メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

シャーロック=ホームズ全集4 恐怖の谷 コナン=ドイル/著 偕成社

2021-05-01 15:05:07 | 
1985年初版 1989 9刷
内田庶/訳
市川英夫&プラスB/装丁
フランク・ワイルズ/挿絵


「ジュヴェナイル」カテゴリーに追加します












大きく2つの物語に分かれている
どちらも1冊の本にしてもいいほどの作品

最初の事件は途中からからくりが分かった
だいたい頭部がわからないほど損傷している死体というのは
本人じゃない可能性が高い

半分から後半は、炭鉱の話に変わり
そこにはホームズやワトソンも出てこないし
事件の回想であることも忘れるくらい
別世界が広がっている

最後にホームズが再び現れ
いつか対決することになる謎のモリアーティ教授といえば
一緒に崖から落ちて死んだ相手だと思い出して驚いた!



解説でこの炭鉱での物語が実話に基づいていると知って
アメリカにはネイティブアメリカンの大量虐殺の他にも
とんでもない「黒歴史」があると分かって
どちらが創作でどちらが現実なのかあやふやになる

日本で言ったら『仁義なき戦い』ばりの暴力団なんだけれども
表向きはまるで平和を謳う宗教団体のよう

さらにその上には表の顔はとても尊敬される人物でありながら
世界中に広がる組織を使って何でも意のままにできる人物がいるって
都市伝説に出てくる一族のようで怖ろしくなった

この殺人集団の町に住んでいたら
タイトル通り「恐怖の谷」そのものだけれども
それをこうして小説化して映画化すると
私たちはその登場人物につい惹き込まれてしまう

ダークヒーローを演じた役者さんが
スターになったり憧れの的になったり
人間の中の正義と悪に惹かれる
全く対照的な気持ちが存在することがとても不思議

もっと大きな視点から見れば
善も悪も同じコインの表と裏なのかもしれない






これでホームズシリーズはまだ2作目だけれども
事件そのものが面白いのはもちろん
ホームズという稀に見る天才探偵の
私生活や性格が少しずつ知れる喜びにハマってきている

これらの小説が全てワトソン氏によって書かれている回想メモで
小説化されているのをホームズも知っているという設定からもう面白い

だからホームズに関するちょっとしたクセなどは
ワトソン氏から見た描写であり
それが本人そのものとも限らない

このシリーズを書いたコナン・ドイルの
さらに稀有な人生にも興味が湧いてくる

世界中のミステリーファンからありとあらゆる検証をされて
たくさんの著書が出て、メディアで語られた人物

創作の人物の住所に未だにファンからの手紙が
たくさん寄せらるほど愛されるキャラクターが他にいるだろうか?


