Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

女囚701号 さそり

2013-10-16 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その1)★復讐ヒロイン梶芽衣子!/♪怨み節


■「女囚701号 さそり」(1972年・日本)

監督=伊藤俊也
主演=梶芽衣子 夏八木勲 渡辺文雄 

 70年代の東映アクションもの・・・僕にはおそらく最も馴染みの薄い時期の映画。そして”女囚もの”。僕ら世代だとリンダ・ブレアの「チェーン・ヒート」があるけれど、暴力・エロ満載という作風は好んで観るものでもなかった。だいたい女性がいたぶられる映画って嫌いだから。しかぁし!本作はまさにそれ。恋人だった刑事に騙されておとり捜査に利用され、ボロ布のように捨てられた主人公松島ナミ。刑事に包丁で斬りかかったところを捕らえられてしまう。彼女は復讐に燃えていた。刑務所の中での仕打ち、扱いはこれでもか!というくらいに陰湿。普段ならもう十数分で投げ出してしまうところかも。

 でも面白いのね、これ。デビュー作だった伊藤俊也監督は”劇画調の演出”ということで数々のアイディアを盛り込み、飽きさせない。劇画のコマ割りの様にアングルが斜めだったり、下から見上げたり、明暗がやたらと強調されていたり、時折入るクローズアップが妙に印象的だったり。時代が時代だけに、反権力的な描写があるのも見逃せない。冒頭君が代をバックに刑務官の表彰が行われる場面。ナミの脱走で式はぶち壊しになり、賞状は無惨に踏みつけられる。ナミが悪徳刑事に処女を奪われる場面、白いシーツに広がる赤い血は日の丸を思わせるじゃない。女囚がいきなり髪逆立てて襲いかかったり、派手なライティングがあったりと、まるでホラー映画。タランティーノのアイドル梶芽衣子はひたすらカッコいい。次々と降りかかる危機をクールにかわしていく姿が何より面白い。クライマックスに出てくる黒一色の服装につば広の帽子姿!一度見たら忘れないね。ユマ・サーマンがこのファッションやったら笑っちゃうぞ。作業所の奥でサイコロ博打しているところは任侠映画まんまだし、暴動(「アバレをやるよっ!」)を起こす女囚達に「しずまれーっ!」って時代劇じゃないんだからさ。

 刑務所長や事件の黒幕の薄暗い部屋に差し込む照明は「スケバン刑事」の暗闇指令の部屋みたい。そういえば「スケバン刑事」が製作されるとき、アイドル路線でいきたいフジテレビ側と東映は意見が違っていたらしい。東映側が求めていたのは、この「女囚さそり」の空気だったのだ。マッポの手先にされた女子高生の哀しみと悪への怒り・・・うーん、なるほど納得。ビデオ観ている僕の後ろで配偶者が「何か嬉しそう」と言う。エロが多いのは確かにあるけど、墜ちるところまで墜ちる女性の話はやはり苦手なのだ。それでも、男を社会を悪を恨むヒロインの姿に魅了されたのは間違いない。あぁ今日も ♪怨み節 を口ずさんでしまう~。



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キル・ビル vol.1

2013-10-16 | 映画(か行)

■「キル・ビル vol.1/Kill Bill vol.1」(2003年・アメリカ)

●2004年MTVムービーアワード 女優賞・格闘シーン賞・悪役賞

監督=クエンティン・タランティーノ
主演=ユマ・サーマン ルーシー・リュー サニー千葉 デビッド・キャラダイン

※注・ネタバレ・わかる人しかわからない記述あり

 映画でしか得られない興奮・楽しさ。それをここ最近最も感じた映画かもしれない。全編からビシビシ感じるのはタランティーノの映画愛。主要キャスト観るだけでもおおおぉ!と思うのに、脇役まで気が利いているのがすごい。「少林寺三十六房」のリュー・チャーフィが「グリーン・ホーネット」のカトウマスクで登場するのは驚いたし、風祭ゆきまで出てくるんだよ!(僕のルーツまでバレそうだ・汗)。物語はマカロニ・ウエスタンを彷彿とさせる復讐劇。筋に起伏がないのがやや不満ではあるが、キャラの一人一人が魅力的だし、随所にタランティーノ流のユーモアが散りばめられ飽きさせない。特にルーシー・リュー最高!。

 しかぁし!タランティーノ映画に欠かせないのはバイオレンスというテーマ。「パルプ・フィクション」も楽しめたが、黒人少年の頭ブッ飛ばした後始末をあそこまで笑い飛ばす演出に「マジ?いいのか?倫理的に。」とひいてしまった僕としては、「キル・ビル」の暴力描写にやはり同様に感ずるところはある。特にジュリー・ドレフュスを「ボクシング・ヘレナ」状態にしてしまうくだりは、ちょっとねぇ・・・。確かに往年の時代劇でも人体バラバラはよくある(市川雷蔵主演「斬る」の真っ二つはビックリしたよなぁ)。けれどあそこまでサディスティックにやんなくても・・・とラストにはかなり保守的になってしまいました。青葉屋での”血湧き肉片踊る”大立ち回りは、やりすぎだからもう笑いしかでなかったけどね。

 それを抜きにしてもこの映画は魅力的。タランティーノの選曲のセンスの良さは今回も脱帽です。映像と音楽の調和という点では、雰囲気バッチシ。雪の日本庭園での決闘シーン、フラメンコ調 Don't Let Me Be Misunderstood(悲しき願い) の使い方は見事。そしてザンフィルの ロンリー・シェパード は、ハットリハンゾウから刀を受け取る場面とエンドクレジットの2回流れる。イージーリスニング(ポール・モーリアとかピエール・ポルトとか)を聴くのが一時期流行っていた頃に、パンフルート奏者ザンフィルは日本でも人気があった。その哀愁漂う音色。あの曲をまるでマカロニウエスタンのように使っちゃうんだから、すごいよなぁ。

 かつて、小学校高学年で「スターウォーズ」を観たtak少年は、その元ネタに黒澤明作品や往年のSF映画があることを後に知り、”そのルーツを知り尽くしたい”と心底思った。本作もそこまでの衝撃なのか?と言えば違うと思うけど、「キル・ビル」もタランティーノのルーツを知る人程面白いはず。それは確かだ。映画バカ程楽しめる。そういう人々の為の映画だね。梶芽衣子の「女囚さそり」シリーズとか藤純子の「緋牡丹博徒」とか観たくなっちゃったよ。かなりマジで。エンドクレジットで流れる怨み節。素晴らしい。

(2003年筆)




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