良い遺伝子のスイッチをオンにするということ 平成26年1月8日
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筑波大学名誉教授、村上和雄教授は
高血圧に関係する レニンと呼ばれる
体内物質の遺伝子を世界に先駆けて解明し
遺伝子学の第一人者と言われる。
最近の研究では、遺伝子には細胞外の環境に
影響を受けることが解ってきて、サプリメントなどに
含まれるメチル基などの化学物質、食品
薬品、そして熱や電磁波というエネルギーまでが
DNAに影響を与えていることが、確かめられたという。
遺伝子といえばDNAが思い浮かぶ。
”DNAがすべてのタンパク質をコントロールする”という
従来の考え方も、21世紀初頭から新しい遺伝子学が
発達し、”遺伝子を超えたもの”、エピジュネティクスに
脚光が浴びているという。
さて、エネルギーが 遺伝子に影響を与える
というのはどういうことなのだろうか?
村上教授は 以下のような仮説をたてている。
”感動、喜び、生き生き・ワクワク、することが
良い遺伝子のスイッチをオンにし、
悲しみや苦しみ、悩みが悪い遺伝子の
スイッチをオンにするのです”
エネルギーが遺伝子に影響を与えるということは
想念はエネルギーだから、”嬉しい、悲しい”というような
基本的な感情が 遺伝子に影響を与えている
という仮説になる。
この仮説は、唐突だということで、一般受けをしなかった。
そこで、その真偽を確かめるために、村上教授は
以下のような検証を行った。
糖尿病の患者を対象に、笑いと血糖値の関係
について検証して、感情の与える影響を調べるという
ものだった。
第一日目: 食事後 大学の先生の講義を聞き、
終了後患者の血糖値を測定
第二日目: 食事後 漫才コンビのライブを見て
血糖値を測定。
すると 二日目 大いに笑った後測定した値は、
血糖値の上昇が抑制されていたことが確認された。
つ笑い、楽しいという感情が良い作用を
体にもたらしたと結論づけることができそうだ。
ここで言われる’良い遺伝子’とは、何かというと、
ポジティブに 物事を受け止め ストレスを与えられても、
より良い建設的な観方でそれを受け止めることのできる
生まれながらの資質という意味合いだろう。
喩えれば、何か困難に面したとき、善い遺伝子を
スイッチオンすることで、
”この困難によって、もっと自分を磨こう” とか、
”この困難のおかげで大難が小難に済んだ”
というように、ストレスを、良い方向にとらえる
ことのできる心持をさす。
反対に 悪い遺伝子がオンになると、
”いつも 自分ばかりが苦労しなければならない”とか
自分の不運を嘆いたり、誰かを恨んだり、
とかく暗い気持ちになって 大きなストレスを
かかえ込んだような心持になるという。
村上教授は良い遺伝子に切り替えるためには
日頃の心の持ち方が大切だとして以下のような
工夫を提案している。
”目標を持つこと。
時々、環境を変える事。
人との出会いを大切にすること。
志と使命感を持つこと。”
そして、
”他を利する生き方”
を 最後に挙げている。
他を利する、つまり 他人の利益を考えて
人に役立つように生きる、ということでもあるが、
遺伝子的な見地からも次のような解釈をしている。
”細胞には、自らの維持と繁栄にしか
振る舞わない利己的遺伝子のほかに
母胎を正常な形で維持させるために
自ら死ぬことで決着をつけるという
細胞の自殺、いわゆる アポト―シス
を引き起こす利他的遺伝子
もプログラムされています”
どういうことかと言えば、
人間の胎児には 魚類のエラのような器官があるが
成長する過程で 自然消失する。
それは この器官を構成する細胞群が、アポトーシス
を起こすと考えられているからだという。
人の細胞にはこうした自己犠牲型遺伝子が
備わっているということは 人の生き方や
想念エネルギーにも当然 それは影響している
のかもしれない。
村上教授は続けて述べる:
”そこまで行かなくても、他を利する生き方
自体、ネガティヴなストレスと無縁でいられる
ことが多いのです。
欲や競争、出世や人を陥れる、憎む、怨み
のような想念を持たないことは、
ドロドロした人間ドラマとは無縁でいられるからです。”
本来の 人間の生 は幸せにプログラミングされているはずだ。
こうした、ドロドロ劇に巻き込まれないように
他を幸せにしようという、本来の愛が心に満ちていれば
人間のエゴ意識のドラマに 巻き込まれることは少なく
なるだろう。
村上教授も 愛 という言葉を使っている:
”大切なのは、このような認知は直観が優先すること。
善い人だから愛する 信頼するというようには
脳は働かない。
最初に愛を直観で受け止めて、
あとからその意味づけをしていく。
情から智へと脳は働くのです。”
愛には色々な種類がある。
ここでは、
”ギリシャ語のアガべ(普遍的愛)”を指していて
利他 とほぼ同義の感情であると注釈がついている。
これまで 心と体の相関関係において
あまり研究がされていなかった分野に、こうして、
真剣に向き合いながら、探究が始まって
いること、そうした科学者たちが
新しい社会の常識を創り上げていくのだと
感じる。
参考文献))”見えない世界の科学が医療を変える” 長堀 優著 でくのぼう出版 2013年