◼️「竹取物語」(1987年・日本)
監督=市川崑
主演=沢口靖子 三船敏郎 若尾文子 中井貴一
市川崑監督というと、80年代育ちの僕は横溝正史ものか文芸ものを連想してしまう。でもそれらはテレビで観たものばかりで、初めて映画館で観た市川作品はこの「竹取物語」だった。かぐや姫の物語がどのように映像化されるのか楽しみで、アーケード街にある映画館に向かった。
当時の僕は、市川崑映画の光の使い方、陰影の感じがすごく気になっていたようで、当時の鑑賞メモに、偉そうにそんなことが書いてある。なんかの映画評論読んで感化されたんだろう。また監督作である「細雪」のイメージから、谷崎潤一郎作品と言えば「陰翳礼讃」、市川映画の光と陰って発想だったのかも。映画前半は三船敏郎演ずる翁の家に差し込む逆光の感じが印象深い。対して後半は、日本映画にしては派手めの特撮に目を奪われてしまった。
映画のクライマックスに現れるのは、「未知との遭遇」を思わせる巨大なマザーシップ。これまでの東宝特撮映画にはなかった、日本風なデザインの宇宙船だった。一方で、竜の首の玉を取りに向かった貴族が遭遇する、巨大な竜は、キングギドラかマンダを思わせた。この特撮の派手さが、竹取物語の本筋である出会いと別れのドラマを曇らせていたようにも思う。
三船敏郎、若尾文子の大御所が竹取の翁とその妻。かぐや姫は東宝シンデレラ、沢口靖子。どこか目の前の物事を達観してるような眼差しが、この世の人でない雰囲気を感じさせる。また、どこか周囲に溶け込まないヒロイン像(ディスってませんよ。「科捜研」でも沢口靖子ってそういう感じじゃん😜)は、映画後半の姫の戸惑いにマッチしていた気もする。帝役は石坂浩二、他にもコント山口君と竹田君、春風亭小朝、伊東四郎など芸達者も多数出演。また、平成ゴジラの超能力少女、小高恵美は本作がデビュー。オリジナルのキャラクターを演じている。
ほぼ「E.T.」やん!と言いたくなるラストに多少興ざめするが、それを補ってくれるのがピーター・セテラが歌う主題歌Stay With Me。洋楽好きはこのバラード曲でなんか許せた気持ちになってしまう。日本古来の情緒ある物語には、いろいろミスマッチなものが散りばめられているが、それも80年代らしいのかも。