穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ポジション リポート

2022-11-08 06:17:18 | 書評

  箱男130ページ、密会6ページ
この二作はペアらしい。両方の作品に解説を書いている平岡篤頼氏が書いている。箱男は盗撮もので密会は盗聴ものだそうである。
 両作の解説と箱男を半分ほど読んだところでの感想は「叙述方法についての実験作」だな、ということ。いずれも作中「ノート」「報告」を多用することである。これは他人の顔にも採用されているが、他人の顔では物語のリニアな流れを読者がフォローすることが自然に出来る。
 箱男ではストーリーの流れをリニアに追おうとすると読者は混乱する。再読三読して自分で物語を再構成するしかない。
 実験的技法を評価鑑賞するだけなら良いだろうが、それ以上内容、テーマ、文章を玩味することは出来ない。それが前衛的な作品なのだ、イイノダということらしい。それは平岡氏も認めている。文章を味読するのは無駄である。意味がない。