最初に借りた時は長編1冊だけのつもりが
長編の4冊全部読みたくなり

もしかしたら本書の巻末に載っている全集全14巻全部読んで
ホームズの誕生から劇的な最期まで見届けたくなってきた


【内容抜粋メモ】(ネタバレ注意

第一部 バールストンの悲劇





●警告
ホームズは手紙を前に考えこんでいる





差出人はポーロック これは偽名
これまでお金を送り、事件に関する情報を送ってくれていた
彼は有名な科学犯罪者モリアーティ教授とつながっていると推理するホームズ

手紙:
私はここから手を引こうと思います
あまりに危険だからです
あの人が私を疑い出した

“あの人”とはモリアーティ教授のこと
全世界の悪人を味方につけながら
世間では素晴らしい人物として通っている


ホームズは考え事をする時、強い香りのパイプに火をつける

手紙には暗号文がある
これとともに送られるはずだった本が届かないため推理を始める

ホームズ:たやすく手に入る本であること

ワトソン博士:聖書だ!
ホームズ:聖書はいろんな版が出ているから同じページを示すことが出来ない

「年鑑」のページにある言葉をつなげると
バールストン村に住むダグラスという金持ちの命に危険が迫っていることが分かる

そこにロンドン警視庁のマクドナルド警部が来て
まさにそのダグラスが無残に殺されたことを告げる


●ホームズの推理
ホームズはモリアーティ教授が危険人物であることを示唆する
信じない警部に説明する

教授の部屋には高額な有名画家の絵がある
だが教授の給料は年700ポンド


ホームズは教授に会ったことはないが
2、3度部屋に入ったことがある
そこに何も怪しい証拠がなかったことが逆に怪しいと言う

妻はなく、弟は片田舎の駅長
なのに教授には闇の世界で稼いだ莫大な収入がある

似た例としてジョナサン・ワイルドという大悪党を挙げる

ホームズ:
もっとも役に立つ勉強は、3か月家にこもって
毎日12時間、犯罪記録を読むのだ

モリアーティ教授は悪人に知恵と組織力を売り、15%の手数料をとっている
世の中のあらゆる悪者が鎖のように繋がっている
なのに法の網にかかることなく安全な生活を送っている


小切手を調べて、各国に数十種類の銀行と取引していると分かる
財産が表沙汰になるのを怖れている

今回の殺人には2つの動機が考えられる

1つは、悪の組織の鉄の掟にそむけば待ち受けるのは死
もう1つは、モリアーティ教授が悪事の1つとして企てた

バールストンへ急がねば!

ホームズ、警部、ワトソン博士はバールストンに向かう
道中、事件のあらましを話す

現地の警察官ホワイト・メースンからの手紙には
重大事件だからできればホームズを連れてきて欲しいとある

ジョン・ダグラスはショットガンで頭部を撃たれた


●バールストンの悲劇
バールストンは小さな村 はずれには森林地帯が広がる
領主館の周りには堀があり、跳ね橋を渡らなければ入れない
ダグラスは日が暮れると跳ね橋を上げることにしている

ダグラスは50歳くらい、体格もよく、村の人気者
カリフォルニアの金鉱でひと儲けした金持ち
前妻を亡くして、再婚し夫婦仲も良かった
アメリカでの生活は妻にも話さない

領主館にはダグラスの金鉱時代の親友セシル・バーカーもいた
彼も財産家で独身、体格が良く、45歳くらい

執事のエームズ、耳の遠いアレン夫人ほか雇い人たち





死体の第一発見者はバーカー
銃声を聞いて部屋に入ると頭部を吹き飛ばされた死体を見つけた

ショットガンは2つの引き金が針金で連結され
銃身が短く切ってあり、どこにでも隠すことが可能
後にアメリカの銃会社のものとホームズが解く

夫人も階段を降りて来たが死体を見せまいと部屋に返した
窓枠に血のしみのついた足跡がある

警察署にかけこんで報告

跳ね橋はいつも日没に上げるが
その日は夫人に客があり、上げたのは18時頃
犯人はその間に屋敷に入り、隠れていたと思われる

ダグラスは毎晩館中を見回す習慣があり
その日も犯人と出くわし、いきなり撃たれたのではと推測

死体のそばには犯人が置いたと思われる暗号めいた紙切れがあり
暖炉の上には金づちがあるが殴った跡はない

盗まれたものといえば、ダグラスの結婚指輪
その他の金の指輪はそのまま

警察の調べでカーテン下にも泥のついた足跡が見つかる

腕には〇の中に△のマークの焼き印がある


●暗闇
なぜこんな音のデカい凶器で殺したのかが謎

ホームズ:
こんなあやしげな事件に出くわしたのは初めてですよ と興奮
私が事件に手を出すのは、正義を守り、警察の仕事を助けるためだが
すっかり納得いくまでは私のやり方で捜査を進める

警察もその間分かったことはすべてホームズに情報提供すると約束する

堀の深さは子どもでも渡れるほど

マクドナルド:
自殺説は問題にならない
他殺とすると内部の者か外部のものか

殺してから、誰かが来る前に指輪を外して
メモを置き、窓から逃げるなんてできっこない!
これは外部の者の仕業だ と仮説を立てる


ホームズ:焼き印は痛かったに違いない
メースン:秘密結社が絡んでいるのでは?

