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浅野秀弥の未来創案
【政治と政治家】
公平な選挙制度はない
2016年6月30日大阪日々新聞
議会制民主主義は、代議員制の民主政治の1形態である。近代以降の代議員制政治の下では「政治家は何かの代表」ということで正当性を担保されてはいるが、国民全体でその政治家を選んだわけではない。つまり、政治家自体の資質を誰も見極めたわけではない、
現代日本では、県や選挙区の単位で分割された選挙により主に政治家が選ばれ、無駄になる俗に“死に票”の救済のために比例代表選出がある。
また立法権は衆参両議会がつかさどり、行政権は官僚組織の上に議員より選ばれた総理を長とする内閣がある英国と同じ「議院内閣制」を取る。この両者に対して独立した判断を下す機関として裁判所の司法権が存在する。
米国やフランスなどの大統領制は、行政権の長を国民が直接投票で選ぶ。つまり立法機関多数党と必ずしも同一の立場を取る者が行政のトップに選ばれるとは限らない。それどころか、2000年の米大統領選のジョージ・ブッシュ・ジュニアのように「得票は対立候補より少ないのに、選挙制度の妙で当選」などの不満が起こり、これらを防ぐために先のペルー大統領選のように、1回目の投票で過半数を制しないと、上位2人再び決選投票となり、結果1回目トップだったケイコ・フジモリ候補のように逆転負けするケースも出てくる。
厳密に三権分立を図り、なおかつ1票の格差を永久是正するには、ペルーのように行政トップの当選には過半数票取得を義務付け。立法府議員は、全国1選挙区で得票の多い順に「定数まで当選」とするのが合理的だ。そうすれば、国会議員は国政に関わることを大所高所から、地方議員はその自治体に関わることを同様に吟味して処理できる。この方法だと、地域バランス欠如や衆愚政治の横行が懸念されるが公平性だけは永久に担保される。
物事を決めるのに常に住民直接投票に頼るのではなく、議員の質的向上は欠かせない。有権者は「選挙制度はかくも不合理で面倒な物だ。しかし、議員を選び育て監視することこそ民主主義の原点なのだ」と割り切った方がよい。
あさの・ひでや(フリーマーケット=FM=社社長、関西学生発イノベーション創出協議会=KSIA=理事長)1954年大阪市生まれ。わが国のFM創始者で日本FM協会理事長。関西経済同友会幹事。数々の博覧会等イベントプロデュースを手掛ける。