星人側からの技術移転のほかに各分野での勧告が随時行われることになっている。勿論無償であり、善意による勧告である、強制力もない。外資系コンサルトM社のような目の玉の飛び出るような料金を請求されることは全くない。勧告を採用するか否かは日本側の判断に任されている。
勧告は日本側の要請による場合もあり、星人側からの提案の場合もある。勧告の分野は自然科学分野のみではなく、政治、経済、文化、社会制度など広い分野にわたっている。いってみれば従来の有識者による諮問会議のようなところがある。
宇宙船団の中には民政局という部署があり、ここが勧告の作成にあたる。民政局は古生物学や古社会学などの若手の気鋭研究者の集団であり、日本の政治、経済、社会のあらゆる分野の研究を実施していた。
条約締結後すでに百をこえる勧告がなされており、そのうちのいくつかは日本政府によって実施されている。実施されずに検討事項となっているものもある。その中でもっとも議論されたものが家族制度の廃止であった。これは文化の根幹をなすものであり、手を付けられなかったが、のちに述べるヒョンなことから一気に実施されることになった(AD3000年ころ、後述)。
船団はほぼ十年に一度の割合で地球の上空に飛来して数か月から一年弱上空に滞留する。この間、日星間の懸案事項が協議されて、必要に応じて勧告が出されるのである。
また、日本との条約締結後国連において日本との条約を範とした条約案を採択し、世界各国と同様の条約を次々と結んだが、その数は数十か国に及んでいる。ただし、東側諸国や独裁国家はほとんどこの条約を拒否している。星人側は彼らに対して条約締結を強制ぜず、『拒むものは追わず』の立場をとっていた。