ホームズはどうして泥だらけの男がまだ捕まらないのか
窓の足跡もかなり幅広いこと
そしてなにより片方しかない鉄アレイに興味を示す

近所に自転車が乗り捨てられていたという報告が入る
犯人が乗り捨てたに違いない


●登場人物
屋敷の人々の証言を聞いていく

エームズ:
ダグラス氏は前日、タンブリッジ・ウエルズまで買い物に行き
事件当日は落ち着きがなかった
自分は食器室にいて、ベルが鳴り、行くとバーカー氏が死体を見つけた後

アレン夫人:
耳が遠く、ドアが閉まる音は聞いた
バーカー氏に言われて、夫人を部屋に連れて見守っていた

バーカー:
ダグラスと会ったのはカリフォルニア
2人共同で金を出し合い、鉱区を買い上手くいっていたが
ダグラスは突然権利を売り、イギリスに渡った
自分も後で合流して一緒に住んでいた

前妻は私と知り合う前にチフスで死んだ

シカゴの炭坑で働いていた話を聞いたことがある
カリフォルニアを発って1週間しないうちに
5、6人の人相の悪い男らがダグラスの居所をしくこく聞いた
なにか執念深い団体がダグラスの命をしつこく狙っていたのではないか

ダグラスはいつもピストルをポケットにしのばせていたが
事件当夜は寝る用のガウン姿だった

警察はバーカーと夫人が親しかった話を聞くと怒り出す


夫人:
主人は火事を怖れて、毎晩屋敷を見回っていた

いつも主人の身に危険があると感じていたが
私に心配かけまいと話すことはなかった

でも一生妻に秘密を隠し通せる夫がおりましょうか?
間違いなく強力な敵がいるに違いないと思いました

「私は恐怖の谷にいたことがある
 まだそこから抜けきっていない」と話したことがある

実際住んでいた谷のことで、怪我でうなされた時
「マッギンティ支部長」とつぶやいていた


その後の調査でバーカーが当夜履いていた寝室用スリッパと
窓枠の足跡が一致した


●夜明けのあかり
ワトソンは宿に帰る途中散歩していると
夫人とバーカーが親し気に笑い合っているのを見て疑う

夫人らはバツが悪そうに、ホームズは独自に事件に関わっているのか
警察に協力しているのかと尋ねる

ワトソン:
あくまで独立して調べているが
警察も裏切らないよう考えている





2人の様子をホームズにも話す

ホームズ:
それより1個しかない鉄アレイが事件のカギだ
鉄アレイを1個しか使わないスポーツマンは体にどんな歪みをもたらすか

バーカーの証言は全部ウソだ
その背後の真実を探ろうじゃないか

犯人と被害者のやりとりは短いものだった
バーカーと夫人が企んだとも考えられる

実験をしたら、食器室では銃声も聞こえないが
アレイ夫人の部屋では聞こえると分かった
ドアの閉まる音は銃声だった

私がもし妻を持つなら、他の男の言うことを聞いて
夫の死体をほうっておくような真似はしないよう教育しておくよ

2人が仕組んだとして、結婚指輪を外すなんて広告をするだろうか

想像から出発して、真相を突き止めたことはいくつもある

ダグラスが恥ずべき秘密があって殺されたと想像してみよう
2人は脅されて、犯人のために跳ね橋を上げて逃がした

自分たちの立場がまずいと分かり
慌てて現場に足跡などをつけた
事件後30分間経って、ベルを鳴らした

私はあの書斎でひと晩過ごしてみる
君のこうもり傘を貸してくれ

ワトソン:ひどく頼りない武器だな(w


タンブリッジを調査すると、自転車の男は2日前から泊まっていて
ハーグレイブという名のアメリカ人と分かる

身元がバレないよう何も証拠を残していない
自転車で出たきり戻っていない
人相を聞くと、なぜかダグラスの特徴に似ている
たぶんそのカバンにショットガンを隠していたと思われる


