1991年初版 1992年 第2刷 脇明子/訳 エマ・チチェスター・クラーク/カバー絵
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
1巻目と同じ1910~1920年の長姉verなのにビックリした
末っ子から2番目、3番目と繰り上がるのではなく長女なのもフシギ
ちょっとずつ食い違いがあるのも面白い
1巻の冒頭はセーラが7歳の時だけになおさら記憶が曖昧ということか
姉妹ごとにそれそれものの観方が異なるという手法を使って
作者はどうやってこの長編シリーズを書いたのか驚異的!
セーラから見るとフランセスはいつでも独断で物事を決めていたように見えていたが
本人は17歳で一家を守るのに必死で、ガブリエルにつねに頼っていたのが意外だった
【内容抜粋メモ】
登場人物
パーセル家 ヒルクレスト ヒュイッシュ・プライオリ
フランセス 長姉 17歳
ジュリア 15歳
グウェン 13歳
セーラ 7歳
アニー 家政婦兼コック 25歳 寝たきりの義母、義弟と義妹の面倒をみている
ウィリス 庭師
マッケンジー家
父 牧師
母
ガブリエル
ジョフリー
アントニー
ルーシー
ジェイムズ・ダン卿
キャサリン・ジャミソン 同級生
デニス・ボンド 絵の売買をする
■1910年
母が肺炎で亡くなったと校長から聞く
母が4姉妹の後見人に選んだのは、弁護士ベイナムとほとんど知らないマッケンジー牧師
ブリストルに伯母が2人いるが、子どもたちを預かるには高齢すぎる
母はフランセスに絵の道具いっさいを遺した
フランセスはマッケンジーの家に住むことなど論外だと思う
4姉妹にはヒルクレストが必要だとみんなの前で発言を通す
母はベイナムを信用せず、マッケンジー夫人を“お節介焼き”と言っていた
フランセスもまた同じ方向性で一家を守ることになる
母が絵を描くために家を出たことも知らずにショックを受ける
フランセスもプロの絵描きになるために美術学校に行くつもりと話すと驚くマッケンジー夫妻
フランセスは長男ガブリエルに説得してほしいと頼む
10歳離れたセーラのことは、これまでまったく意識していなかったが
母は勉強ができる子だと評価していたため、将来の教育を心配し
マッケンジー牧師はグウェンと一緒に勉強を見てあげると言ってくれる
庭の日時計に刻まれる文字を読むガブリエル
「太陽に顔を向ければ 影は皆うしろへと去る」
*
スレイドの美術学校で、トンクス教授を師にして、毎日がデッサンの繰り返し
これまでの田舎生活と一変して、フランセスはホームシックになる
ガブリエル:
帰りたけりゃ、いつでも帰れる
君が帰った時の母はそれみたことかという顔をするだろうな
*
クリスマス休暇、大晦日の仮装舞踏会で、フランセスはセーラのアイデアでボーディケア女王に扮する
ガブリエルとダンスをして、一緒に年明けを迎える
■1911年
学校でキャサリン・ジャミソンと知り合い仲良くなる
父は貴族で、ジャミソンは短髪にしたりして周囲を驚かせ、自由を満喫している
グウェンは勉強が嫌いで、庭の手入れに没頭する
フランセスは厩を改造してアトリエにする
フランセスはケンブリッジにいるガブリエルを訪ねる
ガブリエル:名付け親から遺産をもらって、ある程度自由にできるんだ
フランセスは母が父と結婚したせいで絵が描けなくなった話をする
フランセス:私は絵を続けるわ
ガブリエル:君が結婚して、足元に子どもたちがまつわりつくようになったら、今の話を思い出させてあげるよ
■1912年
ガブリエルがふさぐと家族も手を出せないため
フランセスに散歩に連れ出してほしいとルーシーから頼まれて
2人でクォントックスに登る
それ以来、2人は遠出を楽しみ、ガブリエルも調子を取り戻す
ガブリエル:君はどうして絵を描くんだい?
