Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

BLUE GIANT

2023-02-24 | 映画(は行)

◼️「BLUE GIANT」(2023年・日本)

監督=立川譲
声の出演=山田裕貴 間宮祥太朗 岡山天音

僕自身の音楽遍歴を振り返ると、ジャズに深くハマった時期はない。理由はジャズを解するには肥えた耳が必要だと思っていたからだ。その演奏のすごさが理解できないなら、演奏者に申し訳ないとずっと思っていた。僕の地元では70年代からジャズの夏イベントが開催されていて、耳に馴染みはあるのだが、どこか距離を置いていた。だんだんとジャズに近づいて行ったのは、自分が楽器を手にするようになってからだ。トロンボーン吹きだった高校時代はビッグバンドジャズに興味があった。鍵盤弾きが主になって友達のフュージョンバンドに参加もした。かっちょいいプレイをコピーして、プロの鍵盤弾きの凄さを感じ憧れるようになった。

同じ頃。スティングのアルバムでブランフォード・マルサリスの演奏を聴いてから、密かにサックス🎷に憧れ始めた。そして今。ウインドシンセでサックス向けの曲ばっかり練習するおいさんになった。音楽ものは毎度前置きが長くて申し訳ないです💧。

だから"音が聴こえる漫画"と巷で評判の「BLUE GIANT」には興味があった。ジャズピアノの上原ひろみが音楽担当でアニメ映画化!と聞いて、もぉー劇場で観るしかない!と心に決めて初日参戦。原作にない音が映像をどのように彩るのか。それが最大の関心事だった。

音楽に対する純粋な気持ちと、努力を積み重ねることの大切さが心に残る。映画化されるより前の高校時代のエピソードでは、ジャズを知らない友人たちに魅力を語る姿と気持ちのこもった演奏で納得させるダイをカッコいい…と思った。その気持ちのまま東京にやって来て、頭角を表していく。

純粋な気持ちだけでなく、障害となる厳しさもきちんと描かれているのが好感。鼻息の荒い若者たちにビシッと厳しい言葉を浴びせる大人たちがまたカッコいいのだ。ジャズクラブSO BLUE支配人の平さんがユキノリのプレイと態度を戒める言葉。あれを抑えたトーンで言える大人に、自分はなれているのだろうかと考えてしまう。チャラい大人だからなぁw。

また、ジャズを演奏するプレイヤーとしての人間関係も生々しい。お互いを踏み台にして名をあげる。だからずっと一緒に組んで演奏するような関係ではない。作曲もこなすユキノリのアドリブが面白くないと指摘されて悩む場面で、本人の問題だからできることはないと言うダイと、仲間として何かできないかと言う玉田。決定的な立場の違いとプレイヤーとしての凄みが同居するいい場面だった。

その反動が映画後半に炸裂する。ユキノリが眼を見開いて演奏するピアノソロの凄まじさ。モーションキャプチャーで演奏を撮影してアニメに置き換えているから、その絵の向こうでは上原ひろみが立ち上がって鍵盤を叩いているわけだ。ダイのテナーサックスがまさに唸りをあげる。ベルから流れる空気の流れや、ライトに照らされた楽器が放つ光の動きが演奏の激しさをビジュアルで表現している。原作のテイストを大事にしつつ、アニメだからできる表現が加わる。

音楽と映像が一体となった瞬間って、映画ファンにとっては最高のエクスタシー。この映画でジャズに興味もってくれる人が増えたら嬉しいな。玉田がダイの影響を受けたように。原作でダイがライブを聴いて衝撃を受けたように。




コメント (2)
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