●解決
警察総出で自転車の男を懸命に探してもなかなか見つからない話を聞き
無駄なエネルギーを費やさないために事件から手を引くよう忠告するホームズ

代わりに領主館についての古い案内書について説明する
革命の最中にはチャールズ一世が匿われたなどいろいろ書いてある

ホームズ:
異なる意見を互いにぶつけあい、関係ないと見える知識を生かすと
思いがけない興味がわくものだ


私は部屋で一時過ごし、鉄アレイを探した
君たちは好きなように1日を過ごし、暗くなる前に戻ってきてほしい
その間は捜査は一時中止だ

その前にバーカー氏に手紙を書いて欲しい
「堀を排水しなければならない」


その晩、みんなで月桂樹の影にかがみ、事が起きるのを待つ

ホームズ:
我々のような職業は、最後の場面を飾る芝居でもしないと
退屈でやりきれなくなる
いきなり犯人を名指すなんて芸のない劇の終わりはつまらないと思わないかい?


書斎にようやく灯りがともり、誰かが堀からなにか引き上げた
ホームズ:今だぞ!

バーカーは鉄アレイの重しのついた包みを持っていた
ホームズがワトソンの傘で一度引き上げ、沈め直したもの

包みにはアメリカ製の靴、ショットガンが入るポケットがついた外套
バーミッサという鉄鋼の産地で有名な町で買ったもの
恐怖の谷はバーミッサ谷ではないか

バーカーが追い詰められると、夫人が出てくる

ホームズ:
私はあなたに心から同情しますが
もう裁判所を信頼してすべて打ち明けることを強くすすめます


部屋の暗がりからダグラスが現れて、一同が驚く

ダグラス:
あなたの噂は伺っています
私は2日間、この穴倉に入って恐怖の谷の物語を書いていた

私は世間から非難されることはなにもやっていないが
これを読めば、とても異常な話だと分かる

私を憎む連中がいる
バーカーも妻も知らない

死体はタンブリッジから自転車で来た男テッド・ボールドウィン
彼を見かけてすぐに危険だと分かった

夜、書斎で気配を感じ、隠れていた男はショットガンを出した
奪い合い、男は顔にまともに弾を食らった

バーカーと妻がすぐ来たが、妻に見せるものではないから止めた
バーカーに短く説明しすぐに飲み込んでくれた

腕には私と同じ支部の焼き印があった
彼に私のガウンを着せたが
結婚指輪は一度も外したことがないから抜けなかった

悪魔のような連中は私が生きている限り追いかけるでしょうが
私が死んだと新聞で知ればそれで終わる


ホームズ:
イギリスの法律は大体公正です
それよりあなたの行く手にはもっと恐ろしい危険が待っているかもしれない
用心されたほうがいい




第二部 スコウラーズ

●その男
1875年冬 バーミッサ谷に向かう鉄道に乗った若いアイルランド人
ここは石炭や鉄鉱石などの地下資源で潤っている

乗客のほとんどは谷底での労働を終えて家に帰る労働者
海軍用のピストルを出していると、近くの労働者から声をかけられる

アイルランド人:
シカゴにいて、ここいらは初めて
友愛会に入っていて、どこにも支部があるから友だちはすぐに見つかるさ

スキャランは握手して合言葉を言う
「暗い夜はいやなもの」
「たしかに、旅をするよそものにはね」

アイルランド人の名はジョン・マックマード
シカゴでなにかやらかしていられなくなりここまで来た

スキャラン:
ここで困ったら、バーミッサ支部の支部長ジャック・マッギンティ親分に会うんだ

警官:
地獄みたいな所だな
地獄の悪魔もここいらの悪党よりマシだろうよ

ここの担当になったばかりの警官を
ぎゃふんといわせたことで名を上げるマックマード

支部の連中は「スコウラーズ」と呼ばれる殺し屋一味として有名だが
