
■「スーパーマン・リターンズ/Superman Returns」(2006年・アメリカ)
監督=ブライアン・シンガー
主演=ブランドン・ラウス ケイト・ボスワース ケビン・スペイシー
公開の時期が悪かったのか、とても完成度の高い映画なのに客足は遠のいているようだ。僕が劇場で観た回も場内にお客さんは5人程度。公開から数週間が経っているとはいえ、80年代ならあり得なかった。「スーパーマン」がガラガラだなんて。正月の「キンゴコング」も不入りだったようだが、結局リメイクや続編にアイディアを頼りっぱなしのハリウッドの企画が、時代の期待とは遠いところにあるってことなのだろうか。9・11後の世界は、世の中にヒーローなんていないと夢を失っている。本当はだからこそこういう映画が必要なんだけど、現実が映画を超えてしまった今、魅力的に映らないんだろうなぁ。だから娯楽大作のはずだけど、映画館を出る僕らはつい考えてしまう。ニューヨークが襲われる場面や旅客機が落ちていく場面を楽しめないのだ。
スタア不在のキャスティングもどこか地味な印象を与えてしまう。ギリシャ彫刻が青タイツ着たようなブランドン・ラウス君の実直さは正義のヒーローらしくていい。でもクラーク・ケントはもっともっとダメ男にして欲しかった。これではただの影が薄い記者でしかない。ロイス・レイン役のケイト・ボスワースも綺麗だけれど、かつてのマーゴット・ギターにあった人間味が感じられない。子供を宿したのに5年も放っておかれたからかもしれないが。でも「私のパンティの色を当てて」とは決して言いそうにない。レックス・ルーサーはケビン・スペイシーが演じたことで怖い存在になった。ケント夫人はヒッチコック映画のヒロイン、エヴァ・マリー・セイント!。デイリープラネット紙編集長はフランク・ランジェラ。
今回の「リターンズ」はアクション描写やSFXも凝ったつくりで面白い。だが、この物語を初めて観てスーパーマンとロイス・レインの関係を理解するのは、ちょっと厳しくないだろうか。つまり80年代の「ス-パーマン」に思い入れがある、特に2作目「冒険編」を記憶している世代にこそ、この「リターンズ」は強く訴えかけるものがあるのだと思うのだ。監督のブライアン・シンガーも80年代のシリーズを愛する故に製作したと聞く。とにかくあらん限りの「スーパーマン」の設定を使い尽くして、なおかつ先につなげるような展開に持っていったことは、すごい。映画愛を感じずにはいられない。そしてジョン・ウィリアムズのテーマ曲を再び使用してくれたことに感謝。改めてこの曲はジョン・ウィリアムズの最高傑作だと感じるエンドクレジット。閑話休題。これで続編が製作される・・・・ということになるならば、これって「ドラゴンボール」じゃない?それが僕の素直な感想。
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