Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

世界中がアイ・ラヴ・ユー

2019-09-22 | 映画(さ行)

◼️「世界中がアイ・ラヴ・ユー/Everyone Says I Love You」(1996年・アメリカ)

監督=ウディ・アレン
主演=ウディ・アレン ジュリア・ロバーツ ゴールディ・ホーン エドワード・ノートン ドリュー・バリモア

ウディ・アレンがミュージカルだって!?と最初は驚いた。中学生の時に「スリーパー」(なんてオマセな)を観て以来のアレンファンとしては、想像ができなかった。でも公開日が近づくと期待が高まってきた。それは、地方都市在住の身としては、映画館でウディ・アレン作品が観られるのは当時それ程多くはなかったからだ。

ウディ先生がこの映画で試みたのは、語り口の手法としてのミュージカルであって、ハリウッド黄金期の絢爛豪華なミュージカルを思い浮かべてはいけない。冒頭、エドワード・ノートンが歌を口ずさみながら歩く場面から始まる。それは普通のシーンに音楽という台詞をかぶせたものだ。あー、なるほど。そうきたか。宝石店での群舞こそあるけれど、カメラはでんと正面に据えたまま、時々クローズアップが入るくらいで、あくまで全体を捉える。「雨に唄えば」でジーン・ケリーのダンスを追いかけるのでもなければ、カメラ自体が駆けずり回る「ラ・ラ・ランド」でもない。だってウディ先生はジーン・ケリーでもジョージ・チャキリスでもないんだもの。それ故か、普段のアレン映画の毒気やユーモアがどうも薄味に感じられた。

ところが映画後半。ベニスに舞台を移してからは、アレン映画に期待する気弱な男の恋愛劇が面白くなってくる。ジュリア・ロバーツの背中に息を吹きかける場面が好き。そして前妻役のゴールディ・ホーン とのフレンドシップも見どころ。恋することの喜び、大切に思い思われることの嬉しさが、クライマックスの空中浮遊のダンスに込められる。ああ、語り口こそ変わってもやはり素敵なアレン映画だ。

ウディ・アレンの映画では古いジャズが流れることが多い。ミュージカルの形をとったのは、使用される音楽への愛情が込められているのだろう。映画のタイトルも、往年のコメディアン、マルクス兄弟の映画で使用された楽曲から引用されている。

コメント
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