フランセス:すっかり没頭しているのが本当の世界で、現実は存在しないみたいになるの
■1913年
デニス・ボンドからギャラリーに来てほしいと手紙が来る
彼もスレイドに通う学生だったが、才能がなく、絵の売買、展覧会を開く才能に目覚めたと話し
フランセスは将来性のある画家で、支えさせてほしいと頼み、毎月手当をくれるようになる
ガブリエルはドイツから戻り、みんなでクォントックス登山をする
セーラに海を見せるために納屋で一泊し、翌朝、セーラが1人で海岸に行ったのに激怒し
セーラの怯える顔を見て、二度としないと心に誓う
ガブリエルは特別研究員(フェローシップ)の資格をなんとかとる
クリスマスにフランセスはセーラのドレスを買う
ガブリエルはフランセスにエメラルドの指輪を差し出してプロポーズする
ガブリエル:君は僕を愛している 自分でも分かってるはずだ
フランセス:もちろんあなたを愛しているけど、結婚する理由にはならないわ
ガブリエルと口論になり、姉妹とアニーに相談しても共感してもらえず八方塞がりのフランセス
“彼が愛したのは、自分の想像の中だけに存在する女性でしかない”
ガブリエルはフランセスにクリスマスプレゼントとしてマチスの静物画をあげて感激させる
謎あてゲームではアントニーの意地悪ないたずらで
セーラが結婚の格好をしていたため睨みつけて泣かせてしまう
■1914年
サラエヴォ事件を発端として第一次世界大戦が勃発
男たちは競うようにして入隊し、前線に赴いた
鍛冶屋のビル・ロバーツ、庭師のウィリスも
まだ年齢に達していないアントニーも入隊して周囲は驚く
マッケンジーはセーラを学校に通わせるよう提案する
セーラも学校に行きたがっていたと知って寝耳に水のフランセス
だが、1日学校を見学して帰ると、きっぱり断って、それもまた驚く
■1915年
ビル・ロバーツとメアリが結婚
ビルの妹リジーは、数週間付き合った青年と婚約し、彼は前線に旅立った
フランセスはガブリエルが最後の休暇で戻る前にオルダーニーのジョン一家の所へ泊りに行く
アントニーは村から出た最初の戦死者となる
彼が最後の休暇を終えて、仮装大会用に兵士の制服を着た子どもみたいに
タクシーから手を振っていたのを思い出す
ジュリアは義勇医療部隊の看護婦になると言い出し、止めるが決心は固い
ルーシー:あたながたは何でも自分のしたいことができてどれほど運がいいか分かっていない
■1916年
ガブリエルは戦功十字章をもらって帰省する
クォントックス登山に誘われて、また結婚の話が出てキレるフランセス
ガブリエルは自分が死んだら、陸軍大尉未亡人に250ポンド支給されると言って
結婚を“強要”されたと感じて、またひどい口論となる
■1917年
復活祭 ガブリエルは脚を負傷
将校の療養は通常、軍の病院や保養所に限るが、ジェイムズ卿のはからいで帰省する
ガブリエル:歩けないなら、生きてたって仕方ないよ
デニスがヒルクレストを訪ねて、フランセスに個展を開くよう提案する
フランセスはジャミソンのアトリエに泊まり、2人で空襲の光を見て“幻想的”だと思う
フランセスの絵は好意的に批評され、たくさん売れた
デニス:必要なのは、これから収集を始めようとしている人たちです
デニスはフランセスがガブリエルと結婚するのではないかと心配し、絵に影響が出ないよう忠告する
ルーシーは一家で海に休暇に出かけた際、どれだけ物を寄付したか自慢し合っていて閉口したと話す
ガブリエルがフランスへ戻るつもりと話して、父と大ゲンカにもなった
ガブリエルはセーラが大人になっても残るものをプレゼントしたいと言ってネックレスを選ぶ
ビルが♪ラモナ を演奏し、2人はダンスする
ガブリエル:
もし、僕になにかあったら、ルーシーと親を助けてくれるね
気が変わったら、手紙でしらせてほしい
*
ジョフリーはすっかり神経をヤラれて帰省する
フランスでジュリアと過ごしたと聞いて驚くフランセス
世界がどれだけ変わっても、絵を描き続けているフランセスに感嘆するジョフリー
彼は死体にあふれた戦場の話をして、心配したフランセスはミルン医師に相談する
フランセス:ジョフリーは戦線復帰を許可されるべきではない 戦闘神経症に違いない
ミルン:勇気に欠けるからといって、義務を逃れていいということにはならん
(彼も戦場に行っていたら、違ってたよね 医師はいつも病気になった気持ちが分からないのが最大の難点だと思う
■1918年
フランセスも戦死したのがガブリエルでなくジョフリーでホッとする
“戦闘神経症の少年をまた戦場に送って、何が名誉だというのだろう?”
