人間の浅間しい化物「件」になっていた私。
うっかり忘れていたが、件は生まれて3日で死ぬ時に、人の言葉で未来の凶福を予言するものだと思い出す。
こんな姿になって、3日で死ぬのは構わないが、予言は一体何を言っていいのか困る。
あたり一面から「彼所(あすこ)だ」「彼所だ」と言う声がして、何千という人に囲まれてしまう。
1人の男が水を勿体らしく運んできて、飲むたびに予言を言うのでは?とどよめきが起こる。
柳藻
村を歩いていると、干からびた老婆と、後ろから泣きそうになって歩いている若い女とすれ違う。
私は2人を追い、少女の手を引き、老婆を「造化精妙」と考えて一打ちに殺した。
「行こう」と少女と歩くが寂しくて仕方ない。少女の手を強く握るとぽきりと折れた。
それは、さっき原で殺した老婆だった。
冥途
暗い土手を歩いていると、カンテラを灯した一ぜんめし屋を見つけて入る。
4、5人連れが自分のことを話しているのが聞こえてくる。
(以下、内容メモ)
「まあ仕方がない。あんなになるのも、こちらの所為だ」
その声を聞いてから、また暫くぼんやりしていた。すると私は、俄かにほろりとして来て、涙が流れた。
何という事もなく、ただ、今の自分が悲しくて堪らない。
けれども私はつい思い出せそうな気がしながら、その悲しみの源を忘れている。
なぜ内田さんのユメはどれもこんなに寂しく、もの悲しいのか。
そうゆうユメばかりを集めた1冊なのかもしれないが。
彼の無意識の中には、女性に対する並々ならぬ想いがあることには間違いない。母への想いか?
生きる孤独みたいなもの。ニンゲンとはなんと哀れないきものなんだろう。
【旧仮名づかい】
毛物
森閑:物音一つせず、静まりかえっているさま。
洋灯(ランプ)
矢っ張り
丸で
戦ぐ(そよぐ)
【文学絵草紙シリーズ】
「猫町」萩原朔太郎
「夢十夜」夏目漱石
「ポラーノの広場」宮澤賢治
内田百間/著 金井田英津子/画
ライブ友さんからススメられた内田百間さんで検索して、読みやすそうな1冊を試しに借りてみた。
まず、この装丁デザインにヤラれた。さすがパロル舎さま。感服。
それに、小説ではなく、夢日記だと分かってビックリ/驚
わたしもユメニッキを書いてアップしているけれども、人のユメをこうしてじっくり読むのは初めて。
ユメの話をするのも、聞くのも好きだから面白い。なにせ時間も、空間も、道理も超えた世界。
突飛なストーリー展開は、どんな脚本家が頭をひねってもこうは書けまいw
それに、ユメの内容の傾向によって、それを見ている人となり、時代背景までも推測されて、
まるで夢判断をしているつもりになって読むという心理学的な面白さもある(出来ないけど
どうやら内田さんは女性好き?
それとも、この時代の男性は今みたく風俗店がないから、こうして時には危ない橋を渡って、その刺激も楽しんでいたのか?
昭和初期か、もう少し前の日本独特のあの湿り気をたっぷり帯びた陰気な感じが文面から伝わる。
金田一耕助シリーズや、鈴木清順映画みたい。
友だちがゆっていたように旧仮名づかいもたまらない。
そして金井田英津子さんの画!また素晴らしい画家さんに出逢えて感激した
内田さんの怪談じみたユメの妖しい世界を見事に視覚化しつつも、
読者の想像力までは侵さない、まったく素晴らしい絵描きさん!
それぞれの章の扉絵は、似ているようで、少しずつ人が歩くスピードで村の奥へ奥へと進んでいるように描かれている/驚
昔の暮らしって自然への畏敬の念と、闇への恐怖、妖怪、迷信などに満ち満ちていたんだなあ。
【内容メモ】
花火
土手を歩いていると陰気な女が近付いてきて、一緒に歩き出す。入り江の上に花火がいくつもあがる。
帰りたくなるが、女が泣きそうなので、仕方なくついていく。どこかで会った女だと思い出し、
女は「浮気者浮気者浮気者」と言ってうなじに獅噛みつく。
尽頭子(じんとうし)
女を世話してくれるというので、ある屋敷に来ると、お給仕の女が食事を出してくれる。
見えないように鼻をこすっているのが狐のようで気になる。
馬のような顔の旦那と弟が帰ってきて肝を冷やすが、女は「すぐ出かけるから大丈夫だ」と引き止める。
誤魔化すために「弟子にきた」と嘘をつかされるが、馬にお灸をする師匠と聞いて驚く。
馬にお灸って ちょっと考えれば可笑しいのにユメの中ではまったく疑いもせず、
どんどん成り行きが進んでいってしまう焦燥感はよく分かる。
烏
遍路の旅先で泊まった宿で、隣りの部屋の客がどうやら烏を狩る生業らしく、物音が気になって仕方ない。
犬が“びょうびょうと吠える声”が聞こえ、恐ろしく足の速い犬だと思い眠れずにいる。
件(くだん)
気づくと、体が牛で頭丈(だけ)人間の浅間しい化物「件」になっていた私。
うっかり忘れていたが、件は生まれて3日で死ぬ時に、人の言葉で未来の凶福を予言するものだと思い出す。
こんな姿になって、3日で死ぬのは構わないが、予言は一体何を言っていいのか困る。
あたり一面から「彼所(あすこ)だ」「彼所だ」と言う声がして、何千という人に囲まれてしまう。
1人の男が水を勿体らしく運んできて、飲むたびに予言を言うのでは?とどよめきが起こる。
柳藻
村を歩いていると、干からびた老婆と、後ろから泣きそうになって歩いている若い女とすれ違う。
私は2人を追い、少女の手を引き、老婆を「造化精妙」と考えて一打ちに殺した。
「行こう」と少女と歩くが寂しくて仕方ない。少女の手を強く握るとぽきりと折れた。
それは、さっき原で殺した老婆だった。
冥途
暗い土手を歩いていると、カンテラを灯した一ぜんめし屋を見つけて入る。
4、5人連れが自分のことを話しているのが聞こえてくる。
(以下、内容メモ)
「まあ仕方がない。あんなになるのも、こちらの所為だ」
その声を聞いてから、また暫くぼんやりしていた。すると私は、俄かにほろりとして来て、涙が流れた。
何という事もなく、ただ、今の自分が悲しくて堪らない。
けれども私はつい思い出せそうな気がしながら、その悲しみの源を忘れている。
なぜ内田さんのユメはどれもこんなに寂しく、もの悲しいのか。
そうゆうユメばかりを集めた1冊なのかもしれないが。
彼の無意識の中には、女性に対する並々ならぬ想いがあることには間違いない。母への想いか?
生きる孤独みたいなもの。ニンゲンとはなんと哀れないきものなんだろう。
【旧仮名づかい】
毛物
森閑:物音一つせず、静まりかえっているさま。
洋灯(ランプ)
矢っ張り
丸で
戦ぐ(そよぐ)
【文学絵草紙シリーズ】
「猫町」萩原朔太郎
「夢十夜」夏目漱石
「ポラーノの広場」宮澤賢治