どんな話もマッギンティの耳に入ると忠告される


宿に行くと宿屋シャフターの美人娘エティにひと目惚れする


●支部長
マックマードはすぐに労働者仲間の人気者となり
簿記のバイトにありつく

すぐにエティにプロポーズするがもう婚約者がいると分かる

シャフターに呼ばれるマックマード
婚約者はテッディ・ボールドウィンというスコウラーズの一員で
シャフターらは殺し屋集団として忌み嫌っている

マックマードも友愛会の一員だと話すと
すぐ出て行って、ほかの下宿を探してくれと言われる

エティ:
この土地ではダメ 私を連れて逃げて!
あなたはまだなにも知らないのよ

犯罪をおかして裁判にかけられても
アリバイを証言する仲間がいて裁かれない

私はボールドウィンが大嫌い
あなたを信じてる

そこにボールドウィンが来る
腕の焼き印を見せて、跪いて謝れと言う

2人で決闘の話になり
先にマッギンティに話をするよう強くすすめるエティ

マッギンティは支部長でもあり
ごろつきの票のおかげで市会議員などの役目にもついていた

体格が良く、陽気な態度は一見正直者にも見える

マックマードは怖れることなく口をきき
酒場の奥の部屋に呼ばれる





ピストルを出してもひるまず、どこの支部かいろいろ聞かれて答えるが
シカゴを出た理由は話さない
代わりに新聞の切り抜きを見せる
ジョナス・ピントの射殺事件が載っている

偽札を作っていて、ピントも手伝っていたが
警察にバラすと言い、片付けてからこっちに来た

遅れてボールドウィンが来る
エティのことでもめていると話す

マッギンティ:
どちらも会員なら女の自由だ
今度の選挙で俺が落ちたら自分がなれると思ってるだろうが
俺が支部長でいるかぎり口出しはさせない

マックマードは支部への入会を認められる


●バーミッサ三百四十一支部
マックマードはシャフターの宿を出て、マクナマラ未亡人の家に移る
そこに贋金の鋳型を隠し、仲間にも分けてやる

簿記の仕事をしているのは、警察から常に目をつけられているため

マックマードは毎晩酒場に行き、仲間と交流を深める

鉱山警察のマービン隊長が来て
資本家に雇われた道具だと罵倒すると

ここに来る前、シカゴにいたからマックマードを知っている
証拠不十分だから捕まることはないと話す

それが仲間内に広まり、マックマードの人気はさらに高まる


土曜の夜、改めて支部に紹介されたマックマード
上部は高齢だが、その他は20代の若者で
命令されれば何でもやる連中

マックマードは目隠しをされて、合言葉を交わし
腕に焼き印を押されるが痛みに耐えたため
こんな奴は初めてだとまた賞賛される

マッギンティ:誓いにそむけば、ただちに死んでもらう





正式に入会が認められた後、会議が始まる
別の支部ウインドルから炭坑主を片付けるよう指示が来て
すぐ行くよう命令がくだる

マックマード:人手がいるなら喜んで働きますよ

会員のジム・カーナウェイが殺されたため
妻の生活費を工面することも話される

小心のモリスは、小さな業者を次々と追い出せば
鉄道や製鉄などの大会社が出てきて
法廷に持ち込めば我々が危なくなると話すが逆に脅される

その後の宴会でマックマードは素晴らしいテナーで歌い
♪メリーよ、私は階段に腰かけている などに感動する仲間たち


その後、友愛会を叩くヘラルド新聞のスタンガー記者を片付ける話が出る

記事:
この地方には犯罪者の集団がいる
ヨーロッパの恐怖政治から逃れた人々が
恐怖と無法を許してよいだろうか
東洋の小さな君主国がそんな状態と聞いただけでも恐怖を覚えるのに(日本のこと?