セーラはジョフリーの死のほうが堪えて、フランセスが散歩に連れ出して、徐々に回復する
作家になりたい夢を知り、ガブリエルを崇拝していることで共通点が見つかる
急な休戦になっても、ガブリエルは占領軍としてドイツに赴く
ジュリアが帰省するが、すっかり変わってしまっていた
ジュリア:私、もう描くつもりはないの
■1919年
ガブリエルとフランセスはまたクォントックス登山に出かける
ガブリエル:僕があっちへ戻る前に結婚するのはムリかな?
手紙のやりとりでガブリエルはまたしてもフランセスが結婚に同意したと思い込む
フランセスの気持ちは変わらないと分かるとアイルランドへ行くと決める
ガブリエル:
さっさと死んじまえば、君も後悔するだろう
2人で心から願えば、僕らは幸せになれるに決まってる
フランセス:私は十分に願っていないのね
*
ガブリエルは友人メレディス夫妻にプレゼントするためフランセスの絵を選ぶ
フランセスがガブリエルのために描いたヒルクレストの風景画はあげられないと断ると
絵の代金を支払い、フランセスの言い値が高くて驚く
(絵に理解を示しても、心底では、それほど評価してないのが分かるな
ガブリエルは1910年にフランセスが一家を守ると決心した時から結婚したかったのだと明かす
ガブリエル:
君はいつも仕事を口実にして、誰も侵入できない自分だけの小さな世界に逃げ込むことができた
人生には暗い側面もあるんだよ
ルーシー:
私はあなたが正しいと思う
ガブリエルは自分勝手で甘やかされているから
あんなにフランセスを嫌っていたマッケンジー夫人もガブリエルをイギリスに留めるために
結婚してほしいとフランセスに頼みに来た
フランセスは、昔、スレイドでバカにしていた画家が戦争絵画を描いたのを観て感動する
デニス:
戦争が終わって1年経ち、誰も過去を振り返りたがらない
今、買い手はずっと若くなり、見聞が広く、本当に関心を持っています
また個展を計画している
どんなにひどいスランプも抜け出せないことはあり得ない
■1920年
セーラはオックスフォード大学を受験し、奨学金をもらえることになり
フランセスはどっと肩の荷がおりた気持ちになる
まったく絵が描けなくて、ジュリアからスペインにでも行くようすすめられる
ルーシーはガブリエルが重傷だとしらせに来る
フランセスはすぐにアイルランドに駆けつける
“フランセスが泣いていたのはセーラのためだった
こんなに大事に護ってきたのに、幸せにしてやれなかったセーラのためだった”
*
病院で面会謝絶と聞いて自分を見失い、エリオット少佐と看護婦長によって寝かせられる
意識不明のガブリエルに付き添い、助かっても、また歩けるかどうか分からないと言われる
母の誕生日に手紙を口述してほしいというハドソン歩兵を手伝い
プレゼントに顔のデッサンを描いてあげると、たちまち病室に噂が知れ渡り、みんな描いて欲しいと頼む
婦長:あの人たちには面会人がない
ガブリエルの意識が戻り、やつれたフランセスをメレディス中佐夫婦が食事に誘ってくれる
棚には自分の絵が飾られていて、なぜかフランセスをジュリアと間違える
エリオット少佐と話しているうち、フランセスはガブリエルと結婚しようと決意する(!
