リーグ戦のアウェイ鳥取戦を3-0で制してから中9日。試合無しの第10節を経て、ウイークデーの水曜日に挑む、天皇杯2回戦。
浦和駒場スタジアムにて、浦和レッズと対戦します。
言わずと知れたビッグクラブ・浦和レッドダイヤモンズ。日本のサッカーシーンにおいて、その名を知らぬ者などいないでしょう。
JリーグのみならずACLすら制覇したことのある、名門中の名門。
「カターレ富山?ああ・・・なんか、そんなチームもあったような気がするね」というのが、浦和サポーターの正直なところではないかと。
かつて所属していた西部がいる、ということで僅かな接点が見出せるかもしれませんが、チームの印象など皆無と言っていいのではないかと。
Jリーグのオリジナル10のひとつという歴史と伝統を誇るクラブに対し、2009年のJ参戦から右肩下がり、J2からJ3に陥落、そこでくすぶり続けているような底辺クラブなんぞ、月とスッポン、クラブの格では、まさに天と地の差かと。
カテゴリ違いのJ1クラブとの公式戦の機会というものは、天皇杯でしか無いなかにあって。
初めての対戦となる、浦和レッズ。
過去、「公式戦の対戦は天皇杯でだけというJ1クラブ」と言えば、2009年の川崎、2011年、2016年の鹿島がありますが。
いずれも、同カテゴリでは有り得ない精度のプレーに戦慄させられたのが思い出されます。
今回の浦和戦も、また同じではないかと。
浦和にとっても、過去に1度も対戦したことのない富山は未知の相手。
データと実戦とでは違う、ということで、まったくのノーチャンスではなく、あるいは隙もある可能性も。
しかし。
勝てるかどうかは、また別の話。
たとえ善戦できたとしても、それが最終的な勝利につながるかどうかは、別であって。
正直言って、勝てる見込みはとても低いと言わざるを得ない相手。
しかし、それでも。
挑戦なくして勝利なし。
通用するかしないかは、やってみてからの話であって。やる前から負けたような気になっているのでは、勝てるものも勝てません。
もちろん、勝つ。
闘志を力に変え、挑みかからねば。
101回を数える天皇杯にあって、前身である三菱重工時代を含めて優勝7回を誇る浦和レッズ。
近いところでは3年前、2018年度に優勝しています。
連覇をかけた2019年は、JFLのHonda FCにジャイアントキリングをくらうかたちで敗退。昨年2020年は新型コロナの影響でレギュレーションが大幅変更、リーグ戦上位クラブのみの参戦となったことを受けて、不出場。3年ぶりの栄冠を目指し、この緒戦に挑むこととなります。
リーグ戦においては、開幕当初こそもたついたものの、次第に真価を発揮。主力級のみならず、ルヴァンカップに出場するような若手にまで好調ぶりは波及しているようで。
日本サッカー3大タイトルがひとつ・天皇杯優勝をひっさげ、ACLの舞台へと返り咲くために。
そして、前々回大会でアップセットを許してしまった汚名返上をかけて。
日程的にルヴァンカッププレーオフステージ・神戸戦の谷間となるこの試合。
となると、あくまで怪我などのリスクを避けることは前提ながらも、調整も兼ねてリーグ戦の主力を起用してくる可能性も大いにあり。
ガチなメンバーで富山の挑戦を返り討ち、となることも、充分に有り得るでしょう。
10年前の2011年、天皇杯で鹿島と対戦したときのこと。そのメンバーを見て、「これってこのあいだナビスコカップを優勝したときのメンバーじゃん」と青くなった、ということがありましたが。
あるいは、それに近いことが起こるやもしれません。
このところ好調なリーグ戦主力が、格下相手とか関係なくそのまま出てくる、とか。
今回で天皇杯出場12回目となるカターレ富山。
しかし、これまで上位カテゴリに勝った経験は、町田を破って3回戦に進出した前々回大会の1度だけ。
町田を過小評価するつもりはないものの、それでも。J3優勝、J2復帰を目指さねばならないカターレにあっては、翌年度は同カテゴリとせねばならない相手に勝つことはジャイアントキリングには当たらない、と言わざるを得ないところかと。
それでは、ジャイアントキリングとはなんぞや?と言うならば。
J3クラブのカターレにあっては、打倒J1クラブ。それで間違いないでしょう。
それが、天皇杯制覇を具体的目標として掲げるビッグクラブ・浦和であれば、言わずもがな。
相手にとって不足なしどころか、充分すぎると言っていいでしょう。
もちろん、言うは易く行うは難し。
本気で優勝を狙う浦和に、たとえ善戦できたとしても。
それが勝利につながる可能性は、正直言って非常に低いと言わざるを得ません。
振り返れば、前々回大会の3回戦、仙台戦。