モリス:
我々はやりすぎた
市民は団結してはむかうでしょう
いざとなれば私刑(リンチ)も考えられる

マッギンティ:
警察の半分はこっちで月給を払ってる
裁判でも一度も負けたことはない



ボールドウィンらが向かうことになり
マックマードは入口で見張りを言われる

スタンガー老人を棒で殴り殺しそうになるのを止めるマックマード
マックマード:マッギンティは殺すなという命令だった


●恐怖の谷
翌日、ヘラルド社が暴漢に襲われた記事が載る
何人かは顔を見られた

マックマードはモリスに町の外れの公園に呼ばれる

モリス:2人の自由な市民が考えを話し合えないなんておかしいと思わないか

マックマード:これは2つの階級の戦いだ

モリス:
私がフィラデルフィアで入会した時
助け合いクラブだと思っていた

女房と3人の子どもとここに来て無理やり支部に入れられた
気づけば、命令に従い、罪をおかしてしまった

会から抜ければ殺される
家族もどうなるか分からない! とすすり泣く

ある一家に押し入り、父親を殺した
子どもの泣き叫ぶ声がした

次は私の家で父親が殺されて泣き叫ぶのは
息子のフレッドになるだろう

私はカソリック信者だが、神父はスコウラーズと聞いたら
懺悔を聞いてもくれない 破門てわけだ

ここは恐怖の谷なんだ

マックマード:1日でも早く店の品を売って出て行くことだ


その日の午後、マッギンティがマックマードの宿に来る

マッギンティ:
モリスと何を話した?
あいつとは付き合わないほうがいい
近く見せしめにする
どんなことも俺の耳に入る

そこに3人の警官が入る 1人はマービン隊長
スタンガー事件でマックマードを疑い手錠をかける

贋金の鋳型は床下に隠して見つからない

マックマードは雑居房に入れられたが
仲間がアリバイを証言し
裁判所では証拠不十分となる



●最悪の日
逮捕され、釈放されると、マックマードの仲間内での評判はさらに高まる
「きれいにかたづける仕事はあいつがいい」と上部にも一目置かれる

エティの父はマックマードに娘を会わせず家にも入れないが
エティはマックマードを愛していた
悪事に染まることはしないでくれと必死に頼むが

マックマード:誓いを破ることも、この土地から出ていくことも出来ない

エティ:父の貯めたお金でNYかどこかに逃げましょう

マックマード:
支部の手はどこまでも伸びている
だが、1年以内にはこの谷を出る それまで待って欲しい





マッギンティですら知らないことがたくさんあり
支部の上に郡委員長が取り仕切り
マッギンティさえ恐れていると分かる


ある日、支部から命令があり、マックマードとスキャランの宿に
他の支部の有能な殺し屋2人を泊めることになった

2人は殺し屋の仕事を見ようと後をつけて
クロウ・ヒルという平和な炭坑に来る

労働者に紛れ、所長の腹を撃ち
助けようとした坑夫の顔面も撃って逃げた

その後、2人の人相の証言は誰からも出なかった


組合では盛んな宴会が開かれた
ボールドウィンはこれまでにない大歓迎を受ける

殺人は常に劇のような性格を持つ

人気の高い鉱山主ウィリアム・ヘイルズを殺すために
3人送るようバーミッサからも要求する
理由は、ひどい酒飲みと怠け者を首にしたら2人とも会員だったため


マッギンティはマックマードに職工長のウィルコックスの殺人を命令する
理由はジム・カーナウェイを殺したため
妻と子どもが3人いるが一緒に殺せと言う

マックマードは2人の仲間とともに玄関に行き
ダイナマイトを仕掛けて爆破したが
一家は警戒して前日に警察の目の届く場所に逃げた後だった

マックマードは1人で数週間後に一家を射殺して報道される


■危機