ガブリエルなしでは生きていても仕方なく、仕事もその埋め合わせにはならなかった
(結局、こうなるほうが女性の読者の心をつかみやすいのかもしれないな
フランセス:私、あなたと結婚したいの
*
病院に来て初めて肖像画を描いたハドソン歩兵が亡くなる
フランセスは深い感謝と哀悼を捧げてガランとした病室を描く
ガブリエル:君は変わったんだね
*
2人はエリオット少佐と釣りに行く
エリオット少佐とジュリアが文通していると聞いて驚く
エリオット少佐:
人を見たら、シン・フェイン党と思うことです
ノランも交通事故に遭ったというが、あれは軍で使うクロスリーにぶつかった傷です
フランセスは裸で川で泳ぐ(!
ガブリエル:
エリオット少佐はボクがケンブリッジに戻るのは不可能じゃないという
世界中の時間はみんな僕らのものなんだ
■訳者あとがき
1つの出来事を複数の視点から書く手法は、時々使われるが
1人1人の少女の心の世界を語り、合わせ鏡のように対置することに成功したのは
この作品が初めてではないか(ほんと、そう思う!
絵画の変遷について
ラファエル前派
ウィアム・モリス→日本の白樺派にも影響
印象派:モネ、ドガ、ルノワール
後期印象派:セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ
1910年に開かれた後期印象派展で、イギリスの現代美術はこの年に始まったと言われる
フランセスの仲間も実在する名前
ネヴィンソン、ナッシュ、ゲルトラーの第一次世界大戦を描いた絵は実際に観ることができる
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
1巻目と同じ1910~1920年の長姉verなのにビックリした
末っ子から2番目、3番目と繰り上がるのではなく長女なのもフシギ
ちょっとずつ食い違いがあるのも面白い
1巻の冒頭はセーラが7歳の時だけになおさら記憶が曖昧ということか
姉妹ごとにそれそれものの観方が異なるという手法を使って
作者はどうやってこの長編シリーズを書いたのか驚異的!
セーラから見るとフランセスはいつでも独断で物事を決めていたように見えていたが
本人は17歳で一家を守るのに必死で、ガブリエルにつねに頼っていたのが意外だった
【内容抜粋メモ】
登場人物
パーセル家 ヒルクレスト ヒュイッシュ・プライオリ
フランセス 長姉 17歳
ジュリア 15歳
グウェン 13歳
セーラ 7歳
アニー 家政婦兼コック 25歳 寝たきりの義母、義弟と義妹の面倒をみている
ウィリス 庭師
マッケンジー家
父 牧師
母
ガブリエル
ジョフリー
アントニー
ルーシー
ジェイムズ・ダン卿
キャサリン・ジャミソン 同級生
デニス・ボンド 絵の売買をする
■1910年
母が肺炎で亡くなったと校長から聞く
母が4姉妹の後見人に選んだのは、弁護士ベイナムとほとんど知らないマッケンジー牧師
ブリストルに伯母が2人いるが、子どもたちを預かるには高齢すぎる
母はフランセスに絵の道具いっさいを遺した
フランセスはマッケンジーの家に住むことなど論外だと思う
4姉妹にはヒルクレストが必要だとみんなの前で発言を通す
母はベイナムを信用せず、マッケンジー夫人を“お節介焼き”と言っていた
フランセスもまた同じ方向性で一家を守ることになる
母が絵を描くために家を出たことも知らずにショックを受ける
