◼️「スワロウテイル/Swallowtail Butterfly」(1996年・日本)
監督=岩井俊二
主演=三上博史 江口洋介 Chara 山口智子
映画の好みで人をカテゴライズする(される)のが嫌いだ。映画をリトマス試験紙のように扱うんじゃねえよと思う。いろんな意見があるのが当然だし、そこで気づかされることも多いのに、何様やねんと思う。それでもどうしても乗り切れないものはある。誰の感想読んでも納得がいかないこともある。それは誰もが同じ。感じ方はそれぞれだ。だけど、それが理由で人が分断されちゃうのは少し悲しい。
「スワロウテイル」が公開された時、こう評した記事を見かけた。
"この映画をどう評価するか、支持するかしないかによって、若者かおじさんかの線引きができる"
…はぁ!?
どう感じようが勝手やろ。何様やねん。岩井俊二監督作、あの頃注目されてたから、讃えあげるような論調の似た文章はめちゃくちゃ多かった。これが最先端だー、みたいな。
では言わせていただく。
おじさんって呼ばれてもいいよ。
「一度観ればたくさんです!」
実はこの映画を観るまでは岩井俊二監督って嫌いじゃなかった。「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」は、今でも大好きで仕方ない。子供たちの表情がいい、温かな視点がいい、切なさにたまらず涙したのだ。
「スワロウテイル」の音楽として製作されたYen Town Bandは大好きだった。主題歌であるSwallowtail Butterflyは、あの頃の自分の心境にすごく響いて、初めて聴いた時泣いた。あれが流れる映画やぞ。映像センスもいい監督やぞ。きっと映画も…。しかし。
確かに、多くの登場人物が絡み合って、誰が主役になっても面白そうなキャラクターとストーリー運びをすっごく巧いと思ったし、絵になる映像も多い。ところが、ぶちギレ江口洋介の暴力描写のあたりからだんだん気持ちが萎え始めた。音楽の使い方も期待したのと違った。2時間半の上映時間でCharaのPVと思えるような場面は、そんなに長くいらない。曲がいいんだから流れてるだけでもいいのに、小林武史への忖度かと思えるくらいにミュージックビデオ的な部分が長い。これを最小限にすれば尺も抑えられたはず。いや、音楽は最高なんだけどね。
当時、岩井俊二監督の映像から感じる、従来の日本映画離れした感性に感激した。だけど、「スワロウテイル」には突っ走った感性の映像はあっても、ストーリーテリングがついて行ってない。せっかくの映像に情緒を味わう間を与えてくれない。伊藤歩を中心としたストーリーの流れがけっこう好きなのだが、あまリにも多くのスターキャストが登場して邪魔をする。
そして僕は「リリィ・シュシュ」で完全に岩井俊二離れしてしまった。また挑もうかと思うこともあるのだけれど、結局観てないよなあ。