気がかりだったジャガイモ、やっと掘った。あの炎天下で。
山の畑のジャガイモはイノシシに見事かっさらわれ、お目こぼしにあずかったのは、わずかにコンテナ半分!普段なら泣くに泣けない、怒り心頭、絶望どん底の事態に悶え苦しむところだが、今年は、あっ、やっぱり、やられちゃったんだぁ、と余裕の左団扇。だって、家裏の畑のジャガイモほれぼれする育ち方だから。猿は走り回る、イノシシは掘り返す、カモシカは食い尽くし、熊は悠然とのし歩く、もう山の畑は動物たちのテリトリーになっちゃってるんだろう。そろそろ潔く明け渡す時期かもしれんなぁ。
家の近くがいいのさ、野菜畑は。朝に夕にちょいとお菜を取ってこれるだろ。散歩がてらに目も届く。水やりだってできるから、今年みたいな前代未聞の大干ばつだって乗り切れるし。ただ、残念ながら狭かった。ジャガイモやら加工トマトまで植えるゆとりがなかった。今年はたまたま隣家の畑の一部も使わせてもらえることになり、ジャガイモが晴れてそちらに昇格したってわけだ。
ジャガイモの天敵はニジュウヤホシテントウ。テントウ虫の仲間なのかもしれないが、なんか薄汚れた羽色でどことなくうさんくさい。幼虫なんかオレンジ色の体色に黒いトゲトゲが身体を覆うグロテスクさ。見れば誰だってつぶしたくなる輩だ。こいつが発生すると、十分イモが育たぬうちに葉という葉はレース模様に食い荒らされてしまう。農薬の力を借りずに戦うにはひたすらつぶし続けるしかない手強くにっくき害虫どもなのだ。
同じ畑に連年ジャガイモを植え続けると、このニジュウヤホシテントウがどんどん増えていく。まっ、一種の連作障害とも言えるな。だから、こやつらから畑を守るには、別の畑や区画に疎開するのが一番なのだ。今年はそこがうまく行ったってことなんだ。これまで何十年もジャガイモとは縁のなかった畑、獲れないわけないじゃない。素晴らしい大豊作!コンテナが何個も一杯になるほどの収穫だった。
ただ、残念なのは、メークインとキタアカリしか植えなかったこと。これは先見の明なきドジな判断と言わざるを得ない。まっ、決めたのは神さんなんだけど。きっと、イノシシここまで食い尽くすとは思っていなかったんだろう。スコップを踏み込み、ぐいと堀上げ、後は犬さながら前足、違った両手で穴を掘りまくる。照りつける太陽に、汗がしたたり目が眩み、熱中症直前の状態にまで上り詰めて、ようやくすべて堀上げた。
なんとかジャガイモ掘りが終われば、ここに堆肥を撒いて耕し、今や出番と待ち受ける秋野菜の苗を植え付けることになる。暑いからとか、雨降らないからとか言ってらんないんだよ、農業って奴は。自給自足の生活、世の中のイメージのようには優雅じゃないのよ。