仙台にとっては10年ぶりの公式戦における富山戦であり、富山県総合運動公園陸上競技場での試合。
そこに想定外の富山の頑張りが加わり、なかなか決め手を欠く展開のままに試合は終盤へ。
ただ・・・懸念していた通りの展開となってしまいました。
「たとえ善戦出来ていたとしても、個の力で無理やり試合を決められてしまうかも」と思っていたところ、その通りに。0-1で敗れ、3回戦敗退となったのでした。
今回にしても。
善戦は、できるかもしれません。「お、J3首位だけあって少しはやるようだな」と思わせることはできるかもしれません。
それでも。
勝つためには、善戦止まりではダメで。
そこを、突破するだけの力の発露。それが、不可欠です。
そんな力を、発揮できるかどうか。
それは、この天皇杯だけではない。これ以後のリーグ戦で、それこそ優勝を争うにあたって、必ずや求められるであろう力。
それを、負けたら終わりの一発勝負という場で、しっかりと発現できるかどうかが問われます。
得点しなければ勝てないということは真理ながらも、逆もまた真なり。
失点していては、負けてしまう。
しなくてもいい失点をせず、いかにしなければならない得点を挙げるか。
そのためにも、相手に得点を許さず守り切る堅守は不可欠。
期待したいのは、西部。
今年で40歳というベテランの彼ですが、プロキャリアの原点である浦和との対戦。期するものがあることは間違いないでしょう。
浦和でプロ生活をスタートさせ、移籍ののち、清水の顔と言うべき選手とまでなった西部。
愛着ある清水で現役を引退する選択肢もあったなかで、そうはしなかった。
完全燃焼を期して、J3クラブであるカターレに移籍を決意。
それは同時に、天皇杯以外では日本サッカー最高峰であるJ1クラブを相手取って戦う道を閉ざす、ということでもありました。
そう、天皇杯以外では。
しかして、実現した天皇杯でのJ1クラブとの対戦。その相手が古巣・浦和とは・・・なんというか、数奇な運命だな、と。
所属するクラブのカテゴリを落とすことにはなった。
けれども、決して燃え尽きたわけではない。むしろ、不完全燃焼のまま引退するを良しとせず、完全燃焼を遂げるための移籍。
その覚悟をプレーでもって示す、千載一遇の舞台とも言えるかと。
だったらもう、やらない理由がない。
勝ってジャイアントキリングを成し遂げねばならない理由しかない。
キャプテンの闘志の火が、カターレの力を存分に引き出し、難敵撃破を成し遂げる炎となることを信じて。
正直言って、勝ち目は薄いと言わざるを得ない対戦でしょう。天皇杯優勝を狙うJ1の浦和を相手に負けても恥じゃない、負けて元々の話。それよりも、中3日で迎えることとなるリーグ戦の首位攻防戦・熊本戦のほうに集中すべきだーーーそんな意見がでることも、無理からぬことかとも思います。
しかし。
だからと言って、どうせ勝てないなら無理する必要はないと、あっさり負けてもいいのか?
良いわけがない。
先の県選手権決勝・富山新庄クラブ戦で5-0勝利。そして天皇杯1回戦FC北陸戦を8-0勝利。
いずれも大差がついた試合でしたが、「勝ってあたりまえの相手に勝ったに過ぎず、特に得るものが無かった」などという試合では、決してなかったはず。
その2試合で得た手応えをリーグ戦にもしっかりとフィードバックできたからこそ、沼津戦、鳥取戦で3-0の快勝につながった。
リーグ戦に影響しない捨て試合などではなく、真摯に向き合ったからこそ身についた力と結果。
それは、この浦和との2回戦でも変わらないでしょう。
敵わない相手だから、負けて当然の強豪だからと戦意喪失するなど、とんでもない。
ここで全身全霊で挑みかかかることこそが、次へとつながる最善手。ここで半端な試合をしてしまったのであれば、きっと次の熊本戦でも勝てないことでしょう。
むしろ、逆だ。
ジャイアントキリングを成し遂げた暁には、「いかにJ3と言っても、その首位のクラブに負けたなら仕方ない」と言わせるくらいでなければ!
ただでさえ1クラブあたり全28試合と、例年になく少ない今季J3リーグ戦。
そんななかで、真剣勝負の公式戦が増える。それは、僥倖というものでしょう。
ならば、それを十二分に活かさねば!
確かに、浦和も天皇杯優勝を狙っているかもしれない。
けれど、カターレだって困難に打ち克ってJ3優勝を目指すという強固な意志は、揺るがないのだから。
それにカップ戦とはいえ立ちはだかるならば、打ち砕くのみ!
勝って、今季カターレの力を見せつけるのみ!!!
得難いチャンスを、力に変えろ!!!
カターレの歴史に刻む勝利を!!!
勝たれ!!!富山!!!!!