もともと人前で話すのはあまり好きな方ではありませんが、
紆余曲折を経て国会議員になり、訓練はしているものの、
やっぱり地が出てしまいます。
10分間の本会議場での代表質問の原稿を転載いたします。
ご一読いただければ、さいわいです。
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みんなの党の山内康一です。みんなの党を代表して質問します。
安倍政権の経済政策の3本柱、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「成長戦略」のうち、「大胆な金融緩和」は、みんなの党の主張に近く、ぜひ実行していただきたいと思います。
まず日銀総裁人事に関し質問します。安倍総理は、わが党の渡辺代表の質問に対し、次期日銀総裁として「金融政策に関する私の考え方に理解をいただき、確固たる決意と能力でこの課題に取り組んでいく方」とお答えになりました。安倍総理のおっしゃる「私の考え方」について詳しくお聞かせください(質問1:安倍総理)。そして、是非とも財務省の圧力などには屈せず、安倍総理ご自身の意志を貫き、適切な方を選んでいただくようお願い申し上げます。
他方、残りの2本の柱、「機動的な財政政策」と「成長戦略」の中身を見ると、公共事業や補助金のバラマキ、官民ファンドという名の役所の権益拡大が含まれ、賛同できない部分も多くあります。
第一に、防災や減災の美名のもとに、不要不急の旧来型の公共事業も紛れ込んだ大盤振る舞いになっている点は賛同できません。公共事業による需要増加策は一時的な効果しかありません。非効率な公共事業でムダなインフラを増やせば、後々の維持更新投資がさらに増え、将来世代の負担を増やします。建設費で将来世代にツケを回し、維持管理・更新投資でさらに将来世代の負担を重くする、そんな公共事業のバラマキはもうやめるべきです。公共事業に関しては、「新規投資は後回しにして、震災復興と維持補修・更新投資を優先する」という方向性を明確にすべきではないでしょうか(質問2:安倍総理)。
ムダな公共事業を生んできたのは、政治家の利益誘導と役所のお手盛りのB/C計算です。選挙対策のバラマキという批判を避けるために、新規に建設する案件については、予測される費用対効果を第三者機関が検証する仕組みが必要ではないでしょうか(質問3:安倍総理)。
第二に、政府による市場への過剰な介入も賛同できません。各省庁の官民ファンドと呼ばれる基金に補正予算で多額の予算がついていますが、全体像が見えにくく、不透明な印象を受けます。今回の補正予算では、全省庁でいったい何件の官民ファンドが対象となり、総額でどれだけの予算が投入されるのでしょうか(質問4:財務大臣)。
今回の補正予算では、長期資金を供給する財政融資と長期リスクマネーを供給する産業投資を行うための8,087億円の財政投融資計画の追加が含まれます。リスクマネーを供給して企業に投資する場合、失敗して損失が出れば税金のムダ遣いです。成功してリターンがあった場合も、民業圧迫の批判は避けられず、市場を歪めます。市場は失敗することもあり、ときには政府の介入も必要ですが、これだけ大規模な財政投融資や官民ファンドへの多額の予算投入は過剰介入ではないでしょうか(質問5:財務大臣)。
官民ファンドの背景には、霞が関の官僚の方が、民間の企業家よりも優れているという、官尊民卑的な隠れた前提があります。エルピーダメモリの経営破たんのような失敗もありました。にも関わらず、官民ファンドに多額の税金を投入するのはなぜですか(質問6:財務大臣)。
麻生政権時代にもさまざまな基金に予算が投入されました。そのときの基金の中には、あまり活用されず、緊急経済対策として効果がなかったと言われているものもあります。麻生財務大臣は、麻生政権時の各種基金の実績をどう評価されますか。どのような反省や教訓を得られたのでしょうか(質問7:財務大臣)。
官民ファンドへの天下りや現役出向をさせない制限を設けるのでしょうか。それとも天下りや現役出向を許すのでしょうか(質問8:安倍総理)。また、官民ファンドが失敗したときの責任は誰がとるのでしょうか。責任の所在をどのように明確化するのでしょうか。官民ファンドを監視する仕組みはどうするのでしょうか(質問9:安倍総理)。