フランセスもプロの絵描きになるために美術学校に行くつもりと話すと驚くマッケンジー夫妻
フランセスは長男ガブリエルに説得してほしいと頼む
10歳離れたセーラのことは、これまでまったく意識していなかったが
母は勉強ができる子だと評価していたため、将来の教育を心配し
マッケンジー牧師はグウェンと一緒に勉強を見てあげると言ってくれる
庭の日時計に刻まれる文字を読むガブリエル
「太陽に顔を向ければ 影は皆うしろへと去る」
*
スレイドの美術学校で、トンクス教授を師にして、毎日がデッサンの繰り返し
これまでの田舎生活と一変して、フランセスはホームシックになる
ガブリエル:
帰りたけりゃ、いつでも帰れる
君が帰った時の母はそれみたことかという顔をするだろうな
*
クリスマス休暇、大晦日の仮装舞踏会で、フランセスはセーラのアイデアでボーディケア女王に扮する
ガブリエルとダンスをして、一緒に年明けを迎える
■1911年
学校でキャサリン・ジャミソンと知り合い仲良くなる
父は貴族で、ジャミソンは短髪にしたりして周囲を驚かせ、自由を満喫している
グウェンは勉強が嫌いで、庭の手入れに没頭する
フランセスは厩を改造してアトリエにする
フランセスはケンブリッジにいるガブリエルを訪ねる
ガブリエル:名付け親から遺産をもらって、ある程度自由にできるんだ
フランセスは母が父と結婚したせいで絵が描けなくなった話をする
フランセス:私は絵を続けるわ
ガブリエル:君が結婚して、足元に子どもたちがまつわりつくようになったら、今の話を思い出させてあげるよ
■1912年
ガブリエルがふさぐと家族も手を出せないため
フランセスに散歩に連れ出してほしいとルーシーから頼まれて
2人でクォントックスに登る
それ以来、2人は遠出を楽しみ、ガブリエルも調子を取り戻す
ガブリエル:君はどうして絵を描くんだい?
フランセス:すっかり没頭しているのが本当の世界で、現実は存在しないみたいになるの
■1913年
デニス・ボンドからギャラリーに来てほしいと手紙が来る
彼もスレイドに通う学生だったが、才能がなく、絵の売買、展覧会を開く才能に目覚めたと話し
フランセスは将来性のある画家で、支えさせてほしいと頼み、毎月手当をくれるようになる
ガブリエルはドイツから戻り、みんなでクォントックス登山をする
セーラに海を見せるために納屋で一泊し、翌朝、セーラが1人で海岸に行ったのに激怒し
セーラの怯える顔を見て、二度としないと心に誓う
ガブリエルは特別研究員(フェローシップ)の資格をなんとかとる
クリスマスにフランセスはセーラのドレスを買う
ガブリエルはフランセスにエメラルドの指輪を差し出してプロポーズする
ガブリエル:君は僕を愛している 自分でも分かってるはずだ
フランセス:もちろんあなたを愛しているけど、結婚する理由にはならないわ
ガブリエルと口論になり、姉妹とアニーに相談しても共感してもらえず八方塞がりのフランセス
“彼が愛したのは、自分の想像の中だけに存在する女性でしかない”
ガブリエルはフランセスにクリスマスプレゼントとしてマチスの静物画をあげて感激させる
謎あてゲームではアントニーの意地悪ないたずらで
セーラが結婚の格好をしていたため睨みつけて泣かせてしまう
■1914年
サラエヴォ事件を発端として第一次世界大戦が勃発
男たちは競うようにして入隊し、前線に赴いた
鍛冶屋のビル・ロバーツ、庭師のウィリスも
まだ年齢に達していないアントニーも入隊して周囲は驚く
