たとえその合意をまとめるために、尖閣沖の台湾漁船の漁業権を認めるという譲歩をし、その事によって日本の漁業者が不利益をこうむるという代償があったとしてもである。
当然のごとく地元沖縄県の漁業関係が反発し、それに対して菅官房長官は11日午前の記者会見で「政府として責任をもって対応する」と述べて補償をする意向を示したという(12日朝日)。
いつものように最後は税金を使ってカネの力で黙らせる。
そのような芸のない安易な側面があったとしても、私はこの日台漁業取り決め合意を評価したい。
しかし、そんな評価を損ねて余りある大きな外交的誤りを安倍政権はおかした。
それは今度の日台漁業取り決めを、「中台連携にくさびを打ち込むものだ」と公言し、主要紙もそれを当然の如く書きたてていることだ。
周知のように台湾問題は米中台の最大の政治問題である。
周地のように、台湾を切り捨てて電撃的な米中国交化を発表した米国に対し、それまで台湾に義理立てして来た日本は裏切られた苦い経験を持つ。
周知のように中国派と台湾派は日本の国内政治でもそのまま田中派と福田派の対立でもある。
そして周地のように中国と台湾の関係は今でも中国と台湾の間で最大の政治、外交問題である。
そんな中国と台湾の間に、「くさびを打つ」など平気で公言する安倍政権と外務官僚の感覚を私は疑う。
そしてそれに無批判に追従するメディアを私はいぶかしく思うのである。
台湾の馬英九総統は昨年8月に、領土問題を棚上げし、資源の共同開発を進めるという「東シナ海平和イニシアティブ」を提唱した。 それを私は歓迎し日本もその提案に乗れと主張した。
しかし、日本政府が今度の日台漁業交渉を再開させようとしたとき、日本は中国側にもそれを呼びかけ日中台の三者協議を呼びかけた気配はない。
呼びかけたにも関わらず中国がそれを拒否したというのなら話は別だ。責任は中国にある。
だから今度の日台漁業取り決め合意を中国が批判する筋合いはない。
しかし、もし日本政府が、当初から中国の参加を念頭に置く事なく中台分断を意図して台湾だけと交渉を始め、そして日本の漁民に犠牲を強いる形で合意を急いだとしたら間違いだ。
安倍政権下での日中関係改善は当面は望めそうもない・・・