18Jul
2016
わからないことだらけの天皇「生前退位」報道
天皇陛下が「生前退位」の意向をお持ちであることがわかったと突然7月14日にメディアが大きく報道してから、毎日のようにメディアはこの問題でもちきりだ。
しかし、その報道を見たり聞いたりすればするほど、謎が深まるばかりだ。
最大の謎は、もちろん、なぜ、急にこのタイミングでメディアが一斉に報道したかである。
メディアが一斉に報道したということは政府関係者(それが官邸筋であるにせよ、宮内庁筋であるにせよ)が流したということだ。
しかし、風岡典之宮内庁長官は天皇陛下がそのような意向を示された事はないと即座に報道を否定した。
これは異例で異常な事だ。
しかし、その後の報道には、誤報を追及する声は一切見られない。
それどころか天皇が生前退位の意向をお持ちであることは以前から明らかだったという報道ばかりだ。
これは、天皇陛下が生前退位の意向をお持ちであるという事は間違いではないということではないのか。
そうであれば次の謎は天皇陛下の生前退位のお気持ちはどこから来ているかということだ。
真っ先に思い浮かぶのは安倍首相との関係だ。
天皇陛下が安倍首相の改憲志向に反対のお気持ちを示されて来た事は、もはや周知の事実だ。
だから、これは自分の在任中には安倍首相には改憲させないという意思表明だと考えられなくもない。
同じ事は安倍首相の側からも考えられる。
天皇陛下が繰り返し発信される平和志向のメッセージは、改憲を強行しようとする安倍首相にとって都合がいいはずはない。
だから生前退位報道は安倍首相側から仕掛けたのではないかと考えられなくもない。
しかし、そのどちらも、あり得ないと私は思う。
いくら天皇陛下が平和志向であるとしても、そこまで政治的な言動を示されるような天皇陛下ではないと思うからだ。
いくら安倍首相が改憲志向であるとしても、そこまで天皇陛下をないがしろにするとは思えないからだ。
そこで次に浮かんでくる謎は、天皇陛下の生前退位の意向は、天皇陛下自らのお気持ちであり、そしてそのお気持ちは、安倍首相の憲法改憲志向とは直接関係のない、まったく別の事情から来るものではないかという事だ。
ズバリそれは自らの健康懸念と皇太子たちへの期待だ。
皇太子たちが天皇陛下に寄せる気づかいだ。
きょう7月18日の毎日新聞が特集連載記事「生前退位」下で書いている。
天皇陛下の健康を気づかった宮内庁内部から阿吽の呼吸で流された生前退位報道ではなかったのかという推測の成り立つ。
謎は深まるばかりだ。
しかし、はっきりしている事がある。
それは、この機会に我々もまた象徴天皇制について考えるべきであるということだ。
そしてそれは取りも直さずこの国の憲法成立の歴史を正しく知るべきだという事だ。
それはまた究極の憲法論議に行き着くことになる。
日米安保体制、憲法9条、象徴天皇制という三位一体のこの国の戦後の国体を知ることになる。
我々はいま大きな歴史的転換期に立ってるという事である(了)