マッケンジーはセーラを学校に通わせるよう提案する
セーラも学校に行きたがっていたと知って寝耳に水のフランセス
だが、1日学校を見学して帰ると、きっぱり断って、それもまた驚く
■1915年
ビル・ロバーツとメアリが結婚
ビルの妹リジーは、数週間付き合った青年と婚約し、彼は前線に旅立った
フランセスはガブリエルが最後の休暇で戻る前にオルダーニーのジョン一家の所へ泊りに行く
アントニーは村から出た最初の戦死者となる
彼が最後の休暇を終えて、仮装大会用に兵士の制服を着た子どもみたいに
タクシーから手を振っていたのを思い出す
ジュリアは義勇医療部隊の看護婦になると言い出し、止めるが決心は固い
ルーシー:あたながたは何でも自分のしたいことができてどれほど運がいいか分かっていない
■1916年
ガブリエルは戦功十字章をもらって帰省する
クォントックス登山に誘われて、また結婚の話が出てキレるフランセス
ガブリエルは自分が死んだら、陸軍大尉未亡人に250ポンド支給されると言って
結婚を“強要”されたと感じて、またひどい口論となる
■1917年
復活祭 ガブリエルは脚を負傷
将校の療養は通常、軍の病院や保養所に限るが、ジェイムズ卿のはからいで帰省する
ガブリエル:歩けないなら、生きてたって仕方ないよ
デニスがヒルクレストを訪ねて、フランセスに個展を開くよう提案する
フランセスはジャミソンのアトリエに泊まり、2人で空襲の光を見て“幻想的”だと思う
フランセスの絵は好意的に批評され、たくさん売れた
デニス:必要なのは、これから収集を始めようとしている人たちです
デニスはフランセスがガブリエルと結婚するのではないかと心配し、絵に影響が出ないよう忠告する
ルーシーは一家で海に休暇に出かけた際、どれだけ物を寄付したか自慢し合っていて閉口したと話す
ガブリエルがフランスへ戻るつもりと話して、父と大ゲンカにもなった
ガブリエルはセーラが大人になっても残るものをプレゼントしたいと言ってネックレスを選ぶ
ビルが♪ラモナ を演奏し、2人はダンスする
ガブリエル:
もし、僕になにかあったら、ルーシーと親を助けてくれるね
気が変わったら、手紙でしらせてほしい
*
ジョフリーはすっかり神経をヤラれて帰省する
フランスでジュリアと過ごしたと聞いて驚くフランセス
世界がどれだけ変わっても、絵を描き続けているフランセスに感嘆するジョフリー
彼は死体にあふれた戦場の話をして、心配したフランセスはミルン医師に相談する
フランセス:ジョフリーは戦線復帰を許可されるべきではない 戦闘神経症に違いない
ミルン:勇気に欠けるからといって、義務を逃れていいということにはならん
(彼も戦場に行っていたら、違ってたよね 医師はいつも病気になった気持ちが分からないのが最大の難点だと思う
■1918年
フランセスも戦死したのがガブリエルでなくジョフリーでホッとする
“戦闘神経症の少年をまた戦場に送って、何が名誉だというのだろう?”
セーラはジョフリーの死のほうが堪えて、フランセスが散歩に連れ出して、徐々に回復する
作家になりたい夢を知り、ガブリエルを崇拝していることで共通点が見つかる
急な休戦になっても、ガブリエルは占領軍としてドイツに赴く
ジュリアが帰省するが、すっかり変わってしまっていた
ジュリア:私、もう描くつもりはないの
■1919年
ガブリエルとフランセスはまたクォントックス登山に出かける
ガブリエル:僕があっちへ戻る前に結婚するのはムリかな?
