我が家の糠味噌再起談、その2だ。
糠床を完全に一新してから2週間、どうやら糠味噌再生に成功したようだ。容器を開けると、あの糠味噌のふくよかな薫りが匂い立つ。冷蔵庫に保管、これ正解だった。発酵の進み具合もちょうど良く、漬かった野菜もひんやり冷たく、この夏の暑さにはほどよい清涼感が味わえる。1日1回だった攪拌作業も時に2回に増やし、かまし方も念入りに丁寧におこなうようにした。そんな気遣い、心遣いに糠床も心を開いてくれたってことだろう。今は毎日、朝と夕、糠漬けが食卓を彩っている。
糠漬けとともに暮らすようになって、変わったことは、まめになったよなぁ、ってことだ。なんせ糠漬けは漬け込んで半日から1日が食べ頃、過ぎれば塩味酸味ともにきつくなって、古漬けとなる。古漬けは刻んでショウガなどとあえるとこれはこれで大変美味だが、やはりそれは、あっ、しまった、忘れてた!といううっかり者の仕儀で、糠漬けの本道とは言えない。糠味噌漬けの正しい在り方は、シャキシャキ感残り、野菜の色つやも鮮やかな浅漬けなのだ。
半日ないし1日という漬け込み時間を常に厳守するとなると、お付き合いする糠守もこまめでなくてはならない。朝食にのせるには前日昼ないし夕方、夕食に上げるなら朝のうちに漬け込まなくちゃならない。やっぱり収穫直後のパキパキを漬けたい、となると、その都度畑に出て、適度に育った野菜たちを物色してくることになる。
ただし、ここまではキュウリの話しだ。ナスは皮が固いので、つけ込みは2日から3日。色止めのため表面に塩を擦り込んでから漬ける。今年は別に、薄皮丸ナスの漬け物も再開し、こちらも冷蔵庫のお陰をもって色あでやかでぱりっぱりの塩漬けナスを堪能できている。ナスのあの鮮やかな紫色を残すのに、ミョウバンなんて使わない。古釘の4,5本放り込んでおけば十分だ。こちらも1~3日が漬かり頃、食べ頃だからちょくちょく漬けて、こまめに食べるってことが必須だな。
もともと面倒がり屋の僕が、ここまでのまめ働きをするようになるとは、本当に意外だ。糠漬けの魔力、恐るべし!いやいや、漬け物をこうも熱心に食べるようになったことも思いの外だ。漬け物なんて出しても食べなかったのに、と神さんは言う。うん、たしかにそうかも知れない。歳とともに味覚も変化してきたってことなんだろう。でも、神さんの漬け物には、このちょっとしたまめさが足りなかったんだよな、と、これは口には出さずつぶやくのみ。
糠漬けを美味しく食べ続ける秘策、それはこまめに手を入れ、こまめに食べる、そのまめな生活習慣にあるってことだ。で、そのまめ働き、部屋の片づけとかに生きてるか?って言えば、ぜーんぜん!散らかり放題、ほこり堆積の部屋、書類散乱、文具ほったらかしの机の上、わずかに整理?されたパソコンスペース、これだけが日々の暮らしの定位置だ。まっ、人間なんてこんなもんだろう。気に入ったものにゃのめり込み、気にならなけりゃ見向きもしない。この落差!実に人間的だと思わないか?えっ、そりゃおまえだけのことだろうって?