■「エル ELLE/Elle」(2016年・フランス)
監督=ポール・バーホーベン
主演=イザベル・ユペール ロラン・ラフィット アンヌ・コンシニ シャルル・ベルリング
●2016年セザール賞 作品賞・主演女優賞
●2016年ゴールデングローブ賞 外国語映画賞・女優賞(ドラマ)
●2016年全米批評家協会賞 主演女優賞
(注意・ネタバレを含む)
エロチックスリラー「エル」は、「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督が78歳で撮った作品。
ジョージ・ミラーも
深作欣二も
ヒッチコックも70歳前後にブッとんだ映画を撮っている。
作風が丸くならずに道を極めるってこういうことか…と改めてすごいと思う。
ゲーム会社を経営する主人公ミシェルは、
自分を襲った犯人が周囲にいると疑い、真相を探し始める。
この映画、犯人探しにハラハラするだけではない。
いや、むしろ犯人なんて「あー、そうなのね」って印象で、
それよりもストーリーが進むにつれて観客に明らかになっていくミシェルの激しさこそが見どころ。
それは気性でもあり、
言動でもあり、
そして性癖でもある。
悪女と呼ぶのは違うし、
フランス映画伝統のファムファタールとも違う。
イザベル・ユペールは過去にも、偏った性癖の女性を「ピアニスト」で演じているが、
今回はさらになりふり構わなくなったようなキツい役柄だ。
最後まで観て驚くのは、
主人公ミシェルが登場する女性たちに悪く思われていないこと。
確かにミシェルは"怖い女"のイメージではあるけれど、
見方によっては社交的で、世話焼きで、自由で、仕事もバリバリで、
しがらみから解放されたカッコいい女性像でもある。
ミシェルに降りかかる男たちの偏った欲望さえも、逆に彼女の偏った性の欲望に利用しているかのよう。
こんなアグレッシブで危険なヒロインは、なかなかお目にかかれない。
そう、まさに「氷の微笑」のキャサリン・トラメル以来なんじゃないだろうか。
オスカー主演女優賞にノミネートされたのも納得できる。
映画『エル ELLE』WEB限定予告編