天木 直人
日本時間の明日(8日)未明には五輪開催地が決定されるという。
これほど日本の将来に影響を与える五輪選挙は後にも先にもないだろう。
このままではどちらに転んでもその結果日本はさらなる分裂が進むように思える。
すなわち東京五輪が決まれば安倍政権は勢いづき強権的になり、それへの反発が強まる。
逆に負ければ安倍批判や反原発論が勢いを増し、それを押さえ込もうとする政府側との対立が激しくなる。
どちらに転んでも決して日本のためにはならない。
それを避けるためには五輪開催決定がどっちにころんでも、それを日本の再出発につなげなければならない。
その責任はもちろん安倍自民党政権にある。
しかしメディアも国民も皆、そういう方向に安倍自民党政権を向かわせる努力をしなければいけないのである。
東京五輪が決定した場合、それを国民は素直に歓迎すべきだ。
そのことが日本を元気づけ経済的にも好影響を与えることは間違いない。
成熟した日本経済が、64年当時のように東京五輪をきっかけに高度成長に走り出すなどという事はありえないが、様々な経済効果が生まれることは指摘されている通りだろう。
そもそも五輪招致に最初から反対する反対する者は如何なる意味でも東京五輪を歓迎しないだろうが、それが安倍政権を勇気づけるとか、原発容認に働くといって歓迎しないのなら、その心配には及ばない。
安倍首相の抱える課題はあまりにも大きく五輪招致の成功だけで政権が安定することはありえない。
原発事故収束のために克服する問題はあまりにも大きく、五輪招致に成功しても原発推進とはならない。福島事故の現実がそれを許さない。放射能汚染の危険性がそれを許さない。
それどころか、五輪招致に成功したからこそ、安倍政権は今まで以上に原発事故処理をすすめなくてはならなくなるのだ。
それでは東京五輪誘致に失敗した場合はどうか。
安倍首相に対する批判は高まり、反原発の勢いは増す。
しかし自民党に変わる野党はなく、自民党政権に変わる野党連合は考えられない。ろくなものにはならない。
原発反対派が政権を取って脱原発を進めることなどあり得ない。
そのような中で安倍批判だけを声高に叫んだところで政治的不毛は増すばかりだ。
安倍首相は、そんな不毛な政治状況を招かないためにも、五輪敗北の時こそ、政治的指導力を発揮しなければならない。
私が安倍首相であれば東京五輪の敗北によって脱原発宣言をする。
福島原発事故の収束を最優先し、福島原発事故を克服することによって、その他の山積する重要課題についても全力投入できるようにすると宣言する。
そうすれば多くの国民は拍手喝采するだろう。
安倍政権は安定し、その勢いでその他の政策についてもどんどんと国民の望む政策を行なえばいいのだ。
もし安倍首相が東京五輪の敗北にも関わらず、開き直っていままでのような強硬政策を続けるようであれば、自民党の良識政治家たちは、その時こそ、安倍・菅政権を引きずり下さなくてはいけない。
それが出来ないようでは自民党もまた野党と同様に未来がなくなる。
まさか自民党はそこまで愚かではないだろう。そう自民党を褒め殺したい。
これを要するに、東京五輪の結果は勝っても負けても、安倍首相や自民党の出方次第で日本にとって良い結果に終らせることができるのだ。
あるいは安倍首相が反省してその政策を軌道修正し、あるいは安倍首相にそれが出来なければ自民党の手によって安倍政権を代えて国民の為の政策を優先する責任政権を作る。
東京五輪は勝っても負けても日本にとって良かった事に繋げなければならない。
そしてそれができるかどうかは安倍首相の政治的決断と自民党の自浄力にかかっているのである。
メディアも国民もそれを安倍自民党政権に求めていかなくてはならない・・・