「キル・ビル」のルーツを探せ!(その8)★エル・パソの教会/復讐劇の舞台はメキシコへ
■「ローリング・サンダー/Rolling Tunder」(1977年・アメリカ)
監督=ジョン・フリン
主演=ウィリアム・ディベーン トミー・リー・ジョーンズ リンダ・ヘインズ
タランティーノが大のお気に入りの映画と言う「ローリング・サンダー」。彼が陽の当たらない秀作をリバイバルするために設立したローリング・サンダー・ピクチャーズは、もちろんこの映画が由来である。8年に及ぶ捕虜生活を経験したベトナム帰還兵の主人公は、町の英雄として帰ってきた。が、妻は別の男性と暮らしていて、息子は父親の顔も覚えていない。そして、メキシコのならず者たちに半殺しの目に遭わされて右手を潰され、最愛の息子と妻も殺されてしまう。主人公は復讐に燃えてメキシコへ・・・というお話。ポール・シュレーダーが脚本を手がけた本作は、いわばもうひとつの「タクシー・ドライバー」だ。「キル・ビル」では冒頭の教会がこの映画のクライマックス、テキサス州のエル・パソであること、そして「vol.2」でビルを追ってメキシコへ行く物語に影響を与えている。また右手がフック船長のような鍵の手である主人公も、頭を撃たれて金属がはめられている設定のザ・ブライドにつながる。ラスト売春宿での殺戮シーンもこじつければ青葉屋の大虐殺とも言えるだろうし。
大した劇伴もなくとにかく物静かな主人公の姿を追う物語は、とても冷徹な印象を受ける。最愛の息子が殺される場面でも涙さえ見られない。よくあるハリウッド映画ならここで観客の感情をも高めるために大げさな工夫でもするところなんだろうけど、ここでは皆無。そして抑えていた怒りが復讐としてあふれ出すところは、もう任侠映画のノリ。だが主人公に憧れていた三十路前の女性リンダとの関わりは、この映画で唯一人情を感じるところだ。自分の復讐の旅に同行させながら、最後の復讐前には女をベッドに残し黙って去る。全てが終わってカントリーが流れるエンドクレジットは、不思議な安堵感を与えてくれる。ラストの襲撃に同行する元部下に若きトミー・リー・ジョーンズ。社会に受け入れられないベトナム帰還兵の姿を僕らは「ランボー」やら「タクシー・ドライバー」やら「ディア・ハンター」やらで観てきたけれど、復讐という思いにすがるこの映画の主人公もまた同じ。しかしそうした映画たちとは違った徹底した復讐アクションだから、ちょっと異質な存在ではある。要はこの映画は現代を舞台にしているけれど復讐ウエスタンなのね。
■「ローリング・サンダー/Rolling Tunder」(1977年・アメリカ)
監督=ジョン・フリン
主演=ウィリアム・ディベーン トミー・リー・ジョーンズ リンダ・ヘインズ
タランティーノが大のお気に入りの映画と言う「ローリング・サンダー」。彼が陽の当たらない秀作をリバイバルするために設立したローリング・サンダー・ピクチャーズは、もちろんこの映画が由来である。8年に及ぶ捕虜生活を経験したベトナム帰還兵の主人公は、町の英雄として帰ってきた。が、妻は別の男性と暮らしていて、息子は父親の顔も覚えていない。そして、メキシコのならず者たちに半殺しの目に遭わされて右手を潰され、最愛の息子と妻も殺されてしまう。主人公は復讐に燃えてメキシコへ・・・というお話。ポール・シュレーダーが脚本を手がけた本作は、いわばもうひとつの「タクシー・ドライバー」だ。「キル・ビル」では冒頭の教会がこの映画のクライマックス、テキサス州のエル・パソであること、そして「vol.2」でビルを追ってメキシコへ行く物語に影響を与えている。また右手がフック船長のような鍵の手である主人公も、頭を撃たれて金属がはめられている設定のザ・ブライドにつながる。ラスト売春宿での殺戮シーンもこじつければ青葉屋の大虐殺とも言えるだろうし。
大した劇伴もなくとにかく物静かな主人公の姿を追う物語は、とても冷徹な印象を受ける。最愛の息子が殺される場面でも涙さえ見られない。よくあるハリウッド映画ならここで観客の感情をも高めるために大げさな工夫でもするところなんだろうけど、ここでは皆無。そして抑えていた怒りが復讐としてあふれ出すところは、もう任侠映画のノリ。だが主人公に憧れていた三十路前の女性リンダとの関わりは、この映画で唯一人情を感じるところだ。自分の復讐の旅に同行させながら、最後の復讐前には女をベッドに残し黙って去る。全てが終わってカントリーが流れるエンドクレジットは、不思議な安堵感を与えてくれる。ラストの襲撃に同行する元部下に若きトミー・リー・ジョーンズ。社会に受け入れられないベトナム帰還兵の姿を僕らは「ランボー」やら「タクシー・ドライバー」やら「ディア・ハンター」やらで観てきたけれど、復讐という思いにすがるこの映画の主人公もまた同じ。しかしそうした映画たちとは違った徹底した復讐アクションだから、ちょっと異質な存在ではある。要はこの映画は現代を舞台にしているけれど復讐ウエスタンなのね。