Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

メッセージ

2022-09-17 | 映画(ま行)





◼️「メッセージ/Arrival」(2016年・アメリカ)

監督=ドゥニ・ヴィルヌーヴ
主演=エイミー・アダムス ジェレミー・レナー フォレスト・ウィティカー

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品は、「ブレードランナー2049」や「DUNE/デューン 砂の惑星」は支持している一方で、「複製された男」は全く理解できなくてレビューが書けずにいる。「メッセージ」は賛否分かれる感想を聞き、ちょっと観るのをためらっていた。どんな第一種接近遭遇映画となるのだろう。「未知との遭遇」世代のおじさんなので、ファーストコンタクトという言葉を使うのためらってしまうw。

予想以上に単刀直入な導入部。えらいことが起こっているのだが、これまでの宇宙人襲来映画と違ってあまりにも静かだ。攻撃されるわけでもなく、パニックに陥る人々の姿はニュース画面の中で淡々と流れるのみ。主人公はそんな不安をシェアできるパートナーもおらず、職場からも人がいなくなる。この孤独が映画の終わりにはガラッと変わる。来訪者の謎を解くという流れと共に、もう一筋の人間模様が展開されているのだ。こういう感じ、好き。

接近遭遇映画(すいません、この表現がやっぱり自分にはしっくりくる💧)は、エイリアンのビジュアルがとにかく話題になる。この映画に登場するヘプタポッドもクラシックSF小説に登場しそうなタコ、イカ型異星人にも見える。他の映画と違って面白いのは、言語を通じて互いの理解を深めようとしているところだ。結論を急ぐ軍や政府に対して、「地球に来た目的は?」のひと言を投げる為に少しずつ意思疎通を図る様子が実にスリリングで面白い。

その裏で戦闘に踏み切ろうとする動きを、ヒロインとそのチームが阻止しようとするクライマックスには息を呑む。大げさな劇伴もなく、ドンパチもないのに引き込まれる。断片的に続いていくセッションがとても効果的なのだ。次に何が起こるのか?と先を急ぐ気持ちと、さっきのエイリアンの言葉の真意は?とストーリーを反芻する気持ちが入り混じって、進展は少しずつなのに焦ったさがないのだ。そのバランスが絶妙。小難しい映画なのは間違いないのだけれど、それを感じさせない工夫がある。

そして映画を通じてヒロインが悩まされていたフラッシュバックの意味も解き明かされる。エイリアンが地球にもたらそうとするものが何なのか。それを言葉で解決する展開。CG全盛の昨今、ビジュアルばかりが目立ちがちなアメリカ映画で、こんなに言葉とコミュニケーションの大切さを感じられるって素敵なことだ。言葉を大切にする人の仕事ってやっぱり好きだ。ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィティカーもそれぞれの職務上のこだわりをうまく演じていて好感。

この上映時間という"セッション"で、ヴィルヌーヴという映画人について少し理解が深まった気がした。それでも「複製された男」のレビューは書けそうにない💧




コメント
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