今回、補正予算と来年度予算をあわせて「15か月予算」と呼ばれています。しかし、もう2月です。今後の衆参予算委員会での審議日程を考えれば、補正予算が成立するのは2月下旬になるでしょう。実際には「15か月予算」というよりも、2月下旬か3月からスタートする「13か月予算」と呼ぶ方が実態に近いです。つまりわずか1か月ちょっとしかない24年度中に10兆円を使うということです。1か月で10兆円という乱暴な予算執行をすれば、税金のムダ遣いが生じやすくなり、事業の執行が雑になります。こんな窮屈な補正予算を組むぐらいなら25年度本予算に入れた方がよいものも多いでしょう。本当は「13か月予算」なのに、「15か月予算」という誤解を招く表現で、粉飾気味の補正予算を組むのは、財政規律を緩めることになり、邪道ではないでしょうか。25年度予算を小さく見せるために、ムリな補正予算になってはいないでしょうか(質問10:財務大臣)。
甘利経済再生大臣は成長戦略の柱のひとつを「新ターゲティングポリシー」とし、むかしの通産省的な発想に基づく産業政策を重視されています。政府が有望な産業の育成に関わり、国費で特定の産業や企業を育成するというのは、発展途上国的な発想、あるいは、社会主義計画経済的発想です。終戦直後や明治時代ならわかりますが、21世紀の日本でこのようなターゲティングポリシーを復活させる理由がわかりません。そもそも官僚が、民間企業を指導監督し、利益を出せるのでしょうか。企業経営が得意な官僚がいたら、役所をやめて民間で起業したらよいと思います。企業経営の経験のない官僚の方が、民間の経営者よりも良い判断ができるという考えは、傲慢な官尊民卑の発想です。かつて流行した第三セクターでは、役所の無責任体質と経験不足により、失敗した例が大半でした。今回の新ターゲティングポリシーも、同じように官の肥大化を招き、税金のムダ遣いを生むだけです。時代錯誤の政策はやめるべきではないでしょうか(質問11:安倍総理)。ターゲティングポリシーではなく、規制改革やTPP参加こそ成長戦略の柱にすべきです。安倍総理には、官僚機構や党内の抵抗勢力と戦い、思い切って規制改革やTPP参加を実現していただきたいと思います。
安倍政権の予算や経済政策を見ると、自民党らしい公共事業や補助金のバラマキという古い利益誘導が復活しています。同時に、官民ファンドや新ターゲティングポリシー、あるいは、消費税増税時に導入される軽減税率といった新しい利益誘導の道具が出てきています。どの品目を軽減税率の対象にするかという線引きは、族議員や役所にとって新たな利権になります。官民ファンド、新ターゲティングポリシー、軽減税率と、まさに利益誘導政治のイノベーションです。
今回の予算は、古い利益誘導と新しい私益誘導のハイブリッドです。新旧の利益誘導は、特定の地域や産業だけが利益を受け、役所の裁量を拡大するという点で共通しています。国民全体の犠牲のもとに、一部の人たちだけが利益を受ける政治では、失われた20年から脱却できません。利益誘導政治を続ければ、どれだけ増税しても足りません。
被災地の復興や老朽化したインフラの更新を除き、大型公共事業は抑制すべきです。民間主導の経済成長と不況期の経済的弱者対策には、公共事業や補助金のバラマキよりも、投資減税や法人税減税、給付を中心とした景気対策が有効です。
公共事業のバラマキは、一時的な効果しか期待できず、地方の活性化につながらないことは、90年代の経験から明らかです。日ごろ厳しい金庫番の財務省が大盤振る舞いを許したのは、今年4~6月の経済成長率を押し上げたいという思惑でしょう。その時期の経済成長率を高くすることが、消費税率引き上げの前提となっているから、財務省もバラマキ予算を認めたのでしょう。
しかし、人口減少の日本でバラマキは許されません。バラマキを許容して「大きな政府」へ突き進めば、借金だけが増え、不健全な経済構造は手つかずのままです。官民ファンドや新ターゲティングポリシーのような官尊民卑的、社会主義的な政策には、とても賛同できません。安倍総理は保守主義者だと言われています。一般的に、経済における保守主義とは、市場の機能を重視し、政府の役割を最小化する考え方です。国民と企業の自助努力と創意工夫を信頼し、政府が余計な介入をしないことが、経済の保守主義です。国家の介入の多い官僚統制的な経済政策は、むしろ左翼政権のやることです。安倍政権の経済政策は、保守主義の王道から外れるのではないでしょうか。総理のご見解を伺います(質問12:安倍総理)。
安倍総理が第一次安倍政権の頃のように、規制改革や公務員制度改革といった、まっとうな政策に舵を切っていただくことを切に願い、質問を終わります。
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