恐怖の支配は頂点に達し
市民は圧政者に団結して立ち向かおうとしていた

モリス:
信頼して話せるのは君だけだ

ピンカートン探偵社が我々をつけ狙っている
知人が電報局に勤めていてこんな手紙が来た

手紙:
5つの大会社と2つの鉄道会社が真剣に取り組み始めた
ピンカートン探偵社の腕利きバーディ・エドワーズが乗り出す


マックマード:
向こうから来る前に片付けよう
自己防衛は人殺しじゃない

マックマードは下宿を出る前に証拠になりそうなものをすべて処分する
結婚するまで親切な家に預かってもらうようエティを頼み
合図したらなにもかも捨てて駅で待っててくれと伝える


その後、組合に行き、緊急動議を開く

マックマード:
この部屋にいる者を残らず重罪犯としてブタ箱にぶちこむ証拠を集めている

俺は奴の顔を知っている
奴は資本家の莫大な金を後ろ盾にしている

支部に秘密委員会を作るよう提案します


上部の7人だけで会議を始める
彼らは肉屋がヒツジを殺すように平気で人殺しをする連中だった

マックマード:
奴はスティーブ・ウィルスンと名乗って泊まっています
俺は明日電報局員から住所を聞きだし
支部の秘密を全部売りたいともちかける
夜10時に来れば見せてやると言えば間違いなく来る
7人全員で俺の所に来てください


■バーディ・エドワーズの罠
7人は大きい部屋にいて
マックマードが書類を取りに行くと部屋を出て
バーディをみんなでおさえる計画

当日の夜、言った通りに部屋にバーディを入れる

マックマード:
バーディ・エドワーズはここにいる
俺がバーディ・エドワーズだ!






すべての窓から銃身が突き出され
そこにはマービン隊長もいる

全員、何が起きたか分からないまま
武装した40人の警官に武器を取り上げられる

マックマード:
次に顔を合わせるのは法廷で証人に立つ時だろう
俺のことを知っていたのはマービン隊長と依頼主だけだ
他にも60人ほどが今夜のうちにブタ箱行きになるはずだ

シカゴで会員になった時は良い団体と分かり信じなかった
贋金も人殺しもウソだ

信用を得るために悪事を提案したが
どれも防ぐ自信があったからだ

この仕事のために3か月もかかってしまった

俺の正体を明かしそうな手紙が町に来て
ただちに行動をおこした


翌日朝早く、エティとマックマードは列車に乗り
10日後結婚した


細かい点まで知り尽くした男の陳述は
一味の弁護士のこじつけにも揺らがなかった

マッギンティと主な部下8人は泣き喚きながら絞首台で刑を受けた
50人以上が懲役刑を受けた

ボールドウィン他数人は絞首刑を免れ
10年間隔離された後、再び自由の身になった


彼らはエドワーズを血祭にあげて復讐しようと誓い合った

エドワーズは名前を変えてカリフォルニアに移り
エティが亡くなり、どこに行っても何度も殺されかけ
バーカーとひと財産作り、イギリスに逃れて再婚した
ジョン・ダグラスである


エピローグ
ダグラスは正当防衛が認められて無罪

ホームズはイギリスにいる限り安全ではないと手紙を書いたが
2か月後、差出人のない奇妙な手紙が来る

「おやおや、ホームズ君、おやおや!」

バーカーが来て、3週間前、ダグラス夫妻がアフリカに旅立ち
ジャックが暴風のため甲板から落ちて死んだと告げる

ホームズ:
これはその道の達人が手を下した

1人の男をこの世から消すために
偉大な頭脳と大がかりな組織が全力をあげたのです

(今でもありそうな暗殺だな

あの事件を最初に知らせたのは、その男の部下だった
殺し屋が失敗したのを知ると、自分が乗り出して筆さばきを見せたのです

彼を倒せる者がいないとは言いません
しかし、それには時を貸していただかねば!





