いやはや流行とは恐ろしい。あんなに巷で話題が絶えなかったのに、今や誰も「ダ・ヴィンチ・コード」の話などしていない。結局レオナルド・ダ・ヴィンチが仕掛けた暗号というよりも、ルーブル館長のおじいちゃまが仕掛けた暗号に右往左往するお話でしたよね。原作をあれほど懸命に読んで映画館に行ったのは久々で、それはそれでいい経験だったけど、原作で苦労の末に暗号を解き明かす場面がことごとくすんなり進むのにあっけにとられておりました。「それだけかいっ!」と映画館の暗闇で叫びそうになったよ。
そんな「ダ・ヴィンチ・コード」ですが、僕は聴き逃しませんでしたゾ。フランス警察にトム・ハンクス教授が連れて行かれる場面、車の中で流れていたのが、セルジュ・ゲンスブールの「ジャヴァネーズ」。ジュリエット・グレコにもカヴァーされた名曲ですが、こんなところで使われるとはね。おフランスらしい音楽を流すなら他にも選択肢はあったはず。イヴ・モンタンでもエディト・ピアフでも流せばよいのに、何故敢えてゲンスブール?。僕はこの選曲自体に何か暗号のようなものを感じた。
ルーブル美術館に到着してすぐにトム・ハンクス教授は床に書かれたダイイング・メッセージを見せられる。結局それは館長が残した暗号だった・・・という展開。ここではアナグラム(文字を入れ替えて全く別の言葉にする遊び)によって、続くメッセージがダ・ヴィンチの絵に残されていることを知ることになる。ゲンスブールは、詞の中で言葉遊びを多用する人。例えばジェーン・バーキンの「Yesterday Yes A Day(哀しみの影)」や「Baby Alone In Babylone(バビロンの妖精)」などはその代表作なのだ。
ダン・ブラウンの原作を読んで映画館を訪れた僕らは、ヒッチコック映画ばりに苦難を共にして結ばれる男と女・・・という展開を記憶している。原作のラストにはキスシーンも用意されている。オドレイ・トトゥのファンとしてはちょっとヤキモキ。しかし、ゲンスブールの「ジャヴァネーズ」はジャワ風のダンスを1曲踊っている間だけの、つかの間の愛を歌った曲。主人公二人の関係は、原作通りでなく、事件が終わるまでの関係だ、ってこっそり僕らに暗示してくれていたのだった。・・・以上、考えすぎにも程がある。40を目前にして血迷ったtakの戯言と笑ってくだされ。
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