手紙のやりとりでガブリエルはまたしてもフランセスが結婚に同意したと思い込む
フランセスの気持ちは変わらないと分かるとアイルランドへ行くと決める
ガブリエル:
さっさと死んじまえば、君も後悔するだろう
2人で心から願えば、僕らは幸せになれるに決まってる
フランセス:私は十分に願っていないのね
*
ガブリエルは友人メレディス夫妻にプレゼントするためフランセスの絵を選ぶ
フランセスがガブリエルのために描いたヒルクレストの風景画はあげられないと断ると
絵の代金を支払い、フランセスの言い値が高くて驚く
(絵に理解を示しても、心底では、それほど評価してないのが分かるな
ガブリエルは1910年にフランセスが一家を守ると決心した時から結婚したかったのだと明かす
ガブリエル:
君はいつも仕事を口実にして、誰も侵入できない自分だけの小さな世界に逃げ込むことができた
人生には暗い側面もあるんだよ
ルーシー:
私はあなたが正しいと思う
ガブリエルは自分勝手で甘やかされているから
あんなにフランセスを嫌っていたマッケンジー夫人もガブリエルをイギリスに留めるために
結婚してほしいとフランセスに頼みに来た
フランセスは、昔、スレイドでバカにしていた画家が戦争絵画を描いたのを観て感動する
デニス:
戦争が終わって1年経ち、誰も過去を振り返りたがらない
今、買い手はずっと若くなり、見聞が広く、本当に関心を持っています
また個展を計画している
どんなにひどいスランプも抜け出せないことはあり得ない
■1920年
セーラはオックスフォード大学を受験し、奨学金をもらえることになり
フランセスはどっと肩の荷がおりた気持ちになる
まったく絵が描けなくて、ジュリアからスペインにでも行くようすすめられる
ルーシーはガブリエルが重傷だとしらせに来る
フランセスはすぐにアイルランドに駆けつける
“フランセスが泣いていたのはセーラのためだった
こんなに大事に護ってきたのに、幸せにしてやれなかったセーラのためだった”
*
病院で面会謝絶と聞いて自分を見失い、エリオット少佐と看護婦長によって寝かせられる
意識不明のガブリエルに付き添い、助かっても、また歩けるかどうか分からないと言われる
母の誕生日に手紙を口述してほしいというハドソン歩兵を手伝い
プレゼントに顔のデッサンを描いてあげると、たちまち病室に噂が知れ渡り、みんな描いて欲しいと頼む
婦長:あの人たちには面会人がない
ガブリエルの意識が戻り、やつれたフランセスをメレディス中佐夫婦が食事に誘ってくれる
棚には自分の絵が飾られていて、なぜかフランセスをジュリアと間違える
エリオット少佐と話しているうち、フランセスはガブリエルと結婚しようと決意する(!
ガブリエルなしでは生きていても仕方なく、仕事もその埋め合わせにはならなかった
(結局、こうなるほうが女性の読者の心をつかみやすいのかもしれないな
フランセス:私、あなたと結婚したいの
*
病院に来て初めて肖像画を描いたハドソン歩兵が亡くなる
フランセスは深い感謝と哀悼を捧げてガランとした病室を描く
ガブリエル:君は変わったんだね
*
2人はエリオット少佐と釣りに行く
エリオット少佐とジュリアが文通していると聞いて驚く
エリオット少佐:
人を見たら、シン・フェイン党と思うことです
ノランも交通事故に遭ったというが、あれは軍で使うクロスリーにぶつかった傷です
フランセスは裸で川で泳ぐ(!
ガブリエル:
エリオット少佐はボクがケンブリッジに戻るのは不可能じゃないという
世界中の時間はみんな僕らのものなんだ
■訳者あとがき
1つの出来事を複数の視点から書く手法は、時々使われるが
1人1人の少女の心の世界を語り、合わせ鏡のように対置することに成功したのは
この作品が初めてではないか(ほんと、そう思う!
絵画の変遷について
ラファエル前派
ウィアム・モリス→日本の白樺派にも影響
印象派:モネ、ドガ、ルノワール
後期印象派:セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ
1910年に開かれた後期印象派展で、イギリスの現代美術はこの年に始まったと言われる
フランセスの仲間も実在する名前
ネヴィンソン、ナッシュ、ゲルトラーの第一次世界大戦を描いた絵は実際に観ることができる