<シャーロック・ホームズを推理する 各務三郎>
優れた文芸作品は多くの研究家によって
作品が生まれるきっかけが調査される

1906年、NYの湖で妊婦の死体が発見され
恋人がボートを転覆させたと分かり電気椅子にかけられた

これを基にして『アメリカの悲劇』が生まれ
後に『陽のあたる場所』として映画化されてヒットした

世の中は金次第だが、貧しくても才能、チャンス、努力があれば
富と名声が得られる、それが移民で成立するアメリカの夢という神話


シオドア・ドライサーは、それが夢にすぎず
アメリカは弱肉強食の国だと資本主義経済体制を批判した


『ジャッカルの日』は、ドゴール大統領暗殺を描いた作品

1981年の『スナップ・ショット』はスパイ小説
国際政治の舞台裏は謎に包まれているが
読者は真相を知りたがるものです


『バスカビル家の犬』もダートムーアの伝説から生まれた

イギリスの推理作家マイケル・ハリスンは
ホームズものの研究家として有名で
これまでの定説「ホームズはベル博士を元にした」説にくさびを打ち込んだ

(ここの説明でこれから読むと思われる『緋色の研究』が出て来て
 ネタバレになるため読まずに飛ばした

ホームズのモデルではないかと思われる人物がセント・リューク事件に登場している

「私は私立探偵、私立顧問探偵です
 だから、名誉にかけて、依頼人の秘密は守らなければなりません」


ドイルの創作メモによると
ホームズはシェリンフォード・ホームズ
ワトソンの名はオーモンド・サッカーとある
(本名は全然違うんだ/驚

その名の由来を研究家はこう解く

ドイツ語が堪能なドイルは、シェーラーが床屋だと知っていた
英語ではシアラー、俗語ではシァロックス→シャーロック・ホームズとなった
だが無名の探偵が原型より、有名な外科教授がモデルのほうがいいと考えた
(研究家らも謎解きして楽しんでいるんだな





「実録『恐怖の谷』」
(『実録』シリーズで暴力団員のボスの話も読んだことがある

アメリカの労働運動の歴史は
まるで国内戦争のような血生臭い事件の連続とも言える


ピンカートン探偵社は世界的に有名(実在するんだ/驚

ペンシルベニア州の炭坑地区で猛威をふるった秘密結社モリー・マガイア社
潜入したピンカートン探偵社のジェームズ・マクパーランド探偵は
3年にわたり証拠を集めて、一味の幹部を告訴し
20人以上が死刑になった

モリー・マガイアはもとは修道会の支配にあったが
アメリカでは炭坑地区の労働争議後に出来て
組合の勢力争いから暴力で町を支配した

殺人事件が日常になり
反抗すると「棺桶の手紙」と呼ばれる脅迫状が舞い込み
ドクロの印がついた脅迫状が怖れられていた





7年間で556人が殺され、1665人が不具にされた記録があるが
警察も恐ろしくて手が出せなかった

ピンカートン探偵社は鉱山会社の依頼で
ジェームズ・マクパーランドを派遣した





一味に加わり、情報活動をし、石炭の職に就き
毎日、依頼主に報告を送った

殺しの計画に組み込まれ、助手を酔わせてターゲットを助けたが
後日、ターゲットは一味に殺されてしまった

郵便局に手紙を受け取りに行き、正体がバレそうになり
うまく手紙を奪って、79歳まで生きることができた




(こうして写真だけ見ると普通の市民に見えるのがまた怖い


マガイアは交換殺人で決定的証拠をつかませなかった

だが、マクパーランドにより、殺し屋は次々と起訴され
マガイアは潰された



<作品解説>
本作はホームズシリーズの最後の長編で高く評価されている


(つまり本作はダブルスパイものだったんだな




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