久しぶりの坊平、いや、そんなもんじゃないぜ、30年以上も前だもの、行ってたのって。坊平?なんかしょぼいスキー場じゃね?リフト少ないし、コース詰まらないし、学校のスキー授業が使うとこだよな、それが実感。だから、スキーって言えば、お隣の蔵王温泉のスキー場にきっぱりと鞍替えしちまってた。
それがどうだい!洒落たペンションがそちこちに点在し、拠点のレストハウスも斜面からせり出すように威風堂々のたたずまいだ。キャンプ場も整備され、大きな宿泊施設もお客さん集めてる。そして、なんと、文科省の高地トレーニングセンターができてたんだ!いや、驚きの大変貌!なるほど、こりゃクロスカントリー大会とか、使わない手はないよな。立派な陸上トラックもあるし、常設のクロスカントリーコースもあるんだもの。
林の中のテント村!おうおう、いかにも林間のクロスカントリーレースの趣じゃないか。家族連れもたくさん、うん?張ってあるテント、県内の市町村のものだぞ。なんと、我が地元高畠町の和田小学校の応援団もいた。そうか、小中学校の個人レースと地域対抗駅伝競争も同時進行だったんだ。うん、なんか、普通のマラソン大会の和気あいあいのピクニック気分とは違う。応援も殺気立ってる。高校生のレースもあった。個人と学校対抗チームレースと。
シニア男子A、8キロクロスカントリーレース、集合時間。集まってきた出場者を見て、またまた驚いた!おいおい、Tシャツ着てるやつなんてほとんどいないぞ!まして、以前出たレースの記念Tシャツなんて一人もいない。みんなランニングシャツに短いランパン!!これって、マラソン大会なら、上位入賞とかサブ3とか狙ってるやつらのいでたちだ。日に焼けて逞しい足。ゼッケンの若い番号には東洋大学やら地区の駅伝チームがずらり。そんな、そんなレースだったのかい?!ちらちらと耳に入る話題は2時間40分切ったとか、ええーっ、フルでかぁぁぁ?それトップランナーじゃん!
ご、ごめん、場違いだった。勘違いしてた。お邪魔虫だよね。ああ、こりゃビリだぜ!一人離されて、ねぎらいと蔑みの混じり合った拍手の中を必死の形相でゴール。力ねえのに、出るんじゃねえよ、ジジイ!って、流し目に送られてすごすご記録証をもらう。すいません、すいません、未熟な身でありながら大それたことしやした。
いや、それより、レース打ち切りってないのか?はい、ご苦労さん、タイム制限オーバーです。コースアウトしてください、次のレースの邪魔になりますから、なんて。でも、どうやってスタート地点に戻るんだい?山道なんて回収車走れっこないし。
受付直後は、252人の出走者、ふーん、そんじゃ200位以内かな、目標は?なんて思惑は簡単にすっ飛んだ。せ、せめて、後ろに一人でも二人でもいてくれればと、一気に最下方修正した。
陸上トラックを1周と3/4走って、いざ、クロスカントリーコースへ。下ったと思ったら、うへっ、最初から上りだぜ。辛い!トレーニングしたつもりでいたけど、あんなもん、全然役に立たない。早くも足は重く、息は上がる。ど、どこまでつづくんだ?この上り。ストライドを小さくして小走りでやっと上り切って、やれやれようやく下り、と、思えば、またもやすぐに上り坂。そうか、そりゃそうだ、クロスカントリーだもの。甘く見てました!見くびってました!標高差はそれほどないが、ともかく何度も何度もアップダウンの繰り返し。ランニングウオッチを見ても、一向に距離が稼げていない。まだ、2キロかよ。這い上るようにして最高到達点へ。よしっ、ここからは下りが中心だろう、と元気を取り戻したら、またもや上り下りの繰り返し、やっと4キロコースを1周回走り終えて、競技場のトラックへ。力出し切ってて、全然楽にならない。1周してまた、坂道のアップダウンに突入。またかよ!
ペースはキロ7分から8分。これ、ほとんど歩くの同じ速さ。でも、でも、歩かない。給水所でも止まらない。せめてな、せめて、歩かず完走、それくらいは意地見せたいじゃないか。いくら山道だからって、8キロごときで歩いたんじゃ、申し開きが立たない、って誰に?もちろん、自分にさ。
それでも、慣れってもんは凄い。それまでちょこちょこ走りで上っていた坂も、平地や下りと同じピッチで走れるようになってきた。辛い。たしかに辛いが、いい感じで足が出ている。姿勢も尻が落ちることなく、腰から前に進めている、気がする。コース最終盤は、レースを終えた小学生、中学生たちが声援を送ってくれてる。マラソン大会の沿道の応援とはわけが違う。彼らはすでにこのコース走り切ってるんだ。こりゃなんとしたってシャキッと走りたいじゃないか。声援に応える余力も生まれて来た。あと、少し。ここを上りきれば、後は下る一方、最後10メートルほどを駆け上がれば、トラックだ。ここも、小中学生のランナーたち。疲れは見せまい、姿勢は崩すまい、と自ら叱咤激励しつつ、コーナー回って最後の直線。そして、ゴール!
記録は50分49秒。キロ6分なんて目標にしてたが、この坂道の連続じゃ、まっ、こんなもんかと納得。そして、な、なんと、順位は194位!後ろに50人以上もいた!うわーぉ、凄いじゃねえか。参加者の中、どう見たって、最年長なのにさ、ビリじゃなかった。
曇り空で気温21度と、暑さと日射との戦いが無かったせいか、疲れもさほどではなかった。足も張ることなく、体幹その他も損傷なし。シーズン開始、しかも慣れないクロスカントリー完走、この秋シーズも、なんとか乗り切れそうだぜ。