首相の説明にほころび 桜を見る会、推薦に関与
政治
安倍晋三首相は二十日の参院本会議で、自身が主催した「桜を見る会」の招待客の推薦に関わっていたことを認めた。人選への関与を否定したこれまでの答弁を修正した。菅義偉(すがよしひで)官房長官は衆院内閣委員会で、今年の招待客約一万五千人のうち、首相の推薦が千人程度、自民党の推薦が六千人程度に上ったことを明らかにした。麻生太郎副総理兼財務相や菅氏ら官邸幹部の推薦も千人程度に上ったと説明した。招待客の半数以上が政府・与党の政治家による推薦で占められていた。 (中根政人)
首相は参院本会議で「私の事務所が内閣官房からの推薦依頼を受け、幅広く参加希望者を募ってきたと承知している。私自身も事務所から相談を受ければ、推薦者について意見を言うこともあった」と語った。
その上で「内閣官房や内閣府が行う招待者の最終的な取りまとめには一切関与していない」と述べ、これまでの国会答弁は虚偽には当たらないとの認識を示した。八日の参院予算委員会では「招待者の取りまとめ等には関与していない」と説明していた。
首相は参院本会議で、招待基準があいまいだったなどとして「これまでの運用は大いに反省すべきだ」と表明。「招待基準の明確化や招待プロセスの透明化を検討し、予算や招待人数も含め、全般的な見直しを幅広く意見を聞きながら行う」と強調した。
菅氏は衆院内閣委で、今年四月の桜を見る会の招待客の内訳を説明。「年数を経るごとに人数が多くなってきたことを反省する」と述べた。政府側は首相の妻昭恵氏の推薦も招待客に含まれると明らかにした。
立憲民主など野党四党は幹事長・書記局長が国会内で会談し、新事実が判明したとして衆参予算委員会への首相の出席を重ねて要求することを確認した。
◆客選定「関与せず」→「意見言った」
桜を見る会を巡る安倍晋三首相の説明に、ほころびが相次いで露呈している。招待客の人選への関与や、後援会と前夜に開いた懇親会の参加者の宿泊先に関し、当初の発言を変更。懇親会の経費を巡っても、不自然な点がある。野党は「虚偽答弁だ」などと批判を強め、首相に国会でさらなる説明を求めている。
招待客に関し、首相は二十日の参院本会議で、推薦段階では自らも関与していたと認めた。当初は「取りまとめ等」への関与を否定しており、人選の手続きに推薦段階も含まれるとすれば、答弁の修正に当たる。
首相は、内閣官房や内閣府での招待客の最終的な決定には関与していないと強調したが、国民民主党の玉木雄一郎代表は記者会見で「言葉遊び、言い逃れだ」と憤った。
懇親会参加者の宿泊先に関しても、首相は、大多数が懇親会の会場となったホテルだったとした当初の説明を、二十日の参院本会議では、二〇一五年は会場と別のホテルだったと修正した。首相は、参加者の会費が五千円という低価格で済んだのは、会場と宿泊先が同一だったからだと強調してきた。立憲民主党の福山哲郎幹事長は「これまでの説明と齟齬(そご)をきたしている」と記者団に指摘した。
懇親会の経費を巡っては、首相は「ホテル側から見積書等の発行はなかった」と繰り返し説明している。だが、都内の高級ホテルの広報担当者は、本紙の取材に「金額を決定する必要があるため、見積書を客に提示しないことはない」と話している。
野党は「明細書なし、ということはあり得ない。政治資金規正法ならびに公職選挙法に違反する疑いが濃厚になった」(福山氏)と攻勢を強める構えだ。 (妹尾聡太)